重修緯書集成
- 2022/11/28
- 18:15

漢文を読むのに特有の句法や品詞の排列法等に習熟する必要があるのは言を俟たないけれど、それ以前に当該分野の熟語を知らないとどうにもならないのは、『漢書』の「顔師古曰」を顔師古が人名と知らない学生が「顔、古えを師として曰く」などと読んでしまった笑い話に明らかであろう。もっとも、この手の話は未熟な学生だけを笑ってすませられる手合のものではない。以前、明徳出版社の『重修緯書集成』シリーズにおける易緯の巻を...
『四庫提要訳注』土曜談話会編
- 2022/11/04
- 18:04

『四庫提要訳注』土曜談話会編(1966~1967)先日遅ればせながら、土曜談話会編『四庫提要訳注』を古書で購入した。これまで地元の図書館へ足を運んで館内の端末で閲覧するしかなかった国会図書館のデジタル化資料が幸い個人送信扱いになってくれたので、或いは此の本も閲覧出来るようになったのではと検索をかけてみたところ、そもそも国会図書館にさえ架蔵されていないことを知らずに居た自分に愕然とした(公立では宮城県立と東...
相良知安~医と易~
- 2022/10/04
- 18:16

佐賀新聞社から出ている相良知安の評伝は、「医と易」なる副題に釣られて、てっきり医易学関連の内容と勘違いした結果手にした書籍であるが、明治初期の医療行政の中枢に居た医系技官が失脚して市井の易者になったという意味での「医と易」なのであった。紛らわしい副題と言う他ないが、我が国の西洋医学導入の歴史にとんと疎い庵主にはそれなりに啓発されるところ少なからぬ本であったことを白状しておく。相良知安(1836~1906)...
『至道無難禅師集』公田連太郎編著
- 2022/09/07
- 18:37

春秋社新装版公田連太郎先生の訳業と言えば、『資治通鑑』の全訳を収め、全体の三分の一を手掛けられた「国訳漢文大成」や、『荘子講話』など殊に世評が高いが、それらは然して誇るに足る程の仕事ではなかったもののようで、漢学者ではなく禅僧の成り損ねを以て自任しておられた先生には漢籍よりも寧ろ仏典関連に取り組んだものの方がより満足のいく仕事であったらしい。その内もっとも傾注して取り組まれたのが、江戸時代初期の臨...
『明徳出版社の六十年と小林日出夫の想い出』小林眞智子編著
- 2022/08/13
- 10:03

(明徳出版社/2013年刊)Y氏からの寄贈図書第三弾は、『明徳出版社の六十年と小林日出夫の想い出』である。平成25年、明徳出版社の創業者である小林日出夫(1927~2007)の七回忌に同社創立六十周年を記念して刊行されたもので、300円という申し訳程度の定価がつけられているのは、当初有縁の方々に無償で配布することを企図していたものの、それでは書店に置くこと叶わず、同社の存在を知らない人々の目に触れる機会を持ち得ない...
『ミカドの岩戸がくれ』紀藤元之介著
- 2022/08/10
- 18:19

『ミカドの岩戸がくれ』紀藤元之介著(金龍神社崇敬同志の会/1978年刊)6月の暮れ、神奈川の録画受講生Y氏より「既にお持ちとは思いますが」との前置き付で一冊の古書が届けられた。Y氏の言の如く既にお持ちの一冊、というより広瀬先生と木藤謙さんから過去に恵与されているので、実は三冊目になるのだが、氏が送ってくれた三冊目が最もコレクターズアイテムと呼ぶに相応しい逸品であって、なんと紀藤先生が安岡正篤先生に贈られた...
『木村康一教授論文抄録集1927~1965』
- 2022/08/07
- 10:16

神奈川から録画視聴コースにて受講されているY氏とは目下面識こそ無いものの、偶然にも庵主と諱が同じ(漢字は違うが読みは同じ)で誕生日も一緒という偶然にしては出来過ぎた符合を以て申込時に庵主を驚かされたのだが、現在のお住まいが昭和45年に102歳で没した母方の曾祖母の居宅から目と鼻の先という点にも何やら見えざる手の働きを感じさせられた。それはさて置き、Yさんは庵主の睨んだところ、ビブリオマニアの範疇に属する...
『21世紀 占星天文暦』青木良仁解説
- 2022/08/01
- 18:15

目黒風水本が出たついでに拙ブログでは滅多に登場しない分野の署名本をお目にかける。先日、畏友青木良仁先生より送って頂いたもので、この本も刊行年がさして古くない割に世のインフレ率の遥か上を行く高騰ぶりを見せているようだ。私は此の分野についてはまるで知識を持ち合わせていないのだが、年初に青木先生から頂戴したメールによると、日本の西洋占星術界では「暦問題」が生じているらしく、神戸の魔女の家BOOKSが昨年...
二冊の『都市の見えないメカニズム』
- 2022/07/25
- 20:50

目黒先生の『都市の見えないメカニズム』という傑作の存在を私が知るところとなった十数年前には既に古書価は相当な高騰を見せていて、現在と同じくAmazonの古書価格では5万円前後の値が付けられていたように思う。今回、復刊に関わる事前情報を先に得る幸運に恵まれた私は、インサイダーさながらに売り抜けて泡銭を得ようかとも考えたのだが、幸か不幸か手持ちの二冊は孰れも特別な来歴を持っており、業界で最後に先生に会うこと...
『世界と日本の 地理 風水』目黒一三著
- 2022/07/18
- 16:35

此度、長らく“幻の本”として定価の十倍を超える古書価で取引されていた三代目目黒玄龍子著『都市の見えないメカニズム』が装い新たに復刊されることになった。実に二十八年ぶりの再刊である。此の本については随分前に一度記事にしているが、今回再刊に当たって若干の協力をさせて頂くことになり、久しぶりに読み返す機会を得、改めて其の内容の素晴らしさに感じ入った。占いに格別の関心を持たない極く普通の知識人の味読にも充分...
『わたし流佛教入門』福田敬子著
- 2022/06/16
- 18:21

記事のコメント欄より、Kさんからコンタクトがあったのは二月の暮れであった。御尊母が亡くなられて、その遺稿集を出版したので、木藤謙さんに送付したものの、住所が変わっていて返送されて来てしまい、途方に暮れていたところ、拙ブログに木藤さんが度々登場している為、転居先について問い合わせて来られたのであった。実は此の他界された御尊母というのが嘗ての福田屋旅館の御令嬢であり、神戸外大卒で語学に堪能であった此の...
『周易古筮考』薮田嘉一郎編訳注
- 2022/03/17
- 19:48

『周易古筮考』薮田嘉一郎編訳注(紀元書房/1968年刊)三浦國雄氏の訳注によって我々は疑古的な易説に容易に触れられるようになったものの、直接に其の説を紐解こうとすれば、邦文では薮田嘉一郎『周易古筮考』に拠る他ないようだ。実は三浦本の各卦に附された占例も多く此の本に負っているようである。本書は、尚秉和『周易古筮攷』、聞一多『周易義証類纂』、李鏡池『左国中易筮の研究』『周易筮辞考』の四冊を訳出したもので(...
『易経』三浦國雄訳注
- 2022/03/15
- 19:15

昭和には多くの優れた『易経』注釈書が著わされているが、トリを飾るのは三浦國雄氏の訳注であろう。1988年であるから昭和が終わりを告げる直前の刊行で、角川書店の「鑑賞中国の古典シリーズ」全24巻の首巻として刊行されたものだ。この訳注は、聞一多(1899~1946)や李鏡池(1902~1975)、高亨(1900~1986)といった訓詁派や考古派に属する近代諸家の易説をふんだんに取り入れ、新奇な解釈を試みているところに特色があるが、...
昭和の易書アレコレ
- 2022/03/13
- 21:35
オリジナルの自作テキストと言ったところで、経書の解説に純粋独創など在り得ないことだし、もとより庵主は経学者を以て任ずる者ではないから、結局は糊と鋏の仕事に終始する訳だ。核としたものは自身が経文を学習させて頂いた公田連太郎翁の『易経講話』で、これに昭和の代表的な易書数種を並行して読み進めながら作成している。具体的には、公田本に加えて今井宇三郎氏の新釈漢文大系本、本田済氏の朝日選書本、鈴木由次郎氏の全...
住吉大社御文庫
- 2022/03/01
- 18:01

神社への書物の奉献と言えば、言わずと知れた我が大阪の住吉大社「御文庫」など特に有名なものであろう。同文庫は、享保八年(1732)に当時の大坂・京都・江戸の書林らが発起人となって建立されたもので、その創設以来毎年初刷本を献納し、現在五万冊にのぼるとされる蔵書は多数の稀覯書を含み、貴重な資料の集積となっている。現在は出版物は一冊を国会図書館に献納することが法律で義務づけられているけれど、この御文庫は民間の...