『漢文研究法』狩野直喜著
- 2015/11/29
- 15:35

『漢文研究法』狩野直喜著(みすず書房/1979年刊)これから漢籍を読んで行こうとする人だけでなく、漢方やら易学やらに手を付けたせいで、それなりに漢文に親しむことにはなったが学問体系としての漢文学には疎いという人に御薦めしたいのが、狩野直喜著『漢文研究法』である。本書は、中学の漢文の先生たちを相手に、漢籍を読むのに必要な参考書を紹介した講演を主体にまとめられたものである。敬愛する百目鬼恭三郎(1926~1991...
『儒教史』戸川芳郎他著
- 2015/11/26
- 18:17

世界宗教史叢書10『儒教史』戸川芳郎他著(山川出版社/1987年刊)土台、庵主は中国思想史に関しては門外漢なので、さして多くの書物に目を通している訳ではないのだが、狩野『中国哲学史』を御紹介したついでに、比較的新しめの類書も取り上げておくことにする。今日ご紹介する『儒教史』は、山川出版社の「世界宗教史叢書」というシリーズの第10巻に収められているものだが、全12巻のこの叢書は、本書を残してすでに1983年に刊行...
『中国哲学史』狩野直喜著
- 2015/11/23
- 18:58

『中国哲学史』狩野直喜著(岩波書店/1953年刊)中国の思想史に取り組む際、まず座右に置くべきは、狩野直喜(1868~1947)の『中国哲学史』だろう。著者は、内藤湖南(1866~1934)や桑原隲蔵(1871~1931)らと共に京都支那学の黄金期を築いた碩学だが、奔放な学風の内藤湖南などと比べて文献学を重んじる堅実でやや地味なスタイルの為、今日ではそれほど人気が無いようだ。文庫化された著作は無いし、現在新本で入手出来るのも...
『諸子百家』貝塚茂樹著
- 2015/11/20
- 19:47

『諸子百家』貝塚茂樹著(岩波書店/1961年刊)戦国時代は、中国の悠久の歴史の中でも思想史上最も多様性に満ちた時代で、僅か二世紀半ほどの間に、老子・荘子・墨子・孟子・荀子・韓非子といった今日でもその名が知られる独創的な思想家を大勢輩出した。これは、周王朝が衰退して春秋戦国の時代に入ると、それまで特殊な階級のみが世襲的に独占してきた様々な知識や技術が広く開放されるようになり、また個人の自由な思索が広く行...
大阪市長選を占う
- 2015/11/18
- 18:05

22日に投開票される大阪府知事・大阪市長のダブル選は、結局のところ、大阪都構想の是非を再び問うという格好になっているようだ。府知事選は、どう考えてもオバハンに勝ち目はないので、オッサンの圧勝に終わること自明だが、市長選の方は拮抗しているようで面白みがある。現状では「大阪維新の会」が公認する前衆院議員の吉村洋文氏がリードしており、自民推薦の前大阪市議・柳本顕氏が追う展開となっているらしいが、投票態度...
年内に再び大規模テロは起きるか
- 2015/11/17
- 18:25

イスラム国は16日、新たなビデオ声明を発表し、シリアでの空爆に参加した国々はフランスと同じ運命をたどるとした上で、アメリカの首都ワシントンを攻撃すると警告した。「われわれは爆発物を身に着けて近づく。われわれはさらに強力になっており、止めることはできない」と述べ、欧州にも新たな攻撃を警告。フランスのバルス首相も同日、地元ラジオで「テロ攻撃が数週間のうちにもう一度あるかもしれない」と述べて警戒を呼びか...
イスラム国問題の今後を占う
- 2015/11/16
- 21:25

13日にパリで発生した同時多発テロは、パリ史上最悪のテロ事件として我々に衝撃を与えた。フランスでは今年1月にもシャルリー・エブド襲撃事件が起こっており、2015年の受難の幕開けを象徴する事件であったが、シャルリー・エブド事件の死者は12人で、今回は少なくとも129名が死亡したとされており、今後もその数は増える可能性があるから、規模からして比較にならない。イスラム国絡みの犯行らしいが、この問題には中東における米...
日本医史学会関西支部2015年総会・秋季学術集会
- 2015/11/15
- 23:27

今日は天王寺にある大阪市立大学医学部学舎にて開催の日本医史学会関西支部の集まりに参加して来た。実は庵主は市大病院で生まれており、8年ほど前にも仕事で一度足を運んでいるので、今日が三度目、久しぶりの市大医学部である。案内では開場9時で庵主が建物前に到着したのが9時5分ほど過ぎた頃だったのだが、まだ案内の張り紙もされておらず、建物をグルリと一周した揚句おかしな処へ入り込んでしまい一苦労させられた。今日は京...
たまには占例も
- 2015/11/14
- 14:55
先日、或る人から「最近の蒼流庵随想は、単なる書籍紹介に終始していて甚だ面白くない」というような趣旨の苦言を呈された。紹介している書籍はどれも自信をもって推薦出来るべらぼうに内容のあるものばかりなのだが、その紹介が甚だ面白くないものに感じられたとするなら、書籍紹介としては当然不成功に終わったと見なければならぬ。これは、書籍の罪ではなく、ひとえに庵主の筆力の至らざるゆえのことで、抗弁の余地はない。とは...
iPS細胞を用いた治療は医療に革命をもたらすか
- 2015/11/12
- 18:34

予想通りと言えば言えるが、iPS細胞を使って難病を治療する臨床応用が遅れているようだ。昨日、京都大がパーキンソン病を治療する研究について実施を1年ほど遅らせることを明らかにした。文部科学省の専門家会合が同日示した臨床応用の工程表案でも、ほとんどの計画が1~4年先送りになるらしく、従来は15~16年に始めることになっていたパーキンソン病の臨床研究は1年遅らせて16~17年の開始とし、血液を構成する血小板を作...
ミャンマー国政の今後を占う
- 2015/11/11
- 20:38

2011年の民政移管以降初となったミャンマー総選挙で、アウン・サン・スーチー女史率いる最大野党・国民民主連盟(NLD)が単独過半数を獲得して政権交代が確実な情勢となり、加えてスーチー御大も最大都市ヤンゴン郊外の下院選挙区で再選を果たしたとの発表があった。蒼流庵主人はスーチーさんの支持者である。支持者と言って語弊があるなら、ファンと言い換えても良い。「頑なな態度でいたずらに国政を混乱させているだけ」という...
「中国古典をいかに読むか」吉川幸次郎座談
- 2015/11/10
- 18:26

『古典への道』吉川幸次郎対談集(朝日新聞社/1969年刊)先に四書五経の優れた概説として竹内照夫博士の『四書五経入門』をご紹介したが、この本は記述の平明さといい値段の手頃さといい入門書としては申し分ないものの、どうも捻りが少なくて再読を思い立たせるほどの魅力には乏しい。そこで、入門書として紹介するのは不適切ながら、同じ分野で捻りの効いた「中国古典をいかに読むか」を取り上げてみたいと思う。朝日新聞社が196...
『四書五経入門』竹内照夫著
- 2015/11/08
- 20:21

『四書五経入門』竹内照夫著(平凡社/1965年初版)昨今、漢方や易学を学ぶ人々の中国史に対する無関心には驚かされるが、同様に四書五経など漢学の基礎となる文献についてもほとんど無知といって良い状態のようだ。四書五経とは、孔子が選定した「易・書・詩・礼・春秋」の五経と朱子が重視した「論語・孟子・大学・中庸」の四書とを合わせた総称で、中国の古典を理解するにはこれらの知識もある程度持ち合わせていないと中々難し...
『相場占三百八十四爻・明断』紀藤元之介講述
- 2015/11/05
- 18:14

『相場占三百八十四爻・明断』紀藤元之介講述(1953年刊)今回、木藤会長から恵与された紀藤元之介先生旧蔵品の中でも、もっとも貴重と言えるのが、1953年に20部だけ作製された『相場占三百八十四爻・明断』である。表題の通り、内容は相場占を扱っているが、先生の手に成るものではなく、先生の講義を門人の大原某氏が筆記したものから版を起こしているようだ。20部限定という点でも貴重であるが、本書は四遍筮を打ち出される前、...
紀藤元之介先生旧蔵品
- 2015/11/03
- 17:53

紀藤元之介先生旧蔵の品々一昨日の易学供養塔プチ護持会にて、木藤会長より御尊父紀藤元之介先生旧蔵の品々を恵与された。先生御逝去の際、易学関連の収蔵物のほとんどは処分されたということだったが、いくつかはまだ会長宅で保管されていたようで、一昨年にも筮具一式を頂戴している。今回も写真の品々が我が蒼流庵コレクションに嫁いで来ることになったが、来歴の確かさがまた嬉しさを倍増させてくれる。もっとも嬉しかったのは...