木之宮ケロク&筮筒
- 2023/09/19
- 18:09

少し前から交流させてもらっている本筮易家の木之宮先生は、目下筮具製作の苦労を分かち合える殆ど唯一と言って過言ではない易法家で、御自身で工房を探されては象牙賽から算木、ケロクと、ありとあらゆる筮具をオリジナルで作られている。上掲は先生に撮影して頂いた木之宮ケロクだが、実は先日の安井ケロクは、此のケロクの寸法を参考に作って貰ったものである。麒麟ケロクは短いもので50cmあるので、もう少しコンパクトなケロク...
Kawaiケロク
- 2023/09/16
- 10:33

易学講座を受講されているKawai先生は日曜大工を趣味とされているそうで、麒麟ケロクを御覧になって、これなら自分でも出来そうだと製作を思い立たれたらしい。紫檀や黒檀等の唐木は数年前にワシントン条約に於ける取り扱いが厳しくなって、価格も上昇傾向にあるのだが、ネット上では安価な出物がまだまだあるから、それらを購入してケロク製作に没頭する日々とのことだ。一番最初に作られた縞黒檀製のKwaiケロクは、脚を雲形(確...
お高い安井ケロク
- 2023/09/13
- 19:12

一昨年、麒麟ケロクを何本か作って貰った木工店が昨秋突然クローズしてしまった為、新たに製作してくれる工房ないし職人を開拓しなくてはいけないと思い悩んでいたところ、その話を聞いた友人の安井よういち氏より「知り合いに腕の良い家具職人が居るので、試しに一つ作って貰おうか」との御申出を頂いた。下記は製作経過として家具職人氏が送って寄越した写真である。素材は庵主にとって初めての縞黒檀(万能算木と同じ材)である...
算木敷としての帛紗
- 2023/09/10
- 10:25

これまで、中筮や本筮を用いる際は、算木を二つ並べて用いる為に、横幅のある気に入った柄のランチョンマットを算木敷として使って来たのだが、三変筮で一つしか算木を使用しないのなら、茶道で使う帛紗(ふくさ)が此の用途には最も適しているのではないかという気がする。今回象牙算木を購入された受講者諸氏にも帛紗をオススメしてはみたのだが、先日阪急百貨店の茶道具売り場を覗き見たところ、思ったより高くて、5000円前後が...
吉村周山
- 2023/09/07
- 18:42

大阪象牙美術工芸協同組合発行が発行した『橒~関西象牙業界のあゆみ』(1988)は、我が国に於ける象牙製品の起源について「江戸時代、享保年間(1716~1735)に大坂の彫り氏、吉村周山が中国製の象牙細工を見てこれを模倣したのが始まりと言われ、主に根付の象牙彫が行われていた」と記すが、庵主は其の昔、根付の蒐集を行っていた時代があって(したがって象牙については一般より幾らか詳細な知識を持ち合わせている)、吉村周山...
象牙算木のこと
- 2023/09/04
- 18:11

以前、確か鏡リュウジ先生だったと思うが、Twitterで原書房が所蔵する非売品の象牙算木の写真をあげておられたように記憶している。しかし、象牙のサイコロはあっても象牙の算木というのは今日殆ど目にすることが出来ないようだ。私の調べたところでは、汎日本易学協会が『易学研究』誌の戦後復活を記念して製作したのと、協会の35周年の際に僅かに製作したことがあるという程度らしい。ただ、流石に高価だったと見えて、入手した...
象牙算木が完成
- 2023/09/01
- 18:30

昨秋からスタートした象牙算木製作プロジェクトが漸くにして実を結び、先日納品して頂いた。オンライン講座を受講されているO先生が偶々印章業界に関わりを持っておられたことから、その筋の有力者に頼んで製作してくれる象牙職人を当たって貰ったのであるが、普段製作しない代物である為、専用の工具(彫刻刀?)を作るところから始めないといけなかったらしく、一組の製作というのでは余りに申し訳ないこともあり、亦た受講者諸...
龍と麒麟と鳳凰と
- 2023/08/28
- 18:05
『易経』を読んでいて、少し不思議に思うのは、龍は何度も出て来るのに、龍と並ぶ瑞獣である麒麟や鳳凰が出て来ないことである。或いは、経文の起源がそれら瑞獣より古い為に登場し得ないのだということも考えられなくはないが、翼伝にさえ登場しないところが面白いと思う。説卦伝には八卦の夫々の象意を動物に当て嵌めて行く記述が続くが、黔喙之屬などという何やらよく判らぬものが登場するのに、やはり麒麟や鳳凰はお出ましにな...
『巫・占の異相』 吉村美香編
- 2023/08/25
- 18:26

『巫・占の異相』 吉村美香編(志学社/2023年刊)昨日、奈良場勝先生より志学社から出た新刊『巫・占の異相—東アジアにおける巫・占術の多角的研究—』を御恵送頂いた。国際日本文化研究センターの2020年度の共同研究「巫俗と占術の現在ー東アジア世界の民間信仰の伝播と展開」の成果を元に編まれた一書で、先生は第3章「占術・相術・信仰の受容と展開」の中に「大雑書の易をめぐる書林の動き」を寄稿されている。副題の「東アジア...
梨を頂きました。
- 2023/08/22
- 18:11

千葉県市川市在住のオンライン講座受講者様より、立派な梨を御恵送頂きましたm(_ _)m恥ずかしながら一昨年まで、ふなっしーが梨を擬人化したキャラクターであることを知らなかった蒼流庵主ですが、好きなフルーツの一つです。有難く頂きたいと思います。梨と言えば千葉の特産ですが、市川市はトップの白井市に次ぐ生産量を誇るそうです。ところで、梨は支那の本草書では唐の『新修本草』に初めて記載されていて、“多食すれば人をし...
対卦雑感
- 2023/08/19
- 10:33
『周易』の卦序については、昔からコジツケが過ぎるとして評判の宜しくない「序卦伝」という一応の解説めいたものがあるが、漢初の馬王堆帛書本に見える卦序は邵康節の先天図の配列に似通ったところがあり(全く同一という訳ではない)、古くは色々な配列の仕方があったものの、今本の卦序だけが残ったのだとする見方が支配的になって来ているらしい。例えば、用いたテキストが今本と異なった卦序のものであった為に「雑卦伝」はあ...
滝畑の薬草療法
- 2023/08/16
- 18:20

『河内国瀧畑左近熊太翁旧事談』の中に民間療法を扱った章があって、項数こそ極少ないものの、当時使われていたと思われる薬草療法の実際が垣間見られるようで、生薬探偵としては大変に面白く思った。民間薬の図鑑を紐解いたところで、今日では使われないものが殆どだから、個々の生薬の効能書きも何処かの書物からそのまま引き写して来ただけの場合が甚だ多い。左近熊太翁の話に出ているものは伝聞を交えて必ずしも滝畑で使われた...
左近熊太翁を探して
- 2023/08/13
- 10:52

木村哲也氏の『『忘れられた日本人』の舞台を旅する』は、高校卒業と同時に『忘れられた日本人』と出会い、以後宮本常一の足跡を辿って旅を続けた著者の記録で、第二章で滝畑が扱われている。木村氏は1994年、1996年、1998年の三回、滝畑に足を運んで、左近熊太翁の孫 又三郎氏を探し当て、かつての貴重な証言を多く聞き出すことが出来た。木村本によると、宮本常一が取材した頃の左近家は、今の夕月橋の上流左岸辺りにあったそう...
或る流卜者のことば
- 2023/08/10
- 18:03

宮本常一と言えば、今は岩波文庫に入ってロングセラーとなっている『忘れられた日本人』が其の代表作であるとして何処からも異論は出ないと思うが、この本でも少し左近熊太翁のことが出ている。先に少し引用した中にも出て来たが、翁は京都の大川という易者について旅をした経験から自身も易を立てたらしい。そして、この大川という名も無き流れの易者のことばに、また実に含蓄に富んだものがあるのだ。女房を失ってから、子供もあ...
“奇男児”左近熊太翁のこと
- 2023/08/07
- 18:43

大阪南東部に位置する奥河内の中心エリア、河内長野市は嘗て我が粟島行春師が活動の拠点にされていた場所で、古くは日本一の爪楊枝の生産地でもあり、また今では完全に絶産となっているものの、麦門冬の栽培でも知られた地域である。市の山手の谷深く、嘗て滝畑という集落があったが、1981年に滝畑ダムが完成して注水が始まり、村の大部分は今は仄暗い水の底に沈んでしまった。実は此の滝畑地区は涼を求めて庵主が夏場に繰り出す場...