『長倉漢方雑話』長倉音蔵著
- 2015/03/29
- 10:44

『長倉漢方雑話』長倉音蔵著(長倉製薬/1979年刊)大阪の長倉製薬といえば、優れた漢方製剤メーカーとしてよく知られているが、創業者の長倉音蔵先生(1894~1973)は、知る人ぞ知る浅田流漢方の使い手でもあった。正規の教育を受けておられないので、ついに表の世界で評価を受けられることはなかったが、7回忌に出版された『長倉漢方雑話』は、その薬方運用を窺い知るための貴重な資料である。 漢方医学の基礎的な解説も書かれて...
『図解常用漢方処方』顔焜榮著
- 2015/03/28
- 17:24

『図解常用漢方処方』顔焜榮著(薬業時報社/1978年刊)今日ご紹介する『図解常用漢方処方』も私の好きな一冊なのだが、不思議とあまりこの本の名を口にする漢方家に出会ったことがない気がする。著者の顔焜榮先生(1924~2017)は、台湾では“現代の神農”として尊崇される生薬学の巨星だ。大阪薬学専門学校(現大阪大学薬学部)を卒業され、京都大学では刈米達夫先生(1893~1977)と並んで昭和生薬学を牽引された木村康一先生(190...
『腹證図解漢方常用処方解説』高山宏世編著
- 2015/03/26
- 21:51

『腹證図解漢方常用処方解説』高山宏世編著(泰晋堂/1988年初版)高山宏世先生の『腹証図解漢方常用処方解説』は中々便利な本で、密かに袖珍本としている臨床家も少なくないと聞く。 著者は、寺師睦宗先生が主催する三考塾の塾生で、自習用の覚書きに塾で学んだ事柄を書き足して一冊にまとめた謂わば勉強ノートを基に成ったのが本書であるという。 エキス製剤になっていて、かつ保険適用の処方から126の頻用処方を選んで解説してい...
『黙堂柴田良治処方集』北山進三編
- 2015/03/25
- 18:18

『黙堂柴田良治処方集』北山進三編(黙堂会/1989年刊)『黙堂柴田良治処方集』北山進三編も私の好きな一冊だ。著者の柴田良治先生(1920~1993)は、森田幸門先生(1892~1966)・細野史郎先生(1899~1989)を師として漢方を学ばれた臨床家である。柴田先生は、江戸時代に袖珍本として広く医家に愛用された『古今方彙』に深く親しまれ、その現代版を目標に編纂されたのが本書ということらしい。収録されているのは、著者が臨床に...
『中医方剤大辞典』彭懐仁主編
- 2015/03/24
- 18:21

『中医方剤大辞典』彭懐仁主編(人民衛生出版社/全11冊・1993~1997年刊)方剤検索はほとんどの場合、『漢方医学大辞典2~薬方篇~』で事足りるものの、稀にこの本からも漏れているようなローカルな方剤がある。そんな場合、最終秘密兵器として登場するのが、『中医方剤大辞典』彭懐仁主編だ。収録方数は、約9万という網羅性を誇り、これで見つからなければ諦めもつく。同名異方を調べる場合にも中々便利。索引巻含めて全11冊とい...
『漢方医学大辞典2~薬方篇~』
- 2015/03/23
- 18:25

『漢方医学大辞典2~薬方篇~』(雄渾社/1983年刊)漢方の学習も製薬会社が主催する低レベルなものから脱却して本格的に学ぼうと思うと、必要な資料が本棚を占領し出すのは避けがたい。 大きな版のものだと、占領軍は床にまで領地を拡げようとしてくるから困ったものだ。 京都の雄渾社といえば、友禅や焼き物に関する豪華な本を多数出版しているところだが、優れた中医学図書の翻訳出版も手掛けている。 価格は見た目以上にゴージ...
青木先生とハカマイル
- 2015/03/22
- 23:25

今日は、一年ぶりに青木良仁先生と京都ハカマイル。10時30分に近鉄桃山御陵駅で待ち合わせて、天台宗龍雲寺へ。目当ては、橘南谿の没後に弟子が建立したという供養墓だったが、残念ながら早くに廃棄されたのか、それともガセネタだったのか発見出来ず。駅に戻る途中、青木先生が早めの昼食を提案されたので、中国料理くれたけへ入る。チンジャオロース定食と紹興酒を賞味。続いて大谷本廟へ移動し、中国文学の吉川幸次郎(1904~19...
『中国医学大辞典』謝観主編
- 2015/03/21
- 09:02

どんな分野を学ぶにも、辞書辞典の類は必須アイテムであるが、我が国で入手出来る東洋医学辞典の現状は、実に惨憺たるものである。長らく定番だった西山英雄氏の『漢方医語辞典』は、西洋医学的視点が強すぎるように思うし、あの安っぽい本の造りは大いに宜しくない。しかも、その辞典も絶版となって久しい。中医学の辞典としてはまずまずの出来栄えであった中国漢方刊『中国漢方医語辞典』も出版社倒産によるものか、現在では古書...
『中国医学はいかにつくられたか』山田慶児著
- 2015/03/20
- 18:50

『中国医学はいかにつくられたか』山田慶児著(岩波書店/1999年)『中国医学の起源』は一読明らかな名著であるけれど、500頁(註除く)近い大著な為、意志薄弱なる現代人にはハードルが高かろうし、何より、版元品切れで入手困難となっている。9500円という定価も中々のものだが、現在Amazonでは29800円という法外な古書価がつけられているようだ。そこで、今日は同著者の『中国医学はいかにつくられたか』をご紹介したい。本書は...
『中国医学の起源』山田慶児著
- 2015/03/19
- 18:04

『中国医学の起源』山田慶児著(岩波書店/1999年刊)医史学の分野で好きな本として、以前『夜鳴く鳥』山田慶児著をご紹介したが、同著者の本で最も読み応えがあるのは、『中国医学の起源』であろう。もともと科学思想史や天文学史などの領域を歩いて来た著者の関心は、馬王堆漢墓から数多くの医学文献が出土したことを受けて、医学史の分野に傾注されて行く。「それは、中国の自然哲学、気の哲学の基礎理論ともいうべき陰陽五行説...
『図説東洋医学〈基礎編〉』はやし浩司著
- 2015/03/17
- 18:43

『図説東洋医学』はやし浩司著今日ご紹介する『図説東洋医学』は、鍼灸学校の学生でも大抵は知っている、そして恐らく持っている名著である。僅かに250頁ほどの分量で、しかも大半は図説とあることから分るようにイラストで構成されているのだが、これほど東洋医学の基礎的理論を簡潔に解り易く纏めあげた本は恐らく他にない。昨日は、全くの門外漢を対象にした本として、大塚恭男先生の『東洋医学』を取り上げたが、もう少し本格...
『東洋医学』大塚恭男著
- 2015/03/16
- 21:34

『東洋医学』大塚恭男著(岩波書店/1996年刊)漢方に興味があるのだが何か良い入門書は無いものか、という問いを受けることが時折ある。ところが、日本で入手出来る入門書で、全くの門外漢相手に文句なく推薦出来るような本となると、残念ながら私には思いつかない。そもそも、入門書を書くという作業は専門書を書くよりもはるかに難しく、凡庸な学者では到底書けるものではない。ほとんど知識の無い相手に其の学問の概要と面白さ...
医家の冠する僧位について
- 2015/03/15
- 10:02

これまで様々な医家の事績を墓碑の写真と共に御紹介して来たが、その中で時折出て来た「法印に叙せられた」「法眼に上った」などの記述について説明して来なかったので、何のことか分らなかった方も居られると思う。これらは本来医家とは関係がなく、もと僧侶に対して与えられた位階であって、「法印」が一番位が高く、「法眼」がそれに次ぎ、「法橋」が最も位が低い。読みは、それぞれ「ほういん」「ほうげん」「ほっきょう」で、...
栄西禅師生誕旧跡地~医史跡番外編~
- 2015/03/14
- 08:46

栄西禅師生誕旧跡地栄西(1141~1215)といえば、平安末から鎌倉初にかけて活躍した禅僧で、臨済宗の開祖として知られているが、『喫茶養生記』の著者でもあり、泉湧寺の医聖堂にも合祀され、橘輝政の『日本医学先人伝』も其の伝を載せていることから、ここにその事跡を医史跡番外編として御紹介する次第。栄西は、永治元年に吉備津神社の権禰宜賀陽貞遠の第二子として生まれたが、当地に何ら遺跡が無かった為、旧邸の一つを選び、...
寺島良安の墓~医史跡番外編~
- 2015/03/13
- 18:16

寺島良安?の墓(増福寺/大阪市天王寺区生玉寺町5-24)『和漢三才図絵』の著者として有名な寺島良安は、正徳・享保年間に活躍した人であることは分かっているが、正確な生没年は不明で、謎の多い人物である。羽後能代の問屋(一説に船問屋)・尾張屋に生まれ、商売の株を売って大阪に出、伊藤良玄に本草・医学を学んだという。大阪高津宮の北に住し、和気仲安の門人となって、御城入医官となり、法橋に叙せられた。『和漢三才図絵...