秘伝と奥義
- 2014/01/31
- 19:52
“秘伝”とか“奥義”というものは、易学に限らず、常に初学者を惹きつけてやまないものである。そのような言葉を利用して、無知蒙昧なる人々から金銭をむしり取る恥知らずな連中は、今も昔も後を絶たないらしい。武術を嗜んでいた関係で、やれ秘伝だの奥義だのという言葉は嫌というほど耳にしてきた。今、思う所をいくつか書いてみたい。秘伝とされているものは、大岳先生が書いているように、合理的な説明が出来ない為に、秘伝として...
易法秘伝
- 2014/01/30
- 23:00
昔、大阪での講演において、加藤大岳先生が新井白蛾の秘伝を講義されたことがあり、紀藤先生の筆録の中に、白蛾の秘伝にとどまらない“秘伝”への言及があるので、少し引用させて頂く。こういう何気ない文章は読み飛ばされてしまいがちだが、私はこういう箇所にこそ注意を払うようにしている。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~・・・それはまア、秘伝というものはだいたいそういうもので、...
幻の『白蛾易法秘蘊』加藤大岳著
- 2014/01/29
- 23:51

昭和50年の紀元書房在庫表三十年以上にわたって加藤大岳先生が刊行予告を繰り返しながらも、結局未刊に終わった幻の著述に『奥秘伝書・白蛾易法秘蘊』がある。『易学研究』誌上では、再三、刊行間近であるように匂わせており、「易占法講座184」では、“来年刊行”とまで言っているくらいだから、恐らく原稿自体はかなりのところまで完成していたのだろう。上の写真は、昭和50年発行の『易の理論』に挟まっていた紀元書房の在庫表で...
上月定局~新井白蛾秘伝③~
- 2014/01/28
- 18:07

新井白蛾の「上月定局」は、得卦から時期の推断を行う為のもので、六十四卦を十二の各月に割り振ったものである。月に卦を対応させたものだと、復や臨、泰などをそれぞれの月に該当させた消長卦や消息卦と呼ばれるものが良く知られているけれど、時期の推断が必要な際にそうそう都合よく十二卦のどれかが出てくれる訳でもないから、取りあえずどの卦からでも時期を判定出来るこの上月定局は割に利用した経験のある人も多いようだ。...
天眼響通五隣伝~新井白蛾秘伝②~
- 2014/01/27
- 18:13

新井白蛾の秘伝から、今日は“天眼響通五隣伝”を「易占法講座36、130」加藤大岳著(『易学研究』所収)を参考にしながらご紹介したいと思う。天眼響通五隣伝は、本卦と変卦(之卦)と中卦(互卦)を組み合わせて、七つの卦を生む方法である。その七つの卦を体卦、祗卦、用卦、飛卦、行卦、伝卦、見卦といい、どのようにして卦を生み出していくかというと、先ず体卦は本卦の変のある爻を中爻とし、同じ爻位の変卦の爻を下爻とし、本...
天眼通~新井白蛾秘伝①~
- 2014/01/26
- 17:10

新井白蛾秘伝集(占術書刊行会・2004年復刻)白蛾の秘伝とされる秘術“天眼通”について少しご紹介する。これは、変爻によって占事の過・現・未を察する方法であり、“天眼通”は、通常は「テンガンツウ」とルビが振られることが多いが、『易学通変』(加藤大岳著)が引く新井家秘伝書の一文「之ハ佛語ナリ。マタ天耳通ト云フモノアレドモ其伝ハ無シ。今ノ天眼通ハ元・同化ノ法トアリシヲ、山崎先生故アリテ此ノ號ニ改ム」からすると、...
白蛾易の特徴
- 2014/01/25
- 20:01
新井白蛾の易術の特徴をいくつか見てみよう。三変筮を慣用まず、筮法としては三変筮を用いていることが挙げられる。そして、その三変筮は高島嘉右衛門のような爻辞占ではなく、本卦と之卦を共に重く見て、爻辞ではなく、象で判断する観卦法だ。学と術との断絶白蛾は朱子学者であり、その最大の著である『古易断』(内編10巻・外編10巻)を読めば、儒者としての白蛾が周易の経文をどのように読んでいたかがよく判る(もっとも、漢易...
新井白蛾の三変筮
- 2014/01/23
- 20:43

新井白蛾が常用したのは三変筮であったとされているが、この白蛾の三変筮は私たちが今日用いているものとは、揲筮の手順こそ同じでも、内容はかなり違うものである。たとえば、同じ三変筮でも高島嘉右衛門のやり方は、爻辞を採る為に、必然的に行き着いた筮法であって、例えば、乾為天の初爻を得た場合、高島流では初爻の爻辞である「潜龍勿用」を用いて占断を行う。ところが、白蛾流の場合は爻辞は見ずに、爻をひっくり返し、「乾...
『闇の曙』
- 2014/01/22
- 19:42

明治31年に金沢で白蛾の盛大な追善法会が営まれたが、翌年にはこれを記念して、白蛾の三種の遺著『聖学自在』『牛馬問』『闇の曙』が一冊に纏められ『白蛾叢書』として出版された。筑紫後学・高良なる人が序文を寄せており、『闇の曙』について闇の曙は社会の迷霧を開かんとなり。凡そ異端邪説より祈祷禁厭等の陋習に到るまで排き得て廓如たり。当時人文未だ開けざりしときに於て此の書の世俗を訓ゆるを適切なりしは勿論今日の聖世...
『周易外伝』岡竜玄著
- 2014/01/21
- 21:10

2012年の年末に東洋書院より刊行された『周易外伝』は便利な本だ。著者の岡竜玄先生(1932~)は、周易や人相、推命などを学ばれた方で、紀藤元之介先生、石本有孚先生、広瀬宏道先生らに学ばれており、加藤大岳先生晩年の『易学研究』の研究会の記録では何度かご本名で登場されている。長らく京都で周易の講座を持たれており、講座のテキストが原書房などで販売されているが、一般書籍として世に出たのは本書が最初である。実占家...
象意考と卦象解
- 2014/01/20
- 22:08

先に、白蛾の「象意考」は、随貞の「卦象解」が原型であろうとする紀藤先生の見立てを紹介したが、二者を詳細に比較した研究を「随貞と白蛾の卦象意識」と題して、『易学研究』に発表されたのは広瀬宏道先生である。簡単に要約して御紹介しようと思う。まず、両者に一致を見るものには以下のようなものがある。水天需→密雲不雨水地比→衆星拱比天沢履→如履虎尾火雷噬嗑→頤中有物山地剥→去旧生新天雷无妄→石中蘊玉沢山咸→山沢通気以...
三変筮の考案者は誰か
- 2014/01/19
- 07:10
筮法にもいくつかの種類があるが、その出所は?となると、大抵はよく判らない。出所がはっきりしているのは、根本通明の三十六変筮法と紀藤先生の四遍筮くらいのものであろう。もっとも、四遍筮は吉川祐三(江戸後期大阪の人)が同じような方法を算木を用いた無筮立卦法で試みていたという。真勢流で慣用したという六変筮法も、真勢中州の発案ではないことは確実で、これまた吉川祐三が六変筮をやっていたらしい(ただし、得爻法は...
平澤随貞と新井白蛾
- 2014/01/18
- 17:56

新井白蛾(1715~1792)の易占上の師は、平澤隨貞(1697~1780)ではないかと言われてきた。時代的な潮流もあったに違いないけれど、断易の影響を強く受けていることも似通っているし、実占にあってはどちらも三変筮を用いている。白蛾の代表的著述といえる『易学小筌』であるが、実は随貞にも全く同じ『易学小筌』なる同題の著作があって、これは白蛾が書名を拝借したのであろうと紀藤先生は推測されているし、紀藤先生は、白蛾の...
平澤随貞
- 2014/01/17
- 20:34

門弟が1000人を数えたという平澤隨貞(1697~1780)は、主に宝暦年間(1751~1764)に一世を風靡した易占家である。『米澤市史』や『国書人名辞典』には米沢出身と記載されているが、奈良場勝先生は、随貞の著『卜筮經驗』の巻頭や『卜筮樞要』の附言に下野国の生まれであると記されていることから、山形県米沢市の出身とするのは誤りであり、本当の出身地は、現在の栃木県佐野市並木町とすべきとされている。元禄10年(1697)正月...
馬場信武
- 2014/01/16
- 20:00

『断易指南鈔』は、新井白蛾の『易学小筌』における即時占のネタ元の可能性があるというが、真偽は兎も角として、著者の馬場信武(??~1715)は、江戸時代の易占に大きな影響を与えた人物である。しかし、その名は、白蛾、中州、随貞といった人々ほどには、今日知られていないようだ。馬場美濃守信房五代の後裔を称し、名を信武、字を玄俊、号を時習斎、梅翁軒といい、医師としての名は尾田玄古と称した。天台宗四世照高院門跡道尊...