『わたし流佛教入門』福田敬子著
- 2022/06/16
- 18:21

記事のコメント欄より、Kさんからコンタクトがあったのは二月の暮れであった。御尊母が亡くなられて、その遺稿集を出版したので、木藤謙さんに送付したものの、住所が変わっていて返送されて来てしまい、途方に暮れていたところ、拙ブログに木藤さんが度々登場している為、転居先について問い合わせて来られたのであった。実は此の他界された御尊母というのが嘗ての福田屋旅館の御令嬢であり、神戸外大卒で語学に堪能であった此の...
『周易古筮考』薮田嘉一郎編訳注
- 2022/03/17
- 19:48

『周易古筮考』薮田嘉一郎編訳注(紀元書房/1968年刊)三浦國雄氏の訳注によって我々は疑古的な易説に容易に触れられるようになったものの、直接に其の説を紐解こうとすれば、邦文では薮田嘉一郎『周易古筮考』に拠る他ないようだ。実は三浦本の各卦に附された占例も多く此の本に負っているようである。本書は、尚秉和『周易古筮攷』、聞一多『周易義証類纂』、李鏡池『左国中易筮の研究』『周易筮辞考』の四冊を訳出したもので(...
『易経』三浦國雄訳注
- 2022/03/15
- 19:15

昭和には多くの優れた『易経』注釈書が著わされているが、トリを飾るのは三浦國雄氏の訳注であろう。1988年であるから昭和が終わりを告げる直前の刊行で、角川書店の「鑑賞中国の古典シリーズ」全24巻の首巻として刊行されたものだ。この訳注は、聞一多(1899~1946)や李鏡池(1902~1975)、高亨(1900~1986)といった訓詁派や考古派に属する近代諸家の易説をふんだんに取り入れ、新奇な解釈を試みているところに特色があるが、...
昭和の易書アレコレ
- 2022/03/13
- 21:35
オリジナルの自作テキストと言ったところで、経書の解説に純粋独創など在り得ないことだし、もとより庵主は経学者を以て任ずる者ではないから、結局は糊と鋏の仕事に終始する訳だ。核としたものは自身が経文を学習させて頂いた公田連太郎翁の『易経講話』で、これに昭和の代表的な易書数種を並行して読み進めながら作成している。具体的には、公田本に加えて今井宇三郎氏の新釈漢文大系本、本田済氏の朝日選書本、鈴木由次郎氏の全...
住吉大社御文庫
- 2022/03/01
- 18:01

神社への書物の奉献と言えば、言わずと知れた我が大阪の住吉大社「御文庫」など特に有名なものであろう。同文庫は、享保八年(1732)に当時の大坂・京都・江戸の書林らが発起人となって建立されたもので、その創設以来毎年初刷本を献納し、現在五万冊にのぼるとされる蔵書は多数の稀覯書を含み、貴重な資料の集積となっている。現在は出版物は一冊を国会図書館に献納することが法律で義務づけられているけれど、この御文庫は民間の...
『易学大講座』再読
- 2022/02/13
- 12:51

講座準備の為に先月から『易学大講座』を久しぶりに読み返している。通して読むのは四度目か五度目になるだろうか。所謂大岳易に於ける基本文献とされているから、読んでいる人は何十回となく再読しているのだろうけれど、特別大岳易の信奉者という訳ではない自分は未だ其の程度の回数しか読み返せていない。だいたい此のウネウネした回りくどい文体が初読時にはストレスでしかなかった位で、第一印象の悪さは過去目を通した易書の...
『限界を超えた村』竹森正人著
- 2022/01/03
- 10:13

『限界を超えた村』竹森正人著(東高文庫/2021年刊)“限界集落”という言葉を知ったのはちょうど東北大震災の前年あたりであったから十年以上前のことで、当時熱心に行っていた石薬調査の為、九州の山間部にある超過疎の村落を訪れたのであるが、本書は“限界を超えた村”つまりは限界を突破して消滅してしまった村の物語である。著者の生まれ育った高知県の白石村が消滅するまでを昭和三十年代から順に回想したものであるが、淡々と...
『熹平石経《易》残石』劉燦章編
- 2021/10/23
- 09:40

熹平石経の刻石は現在世界中に散蔵されていて、かつ偽物も相当混じっているらしいから、我々が手軽に利用するのは意外に困難な資料だったりする。碑文の画像をまとめて参照出来るようなサイトが中国あたりには無いものかと調べてみたけれど、管見の限りではそれらしいものを見つける事が出来なかった。仕方がないので、現代中国の出版物で何か画集的に楽しめる安価なものがないかと探してみたら、『熹平石経《易》残石』(河南美術...
『周易正義訓読』野間文史訳注
- 2021/10/14
- 18:36

『周易正義訓読』野間文史訳注(明德出版社/2021年刊)明徳出版社から上梓された野間先生の『周易正義訓読』を春にある方より恵与された。ちょうど購入しようと思いつつ、分厚さと価格に二の足を踏んでいた矢先の事だったので大変有難く思って拝受したのだが、一読これは便利な本だと思った。『周易正義』について、拙ブログの読者諸氏には今更贅言を弄しての解説など不要に違いないが、『周易正義』の底本として魏の王弼注本が選...
『スーフィーの物語』イドリース・シャー編著
- 2021/05/28
- 18:38

『スーフィーの物語』イドリース・シャー編著(平河出版社/1996年刊)先週、思うところあって其の昔平河出版社から出ていた『スーフィーの物語』を読んでいた。スーフィーというのはイスラム教に於ける神秘主義で、教条的にコーランを墨守する主流のムスリムとは一線を画し、修行によって神との合一を果たそうとするものであり、現在ではこれも様々な流派に分かれている。編著者のイドリース・シャー(1924~1996)は西洋にスーフ...
紙は偉大なり
- 2021/04/22
- 18:39
支那文化に於ける飛躍的発展の契機となった最大の事件は恐らくは紙の発明であろう。竹簡のように嵩張るものは大量の文字を記録するのに適さず、さりとて絹帛ではあまりに高価で利用可能な人も限られようし、また大量消費も容易でない。そこに紙が登場して、初めてその恩恵に預かる人が爆発的に増えた事で教育の普及現象が引き起こされる事となった。長らく支那に於ける紙の発明者は後漢の宦官・蔡倫だとされていて、和帝(在位88~...
五車の書
- 2021/04/13
- 18:26
『荘子』天下篇に“恵施多方其書五車(恵施は多方にして、其の書は五車)”という文が見えていて、戦国時代の恵施という人は多芸多才で其の蔵書は車五台分もの量があったというのだが、蔵書の多い事を「五車」と表現するのは此の逸話を出典としている。もっとも此の「車」というのがトラックの類である筈はないから、案外手押し車やリヤカー程度のチャチなものかもしれないし、馬車としたところで、五台分の蔵書など今の我々から見れ...
周易竹簡をゲット
- 2021/04/07
- 18:30

『図解周易大全』を購入しようと少し探してみたのだが、残念ながらメルカリに他の出物は無さそうで、普段利用している中国書籍の輸入販売店や古書サイトにも生憎購入可能な商品が見当たらなかった為、久しぶりに上海学術書店のお世話になる事にした。10年前は毎月何万円もここに落としていたが、この数年は年に一度利用するかどうかという程度。学習意欲の低下甚だしいと言う他ない。そこで、今回は取り寄せのついでにイマモンでは...
『図解周易大全』賀華章著
- 2021/04/04
- 10:14

『図解周易大全』賀華章著“爻辞の風景”に言及したついでに其の物ズバリの書物を紹介しておきたい。普段あまり易に関しては中国の出版物にアンテナを張っていないのだが、先日易学講座の受講者氏がメルカリで面白い本を買ったというので見せてもらったのが今回の『図解周易大全』である。確かに此の本は色々な意味で“面白い”。特徴は384爻全てがイラスト化されている事で、これが初学者の理解を助けてくれるというのがウリのようだ...
『論語』と孔子の生涯(影山輝國著)
- 2021/03/11
- 20:56

古注だ新注だと言ったところで、実占家としての立場からのみ『易』に対峙している人(要するに大多数の易者諸氏)には何のことやらよく判らず、古い注釈が古注で新しい注釈が新注なのかしらんという程度の漠然としたイメージを脳裏に描くのがせいぜいであるかもしれない。古いの新しいのと言っても、それではどこからどこまでが古くてどこからが新しいのかという線引きをはっきりさせない事にはどうにもなるまいが、簡単に説明する...