『易経講話抄』
- 2014/04/15
- 20:22

『易経講話抄』は、言ってみれば若き日の私の勉強ノートのようなものである。公田先生の『易経講話』は、大部の著作であり、しかも五巻に分かれているため、必要な個所を引くにも骨が折れるし、漬物石の替りにさえ成りそうなものであるので、持ち歩きはほぼ不可能だ。そこで、なるだけコンパクトに縮抄したものを作ろうと思い立った。解釈は、基本的に公田先生が比較検討された中から、もっとも妥当として採用されたものだけを短く...
『易経講話』公田連太郎著
- 2014/04/14
- 20:04

易に関して、公田連太郎先生(1874~1963)の『易経講話』ほど、思い入れの深い本は他にない。何を隠そう、私は周易の卦爻辞をこの書物から学んだのである。では、何故初学者の問いに応じて、本書ではなく朝日選書の『易』を薦めているかと言えば、この書物の価格と頁数に注目されれば了解されると思う。現定価は64800円、凡そ三千頁に及ぶこの大著を、忍耐などとは縁遠い現代人に最後まで読み通せるものかという思いが先行するの...
『易の話』金谷治著
- 2014/04/13
- 19:15

今でこそ、本書は講談社学術文庫の一冊というイメージが定着しているけれど、一昔前は新書に入っている易の本といえば、この本と岩波新書の『易のはなし』(高田淳著)であった。この二著は、“話”か“はなし”かで、紛らわしいが、内容は随分違っている。講談社本は、どちらかというと、昨日紹介したサーラ叢書の『易学 ― 成立と展開 ―』に近い内容で、易経の成立や中国思想への影響などを中心に記述されており、義理(思想)と占筮...
『易学 ― 成立と展開 ― 』本田済著(サーラ叢書)
- 2014/04/12
- 17:14

「処女作にはその著者の全てがある」とよく言われるけれど、本田済先生(1920~2009)の『易学 ― 成立と展開 ― 』は、その典型のような本だろう。本書は、世評の高い朝日の『易』が出版される六年前、1960年に京都の平楽寺書店からサーラ叢書の一冊として世に出た。サーラ叢書は、今でも名著の誉れ高い数々の仏教書が収められた名シリーズだが、金谷治先生(1920~2006)の『老荘的世界』のような毛色の違った書物も収められており...
『易』本田済著(朝日選書)
- 2014/04/11
- 20:52

初学の方から「どのような本で学べば良いか」と聞かれることが良くある。そんな場合に、毎度紹介しているのが、『易』(本田済著)だ。本書は、朝日新聞社の「中国古典選」中の一冊として1966年に公刊され、1978年には上下巻に版を改めて朝日文庫に入り、97年には朝日選書の一冊となって現在も版を重ね続けている。私がこの本を勧める第一の理由は勿論内容が優れていることで、解説は朱子の本義を主として程伝によって足らざるを補...
『易学大講座』加藤大岳講述
- 2014/04/10
- 22:37

『易学大講座』(竹田泰彦先生旧蔵)『易学大講座』(加藤大岳講述)は、門人たちが筆記した加藤大岳先生の講義ノートを整理して成ったもので、第一巻は1938年に上梓されている。大岳易の信奉者にとって、この本は最重要基本文献という扱いになっていて、今でも版を重ねているようだ。加藤大岳先生は、長く周易経文の講座を持たれていたが、書籍化されたものは、この八巻の書物だけであるから、大岳易を学ぼうとする初学者は、経文...
樋口万峰先生のこと
- 2014/04/09
- 20:00
樋口万峰(1920~)と初めてお会いしたのは、四天王寺の易学供養塔護持会の席上であった。当時、すでに90歳を超えておられ、参会者の中でも最高齢であったけれど、先生の頭脳は驚くほど明晰で、かつ、歩行に杖も要らず、補聴器もまるで必要としないほどに耳目聰明であって、今でもその状態を維持しておられるのは、ただただ驚くばかりである。樋口先生は、一応紀藤先生の門下ということになるのだけれど、必要を感じたことがないと...
『易経』加藤大岳校訂(紀元書房版)
- 2014/04/07
- 18:35

携帯に便利で、かつ一巻本ということになると、加藤大岳先生の校訂に成る紀元書房版の『易経』がまっさきに頭に浮かぶ。蒼流庵蔵書中のものは、昭和51年の版であるが、初版は昭和18年に出ているから、かなり古い本である。私はこの本を、紀藤先生の門人である樋口万峰先生(1920~)より恵与された。薄い本ではあるが、十翼もきちんと収載されている。読み下していない硬派な文面で終始一貫しているが、これがまた何ともカッコいい...
『易経』高田眞治・後藤基巳訳(岩波文庫)
- 2014/04/06
- 18:33

高田眞治・後藤基巳両先生の訳解による『易経』上下は、岩波文庫に入っているだけに、さすがによく読まれてロングセラーとなっているようだ。本書を講座のテキストにしているところも少なくないと聞く。しかし、その人気は、入手の容易さと値段の安さに支えられているようで、中身はそれほど良い本とは言えないようだ。まず、解説が簡潔に過ぎ、初学者が本書だけで学習するのは容易ではない。また、文庫版ということで、持ち運びに...
青木先生と花見ハカマイル
- 2014/04/05
- 19:32

鈴木図書翁碑(京都市東山区安養寺)畏友・青木良仁先生から、花見を口実にしたハカマイルのお誘いがあり、春の日差しと桜の花びら舞い散る中、いつもより風雅なハカマイルをして来た。青木先生の今回の目当ては、円山公園の裏手にある安養寺の鈴木図書の石碑である。鈴木図書(1782~1862)は、赤穂藩森家家臣で、名は世孝、字は子養、通称は俊平、図書といい、漁翁、南山とも号したが、一般には鈴木星海の名で通っているようだ。...
『目黒玄龍子先生実占秘録』八木観相塾藏版
- 2014/04/04
- 18:33

『目黒玄龍子先生実占秘録』八木観相塾藏版私家版の『目黒玄龍子先生実占秘録』は、二代目玄龍子・目黒八朗先生の実際の観相を知る上で、極めて貴重な資料である。本書は、気血色の資料の適中率の統計をとるため、玄龍子先生と八木先生とで計画して、毎日大阪駅でビラをまいては、被占者を無料鑑定し、一枚は客に渡し可否をただして、得た実占記録の控えであるが、易占に限らず、観相も、実占の記録ほど学習者を裨益するものはない...
易神、この不思議なるもの
- 2014/04/03
- 18:46

以前、紀藤元之介先生門下の麻野勝稔先生と御法川もも代先生と三人で、東大阪の枚岡神社に参拝したことがある。枚岡神社は、それほど有名とは言い難いが、神護景雲2年(768年)、奈良の春日大社に祭神二柱を分祀したことから、「元春日社」とされ、大変由緒のある古社である。現在の中東宮司は、かつて春日大社でも宮司をされており、紀藤先生の門とは古くから関係があって、麻野御法川両先生とも懇意の間柄であり、私が御供する形...
野球クジの占について②
- 2014/04/02
- 18:55
加藤大岳先生の野球クジの占は、近代の周易による数字当ての占としてはもっとも有名なものだろうと思う。しかし、この占は今日私たちが想像するほど高度なものという訳でも無さそうだ。野球クジというのは、1946年~1950年ごろにかけて、プロ野球の試合を対象に日本勧業銀行(現・みずほホールディングス)が発売した予想投票くじの一種であるが、対象となる試合の得点合計の下一桁の数字と勝利チームを予想するものであった。つま...
野球クジの占について①
- 2014/04/01
- 19:23
戦後間もなく再開された後楽園のプロ野球に、東京都は野球クジなるものを設けました。それはどちらのチームが勝つかという勝敗と、両軍の得点数を当てればよい仕組みなのですが、数の占出の稽古のために、私は一年ほど其のクジを買つてみましたが、殆んど百占百中でした。ただ、家内や子供などから、私の買うのと同じ券を買つてくれと頼まれて、小遣いを預つて行つたときだけ、兎もすると失敗しました。恐らく損をさせては悪いと思...