私的読書法
- 2016/07/30
- 17:28

読書の方法など、文字通り十人十色で、読書家の数だけ異なったやり方があると言えるかもしれない。そして、その方法も普通は長い年月をかけて作り上げられていくものであろう。しかし、娯楽小説を楽しむが如き暇つぶしの読書ならいざ知らず、何らかの知的生産活動を前提として書物に取り組むなら、それに適した読書の方法をなるだけ早いうちに確立するのが望ましいと最近とみに感じるところがある。書店に行くと、読書論や読書の技...
『支那学術文芸史』長澤規矩也著
- 2016/07/27
- 18:45

『支那学術文芸史』長澤規矩也著(三省堂/1938年刊)長澤規矩也の本では、『支那学術文芸史』も好きな一冊だ。中国思想史の概説であるが、表題にある通り、詩文小説などの文芸についても力を入れて書かれている。文体も古めかしく、若書きの部類に入る書物かと思うが、それだけに筆致にも勢いがあって良い。戦前の刊行であるから修正すべき内容も多々あろうが、碩学の書いた通史や概説書には、時を経て色褪せない明晰さがあって、...
『昔の先生今の先生』長澤規矩也著
- 2016/07/24
- 21:11

『昔の先生今の先生』長澤規矩也著(愛育出版,/1970年初版)長澤規矩也の数ある著作の中で最も“らしさ”の出た本は、何と言っても『昔の先生今の先生』であろう。そして、この“らしさ”の遺憾なく発揮された書物は、べらぼうに面白いのである。著者の師に当たる先生方や同僚の学者達の逸話が中心であるが、裏話の類に属する、つまり書かれる側からは甚だ迷惑であろう記述が随所に出てくる。序文は以下のような書き出しで始まる。学生...
『図書学辞典』長澤規矩也編著
- 2016/07/21
- 18:45

『図書学辞典』長澤規矩也編著(三省堂/1979年刊)谷沢永一が「書物に関心のある方にとって必携」と言う『図書学辞典』は、長澤規矩也晩年の編著で、辞典といってもハンディなサイズだが、内容は実に濃く、通読するだけでも随分楽しませてくれる本だ。副題に「和漢書誌学用語早わかり」とあるが、古典籍に関わる人は是非とも座右の書とされるが良かろう。随所に炸裂する長澤節は痛快である。“文献学”について、「わが国文学界では...
『古書のはなし』長澤規矩也著
- 2016/07/17
- 12:44

『古書のはなし ― 書誌学入門 ― 』長澤規矩也著(富山房/1976年初版刊)書誌学などという煩瑣な学問を庵主は好まない。この手のアプローチは得てして枝葉末節に流れ、本筋を見失いがちになる。とは言え、書誌学を無視した粗雑な研究は殆ど見るに堪えない。そして、この読むに堪えない文章(研究と呼べる代物ではないが著者の肩書は面白いことに研究家となっているものも少なくない)がネットの世界には溢れかえっている。また、悲...
四庫全書
- 2016/07/15
- 20:59
清代の欽定図書と言えば、『康煕字典』や『古今図書集成』など今日でも繙かれる有名な書物が色々あるが、その規模の最大を誇るものと言えば、言わずと知れた『四庫全書』である。乾隆帝の勅命により十年かけて編纂された此の書物は、文字数10億字という膨大なもので、完成までに夥しい費用と人員が投入された。この中に収められた数少ない外国人の著述の一つが山井崑崙の『七経孟子考文』であることは以前書いたのでご記憶の方もお...
浅学菲才の中国哲学教室
- 2016/07/12
- 18:12

浅学菲才の中国哲学教室は、私の好きなサイトの一つで、先日ご紹介した「中国古典叢書内容簡介」はこのサイト中の一頁である。作者の罔殆庵々主氏は、東洋大で中哲を学んだ方らしい。白水社にお勤めで、専門の研究者ではないようだが、つまらぬ文化事業よりも素人の手作りサイトのほうが遥かに内容が豊かであるという典型のようなサイトである。残念ながら最近は更新がないようで、リンク切れになっているページが随分あるのが惜し...
中国古典叢書内容簡介
- 2016/07/10
- 19:53

「訳本などを読んで判ったような気になっても本当に読んだ内には入らぬ。」そう言われれば確かにその通りで、大抵訳本で済ませている身を省みれば私など唯恥じ入るほかはないが、興味のある漢籍を全て白文で読解するなど到底出来ることではないし、そんな学力はきょうび専門家でさえ、持ち合わせていないだろう。それに、『傷寒論』であれ、『周易』であれ、『論語』であれ、自分の専門とする書物でも、先人諸家の訓読や訳解と自身...
宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧
- 2016/07/08
- 18:47

反骨の支那学者・長澤規矩也(1902~1980)によると、「我が国における宋元版の宝庫は、宮内庁の書陵部、内閣文庫、岩崎家の静嘉堂文庫である。この中で質においては書陵部、量においては静嘉堂文庫を最とし得よう。書陵部の宋元版の大部分は徳川幕府から引き継いだもので、その中には金沢文庫旧蔵本もある。」ということだ。この貴重書の宝庫たる宮内庁書陵部の収蔵漢籍が遂にデジタル化されて、貧しき我ら一般人も容易に閲覧する...
キリ番プレゼント~33333~
- 2016/07/05
- 19:35
今回のキリ番33333では、2名の当選者から申請を頂きました。一人目はなんと永杜鷹堂先生の令孫である田村さん、もう御一方は東京の断易家Aさん。周易or漢方の資料をプレゼントする算段で居た為、ちょっと戸惑いましたが、田村さんには薬石を練り込んで作ったペアマグ、Aさんには中文書の易学辞典類のPDFを御送りしました。田村さんからは大変達筆な御礼状を頂戴し、Aさんからも丁寧なメールを頂きました。御二方とも喜んで頂...
手の内
- 2016/07/02
- 10:13
或る人から「あそこまで学問上の手の内を公開して良いのか?」というようなことを言われた。確かに、自分の学問的方法は「あそこまで」というか殆ど全て包み隠さず公開している。これは私が親切寛大な人間であるというだけでなく、ブログの趣旨の一つが「数年前の自分なら読者として読みたかったであろう内容を書くこと」だからである。私は学問を殆ど独学でやって来た。漢方こそ粟島先生に少しの期間習ったが、易学は略々完全な独...