『木村康一教授論文抄録集1927~1965』
- 2022/08/07
- 10:16

神奈川から録画視聴コースにて受講されているY氏とは目下面識こそ無いものの、偶然にも庵主と諱が同じ(漢字は違うが読みは同じ)で誕生日も一緒という偶然にしては出来過ぎた符合を以て申込時に庵主を驚かされたのだが、現在のお住まいが昭和45年に102歳で没した母方の曾祖母の居宅から目と鼻の先という点にも何やら見えざる手の働きを感じさせられた。それはさて置き、Yさんは庵主の睨んだところ、ビブリオマニアの範疇に属する...
『宋以前傷寒論考』岡田研吉他著
- 2019/12/05
- 18:27

『宋以前傷寒論考』岡田研吉他著(東洋学術出版社/2007年刊)『傷寒論を講義してみた』をご紹介したついでに、もう一冊私の好きな傷寒論本『宋以前傷寒論考』を取り上げさせて頂く事にした。本書は、『太平聖恵方』を始めとする種々の古典医書に引かれた仲景方に関する記述を突き合わせ、原『傷寒論』の姿を復元せんと試みた意欲作で、厳密極まりない考証学の手法を用いた復元作業という点で、まさに江戸考証学派の直系の嫡子とで...
『傷寒論を講義してみた』桜井謙介著
- 2019/12/02
- 18:50

『傷寒論を講義してみた』桜井謙介著(清風堂書店/2015年刊)2年ほど、生薬を中心に漢方絡みの記事ばかり書いていて頗る不評を買っている蒼流庵随想なのであるけれど、殆どは何年も前のネタを開陳したものに過ぎず、自身の関心について言えば、とっくに興味の失せた分野だったりする。従って、読書といってもここ数年は漢方関連で取り上げたいと思わせられるような名著には殆ど出遭った記憶がないのだが、それでも振り返って、『傷...
『傷寒・金匱を学んで』福田佳弘著
- 2019/11/13
- 20:13

『傷寒・金匱を学んで』福田佳弘著(医聖社/2015年刊)ひと月ほど前、滋賀での第38回埼玉漢方特別講座でご一緒した鳥取の福田佳弘先生(1936~)が、2015年刊の御高著『傷寒・金匱を学んで~福田佳弘論考集~』をご送付くださった。最近はどこへ行っても聴くに堪えない病名漢方の発表が多くて正直うんざりしているのだが、滋賀での特別講座で拝聴した講演が古典を踏まえた実に内容のある素晴らしいもので、帰ってから、先生が『漢...
『伊吹山 花のガイドブック』加藤久幸著
- 2019/10/18
- 18:04

『伊吹山 花のガイドブック』加藤久幸著(2008年刊)今回、埼玉漢方特別講座で伊吹山を案内してくださり、また特別講演もお引き受けくださった加藤久幸先生が2008年に出された『伊吹山 花のガイドブック』は、伊吹山に自生する草花の代表的なものを手軽に知りたい人に便利な本である。ポケットサイズでフルカラー、寝転んで読むにもちょうど良い。勿論、膨大な伊吹山の自生植物を全て網羅している筈はないし、ごく一部が収載されて...
下関市王司創立120周年記念誌『王司の歴史と民俗史』
- 2019/08/07
- 18:09

『王司の歴史と民俗史』(2018年刊)永富独嘯庵の生まれ故郷である下関市王司で、熱心に顕彰活動に取り組まれている日高栄美子女史より、王司120周年記念誌『王司の歴史と民俗史』を恵与されたのは、本年一月暮れのことであった。明治維新150年にあたる平成30年は、明治30年に王司村が誕生して120年目の年に当っており、本書は其の記念事業の一環として王司郷土文化研究会が編纂した町史である。独嘯庵については、見開き一項(110...
『漢方学術交流訪中団中国訪問記』粟島行春著
- 2019/06/08
- 13:13

『漢方学術交流訪中団中国訪問記』粟島行春著粟島行春先生は、1970年代の早い時期から中国に渡って各地の中医学の拠点を歴訪、討論会などを催して活発な学術交流を行っておられたが、帰国すると手書きの訪問記を執筆しては参加者に配布しておられた。何年か前、昭和54年に井藤漢方製薬の後援で行われた訪中記録を製本したものを古書店で入手したが、40年前の中国の伝統医療事情の肉声が聞こえてくるようで、斜め読みするだけでも中...
『喫茶養生記』粟島行春訳註
- 2019/06/07
- 18:09

『喫茶養生記』粟島行春訳註(盛文堂/1989年刊)栄西禅師(1141~1215)と言えば、日本における臨済宗の開祖として、名前くらいなら小学生でも知っていよう。頭の角ばった肖像は中々に印象的だが、鎌倉仏教の大物は親鸞にしろ道元にしろ、皆変な顔をしていて面白い。その栄西は、我が国の医家先哲を祀った医聖堂にも合祀され、橘輝政の日本医学先人伝もまた紹介する医学先人260名のうちに含めて記述しているのだが、これはその著述...
『自然への回帰』粟島行春著
- 2019/06/05
- 18:36

『自然への回帰』粟島行春著(日豊株式会社/1977年刊)粟島先生の本の中では、昭和52年の『自然への回帰』が一番好きだ。漢方については余り触れられておらず、農薬批判や白砂糖の害毒、玄米菜食の問題点などが主なテーマだが、先生の基本的な考え方は此の一冊に殆ど出尽くしていると言っていい。最晩年まで書き続けられた未病医学シリーズにしても、結局は此の本の内容を引き延ばして漢方的に肉付けしたようなものである。全体の...
『もう一つの粟島紀行』安藤潔著
- 2019/06/01
- 10:37

『もう一つの粟島紀行』安藤潔著(近代文芸社/1996年刊)“粟島”という地名は全国にあって、そこにある神社には大抵少彦名命が祀られているようだ。ガガイモの実で出来た船に乗ってやって来たという少彦名命は、医薬の神ともされ、神農祭が行われる道修町の少彦名神社でも炎帝神農氏と二神一緒に祀られている。『もう一つの粟島紀行』は、元中学教師の著者が全国の粟島を訪ね歩いた紀行文で、1993年から96年にかけて著者の住む新潟...
『農用気象学講義』杉山善助著
- 2019/05/19
- 09:47

『農用気象学講義』杉山善助著(農業教育会/1925年刊)杉山善助(1863~1944)には、『麦作改良栽培法』や『茎菜と根菜類二倍増収法』といった天理農法についての著述があるが、五運六気説に関するものは大正末に出た『農用気象学講義』に纏められている。わずか100頁ほどの小著であるが、五運六気説の基礎的な知識が簡潔に纏めてあって、或いは近代以降日本語で著わされた運気論の入門書で、最も優れた内容を持つのは本書ではない...
『気の自然像』山田慶児著
- 2019/05/10
- 18:14

『気の自然像』山田慶児著(岩波書店/2002年刊)山田慶児(1932~)と言えば、医史学の分野でも大きな業績を挙げておられる科学史研究の大家であるが、その慧眼を五運六気説に向けた成果を収めたのが2002年に岩波書店から出た『気の自然像』。運気論を実際に使用する為の解説書ではなく、その成立事情を探った述作であるが、例によって著者の鋭い洞察、自在な展開と、毎度のことながらほとほと感心させられる。本書は、長らく唐代...
『運気学説六講』任応秋著
- 2019/05/07
- 18:12

『任応秋運気学説六講』任延革整理(中国中医薬出版社/2010年刊)粟島行春先生が、おそらく鄧鉄涛先生と同じくらい尊敬されていた任応秋先生(1914~1984)は、現代中医学の礎を築いた巨人で、その手がけた分野は、中医学理論の確立から古籍整理、流派研究にまで及ぶが、1959年に書かれた『五運六気』は、運気論を解説した最も判り易い最良の書物であるとして、粟島師の激賞したところのものである。五運六気説の基礎となる干支か...
『問答式漢方要抄』林二原著
- 2019/04/23
- 18:38

『問答式漢方要抄』林二原著(1989年刊)粟島行春先生が、韓方の名家で最も親しくしておられたのは林二原という先生で、脈診では韓国随一の名人として知られた人らしく、殊に胎児の性別判断は百発百中であったそうな。試しに、妊婦でない者を妊婦と偽って脈診させたところ、しばらく脈を診た後で、「この人は妊娠していないようです」と応えられたのは、まさに名人の面目躍如だったと、粟島先生はよく話されていた。なお、脈診の大...
『冬虫夏草の文化誌』奥沢康正著
- 2018/12/19
- 18:44

『冬虫夏草の文化誌』奥沢康正著(石田大成社/2012年刊)奥沢先生には、『京の民間医療信仰』や『きのこ童話集』といったユニークな著述が数冊あるが、生薬探偵にとって忘れがたいのは、何と言っても『冬虫夏草の文化誌』である。我が国の古文献は勿論、洋の東西を問わず、冬虫夏草に関するあらゆる記述を徹底的に調査、図譜や顕微鏡写真に至るまで全てフルカラーで収載するという異常なまでに贅沢な内容で、恐らく今後日本でこれ...