漢方の剤型について~ますます怪しい漢方製剤~
- 2015/05/31
- 09:40
漢方といえば、○○湯、△△散、××丸…と様々な剤型が存在するが、これらはランダムにそうなっている訳では勿論なく、創案者の明確な意図のもとに剤型が決定されているものだ。通常は、湯液つまり煎じ薬が基本となるから、○○湯が最もポピュラーな剤型と言えるが、丸剤は薬効を穏やかにしつつ持続時間を延ばす為の工夫であるし、△△散のような散剤の場合は、病勢が急な場合の他、特に胃の付近の水毒を除きたい時にも用いられている。五苓...
怪しい漢方製剤
- 2015/05/29
- 20:05
エキス製剤は成分が均一だから安心して使えるという人がいる。確かにそういう一面もあるには違いない。しかし、『漢方製剤の偽装』や『漢方の主張』を読めば、「力価」の観点から承服しかねる製剤が少なくないという現実を知ることになろう。以前親しくしていた或る漢方薬剤師は「メーカーによるエキス製剤の品質格差はほとんどないと思っている」と何のためらいもなくのたまったが、このような発言は自らの不勉強を吐露したもので...
『漢方の主張』成川一郎著
- 2015/05/25
- 18:28

『漢方の主張』成川一郎著(健友館/1991年刊)前回ご紹介した『漢方製剤の偽装』は、インパクトのあるタイトルに加えて、部数が少なかったのか、比較的新しい本の割に古書価も定価の倍以上となっているのだが、個人的には1991年に出た『漢方の主張』の方がずっと良い本のように思う。頁数もずっと多くて、内容も詳しい。そもそも、満量処方を論じるに当たって、度量衡の問題は避けて通れないはずだが、『漢方製剤の偽装』ではこの...
『漢方製剤の偽装』成川一郎著
- 2015/05/21
- 18:26

『漢方製剤の偽装』成川一郎著(光雲社・2006年刊)漢方製剤の品質格差の是正に生涯を捧げられた成川一郎先生の遺作となった本。成川先生は本書刊行後まもなく他界されてしまった。成川先生は、三九製薬に合併された東亜製薬の元社長であり、同一処方の製剤でもメーカーによってエキス量に相当な格差があるという不可解な現実を暴き出すという偽装告発に大きな仕事をされた。出発点となったのは、規定の生薬量で葛根湯を製剤化しよ...
杏雨書屋図録
- 2015/05/19
- 18:56

開館30周年記念『杏雨書屋図録』(2009年刊)初訪時の企画展拝観後、挨拶を兼ねて少し研究員の方とお話したのだが、只者ではないと思われたのか、特別に2009年発行の図録(非売品)を進呈してくださった。黙って帰らなくてよかった! やっぱ、アピールはするもんだってばよ!この図録、フルカラーで90ページあり、定価を設定するなら1000円では済むまい。 2月に京大で催された伝統医療文化国際シンポジウム 2015でもらった『京-...
杏雨書屋
- 2015/05/17
- 14:32

杏雨書屋(移転前)武田家が収集した貴重な古医書を中核に、膨大な資料を所蔵しているのが、武田科学振興財団の「杏雨書屋」である。国宝3点(説文解字・毛詩正義・史記集解)、重文13点(古文孝経・春秋経伝集解・薬種抄etc…)をはじめ、所蔵冊数は十数万冊に上り、年々その規模をさらに拡大しているというから流石武田といったところか。重文指定の『黄帝内経太素』は、仁和寺本の残本である。平日しか入場できないが、特に予約...
けいしとうのだいぼうけん
- 2015/05/14
- 18:51
おけらの会の宗岡先生から教えてもらった漢方RPG「けいしとうのだいぼうけん」は、中々に愉快なゲームである。http://sky.geocities.jp/rikusuke00/keishi/game.htmけいしとうという名前の若者が、伝説の書物(傷寒論、金匱要略)を求めて旅に出、いろいろなやり方で、生薬を獲得し、ときどき病人を治療しながら、旅をするというストーリーで、第一部は大陽病上編~中編を扱い、第二部は太陽病上編~陽明病編を扱う。最後の更新は...
漢方家への道
- 2015/05/11
- 18:54
鹿島労災病院和漢診療センターの先生が運営しているHPに「カシマ!漢方塾」というのがあって、藤平健先生、小倉重成先生らの所謂“千葉古方”の流れなのだけれど、HP中の“漢方家への道”というコーナーは、漢方家のハートを粉砕する素敵なコンテンツだ。http://www.h7.dion.ne.jp/~kampo/road/rm.htm選択式の一見簡単な内容なのだが、ところがところが中級編上級編の難易度はなかなかハード。傷寒論の穴埋めなんて漫然と読んでい...
新・東洋医学辞書
- 2015/05/08
- 19:26

新・東洋医学辞書V9東洋医学に関して何か書き物をしようとなると、専門用語の漢字変換が実に面倒だ。フォントの問題もあって、頻出語句でも変換出来ないことが少なくない。最初の頃は、ネット上からのコピペで何とかゴリ押ししていたが、段々面倒になってきて、オフィス21の「新・東洋医学辞書」を購入した。変換出来ない語句も無いではないが、大抵は一発変換出来るし、難しい生薬名から、東洋医家の生没年も出てくる(何故か森鴎...
『〈裏〉日本音楽史』斎藤桂著
- 2015/05/05
- 14:21

『〈裏〉日本音楽史』斎藤桂著(春秋社/2015年刊)新進気鋭の近代文化史研究家・斎藤桂先生(大阪大学文学博士)より、御新著『〈裏〉日本音楽史』(春秋社)を恵与された。先生とは直接の面識はないのだが、昨秋、初代目黒玄龍子についてお問い合わせがあり、持ち合わせている情報をご提供した。逆にこちらの方が新事実を教えられたようなところもあるのだが、新著出版の暁には一冊進呈したいと御丁寧なお申し出を頂き、以降楽し...