『周易古筮考』薮田嘉一郎編訳注
- 2022/03/17
- 19:48

『周易古筮考』薮田嘉一郎編訳注(紀元書房/1968年刊)三浦國雄氏の訳注によって我々は疑古的な易説に容易に触れられるようになったものの、直接に其の説を紐解こうとすれば、邦文では薮田嘉一郎『周易古筮考』に拠る他ないようだ。実は三浦本の各卦に附された占例も多く此の本に負っているようである。本書は、尚秉和『周易古筮攷』、聞一多『周易義証類纂』、李鏡池『左国中易筮の研究』『周易筮辞考』の四冊を訳出したもので(...
『易経』三浦國雄訳注
- 2022/03/15
- 19:15

昭和には多くの優れた『易経』注釈書が著わされているが、トリを飾るのは三浦國雄氏の訳注であろう。1988年であるから昭和が終わりを告げる直前の刊行で、角川書店の「鑑賞中国の古典シリーズ」全24巻の首巻として刊行されたものだ。この訳注は、聞一多(1899~1946)や李鏡池(1902~1975)、高亨(1900~1986)といった訓詁派や考古派に属する近代諸家の易説をふんだんに取り入れ、新奇な解釈を試みているところに特色があるが、...
昭和の易書アレコレ
- 2022/03/13
- 21:35
オリジナルの自作テキストと言ったところで、経書の解説に純粋独創など在り得ないことだし、もとより庵主は経学者を以て任ずる者ではないから、結局は糊と鋏の仕事に終始する訳だ。核としたものは自身が経文を学習させて頂いた公田連太郎翁の『易経講話』で、これに昭和の代表的な易書数種を並行して読み進めながら作成している。具体的には、公田本に加えて今井宇三郎氏の新釈漢文大系本、本田済氏の朝日選書本、鈴木由次郎氏の全...
『易学大講座』再読
- 2022/02/13
- 12:51

講座準備の為に先月から『易学大講座』を久しぶりに読み返している。通して読むのは四度目か五度目になるだろうか。所謂大岳易に於ける基本文献とされているから、読んでいる人は何十回となく再読しているのだろうけれど、特別大岳易の信奉者という訳ではない自分は未だ其の程度の回数しか読み返せていない。だいたい此のウネウネした回りくどい文体が初読時にはストレスでしかなかった位で、第一印象の悪さは過去目を通した易書の...
『熹平石経《易》残石』劉燦章編
- 2021/10/23
- 09:40

熹平石経の刻石は現在世界中に散蔵されていて、かつ偽物も相当混じっているらしいから、我々が手軽に利用するのは意外に困難な資料だったりする。碑文の画像をまとめて参照出来るようなサイトが中国あたりには無いものかと調べてみたけれど、管見の限りではそれらしいものを見つける事が出来なかった。仕方がないので、現代中国の出版物で何か画集的に楽しめる安価なものがないかと探してみたら、『熹平石経《易》残石』(河南美術...
『周易正義訓読』野間文史訳注
- 2021/10/14
- 18:36

『周易正義訓読』野間文史訳注(明德出版社/2021年刊)明徳出版社から上梓された野間先生の『周易正義訓読』を春にある方より恵与された。ちょうど購入しようと思いつつ、分厚さと価格に二の足を踏んでいた矢先の事だったので大変有難く思って拝受したのだが、一読これは便利な本だと思った。『周易正義』について、拙ブログの読者諸氏には今更贅言を弄しての解説など不要に違いないが、『周易正義』の底本として魏の王弼注本が選...
周易竹簡をゲット
- 2021/04/07
- 18:30

『図解周易大全』を購入しようと少し探してみたのだが、残念ながらメルカリに他の出物は無さそうで、普段利用している中国書籍の輸入販売店や古書サイトにも生憎購入可能な商品が見当たらなかった為、久しぶりに上海学術書店のお世話になる事にした。10年前は毎月何万円もここに落としていたが、この数年は年に一度利用するかどうかという程度。学習意欲の低下甚だしいと言う他ない。そこで、今回は取り寄せのついでにイマモンでは...
『図解周易大全』賀華章著
- 2021/04/04
- 10:14

『図解周易大全』賀華章著“爻辞の風景”に言及したついでに其の物ズバリの書物を紹介しておきたい。普段あまり易に関しては中国の出版物にアンテナを張っていないのだが、先日易学講座の受講者氏がメルカリで面白い本を買ったというので見せてもらったのが今回の『図解周易大全』である。確かに此の本は色々な意味で“面白い”。特徴は384爻全てがイラスト化されている事で、これが初学者の理解を助けてくれるというのがウリのようだ...
『易経』今井宇三郎訳注
- 2021/03/05
- 18:11

今井宇三郎氏の明治書院新釈漢文大系『易経』全三巻は非常に世評の高いもので、儒学の系譜に於ける伝統的な易解釈に基づく訳解としては我が国に於ける最高峰に位置付けて差し支えない名著と言えよう。昭和62年に上巻が上梓され、中巻の刊行が平成五年であるから、著者が堅実かつ厳密なる態度で臨んだ事が其の遅筆ぶりに伺われる。著者の没後、遺稿を元に堀池信夫(1947~2019)、間嶋潤一(1950~2012)の両門下が引き継ぐ形で、上...
大岳さん
- 2021/01/13
- 18:36

我々易学徒にとって井伏鱒二と言えば先ずは『吉凶うらなひ』の作者として記憶されている訳だが、随筆には先日紹介した「易たてのこと」のような小品あり、また「大岳さん」という加藤大岳氏に易を立ててもらった時のエピソードも全集の中に収められていて手軽に読む事が出来る。しかし、井伏氏は易について御世辞にも造詣が深いという訳ではないから、しょっぱなからして、加藤大岳さんのところへ易を立ててもらひに行つた。大岳さ...
易たてのこと
- 2021/01/10
- 13:25

『ある学生易者の手記』を読んで思い出したのは井伏鱒二の「易たてのこと」である。わずか三頁のどうという事もない小品で、易に興味のない人にとっては無用のエッセイに過ぎないけれど、この中に出て来るアルバイトの易たてというのは、佐藤正忠氏のことではないかと、再読して気付いた。いや初読時に其の事に思い至らなかったのが不思議なくらいだ。ここに出て来る学生の易たては井伏氏に易のことを聞きに来て、井伏氏が「易のこ...
『ある学生易者の手記』佐藤正忠著
- 2021/01/07
- 18:37

『何処へ~ある学生易者の手記~』佐藤正忠(経済界/1987年刊)三が日に再読した旧読本をもう一冊紹介しておく事にしたい。実のところ大好きな本なのだが、これまでご紹介して来た易学関連図書とは少し毛色が違っている為、中々お伝えする機会を得られずに今日まで来てしまった本である。その本とは、雑誌『経済界』の主幹として健筆を揮われた佐藤正忠氏(1928~2013)が学生時代に日切り易者として全国を放浪した時代の回想録『...
「紀藤易特集」を読む
- 2021/01/04
- 19:14

『実占研究』第30巻12月号(1981年)昨年はコロナのお蔭で世間を外出自粛ムードが蔽った為、いつになく読書量を増やす事に成功した一年であった気がする。今年はどうなるのか、ワクチンの成果次第といったところだが、自分は自分のやるべき事をやり、読むべき本を読むだけだ。ところで、三が日ほどに読書が捗る期間というのは一年のうちでもそう他にあるものではないが、私の場合、此の期間は新たな本を読むよりも孰れかと言えば過...
『高島易断』を読む⑦
- 2020/11/26
- 18:46
江戸時代は周易による易占が盛んに行われていたように漠然と思われているフシがあるけれど、実際の内容はと言えば、白蛾にしろ真勢にしろ徹底した象占である事に加えて断易や梅花心易など周易から派生しつつも独自の発達を遂げた占法に由来する技法が混淆して用いられていて、少なくとも今日の易占家の殆どが常法としているが如き爻辞占は殆ど見つけられないようだ。もっとも、内容を把握できる我が国最古の易占例である後醍醐天皇...
『高島易断』を読む⑥
- 2020/11/23
- 14:10
易占の初心者がよく惑わされて誤占を来す原因となるものに「吉」「凶」「无咎」といった易辞中の文句がある。占事と卦爻辞をうまく対照出来る場合は良いけれど、うまく読めない場合はこういう単純な文句に引っ張られがちになるもので、先日コメントでも少し遣り取りしたが、たとえば坤為地六五の「黄裳、元吉」のように「黄裳であれば元吉」つまり「黄裳でなければ凶を来す」という解を採るべきものなどが易には少なくない。また、...