四象筮のススメ
- 2017/02/28
- 18:08
本筮は手間がかかる上、変爻の陰陽出現率に偏りがあるし、中筮は爻卦が利点になると同時にそれが判断を迷わせる要素として働くことも屡々、しからば四遍筮はどうかと言えば、本之卦の接続が変爻によらない為、極めて不自然なニュアンスを感じて抵抗を抑えがたいというのが正直なところだ。そこで思いついたのが、中筮の変法である。どういうことかと言うと、中筮では八払いを六回繰り返して卦を求めるが、この八払いを四払いに変え...
爻卦の難しさ
- 2017/02/27
- 18:17
中筮法の最大の特徴は、言うまでもなく爻卦が表出される点で、これを用いて内情の詳細を窮理する点に此の筮法の特色と利点があると言えよう。しかし、この爻卦というのが中々厄介な代物である。爻辞占が基本の三変筮に飽き足らなくなって、中筮に手を出し始めた頃などは、爻卦はすこぶる頼もしく見えるものだが、それも束の間、今度は其の爻卦に振り回されるようになるのが普通ではないかと思う。例えば、風雷益や火天大有といった...
変と遍
- 2017/02/25
- 18:19
繋辞伝の大衍筮法は、「十有八変而成卦」とあることから、十八変筮法ともいい、その所作から略筮を三変筮、中筮を六変筮ともいう訳だが、紀藤元之介先生考案の元之筮法の別名は「四遍筮」の表記となっている。以前、この遍字について、紀藤門の高弟である麻野勝稔先生に尋ねたことがあった。先生答えて曰く、「紀藤先生は、口頭では“四遍筮”の語を用いることが多かったが、活字で表記する際は“元之筮法”の名称を主に用いておられた...
二用のはなし
- 2017/02/23
- 18:44
「九」と「六」に触れたついでに、用九および用六についても、簡単にご紹介しておきたい。用九・用六とは、乾坤のそれぞれ上爻の辞の次に置かれているもので、すなわち、乾為天に「用九、見群龍无首、吉。」、坤為地に「用六、利永貞。」とあるのがそれである。これには凡そ三種類の説があるようだ。一つは、用九用六というのは、六爻の総辞で、乾の剛・坤の柔のはたらきを示す定則であるというもので、王弼が唱えた見方である。乾...
九と六~爻題のこと~
- 2017/02/21
- 18:35
我々が使用している易のテキストでは、それぞれの爻の頭に、九と六の数字を使った爻題が附されている。例えば、純陽の乾為天の場合、下から順に、初九・九二・九三・九四・九五・上九となっており、純陰の坤為地なら、初六・六二・六三・六四・六五・上六という具合だ。明の来知徳は、繋辞伝が説く易の生数「天一、地二、天三、地四、天五」のうち、天の数である一と三と五とを合すれば九となる故に九を陽の数とし、地の数である二...
周易復古三十六変筮法の怪
- 2017/02/19
- 21:08

通常、本筮法や大衍筮法と称する繋辞伝記載の筮法を、我々は朱子の説くが如き十八変筮として理解している訳だが、庵主の最も崇敬する鴻儒・根本通明翁は、朱子を駁して、三十六変により大成卦を得る筮儀こそ、真の繋辞伝の筮法であるとし、周易復古三十六変筮法として之を打ち出している。嘉永二年、始めて十有八変して卦を成すとは、乃ち三画小成の卦にして、六画大成の卦にあらざるを悟り、之を思い、之を思うもの数年、簡練して...
大衍之数五十
- 2017/02/17
- 20:31
占筮において用いるところの策数五十というのは、言うまでもなく繋辞伝に記された「大衍之数五十」に依る訳だが、此の数についても諸説入り乱れて、まさに百家争鳴の有様である。京房は、十干・十二支・二十八宿の合計であると云い、馬融は、北辰・両儀・日月・四時・五行・十二月・二十四気の合計であると云うが、この馬融説を採る学者には、王弼・王粛・孔穎達・王安石・程逈らが居り、支持者の多い説のようだ。また、南宋の大儒...
本筮法再論
- 2017/02/14
- 18:07
筮竹こそが易占における真の立卦具であるとして、擲賽や擲銭によって卦を起こす占者を上から目線で小馬鹿にする鼻持ちならない筮竹至上主義者とでもいうべき連中が居る。しかし、先秦の古文献に筮のことが書かれているからといって、筮竹を用いるのが本来だというなら、使用する筮法もまた現在我々が知り得る最も古い筮法すなわち繋辞伝の説く大衍筮法でなくてはならぬはずだが、そんな筮竹主義者でも、メインは三変筮で時に中筮を...
二遍筮について
- 2017/02/12
- 15:00

1961年、光文社のカッパブックスより、易占分野における戦後最大のベストセラーとなる書物が上梓された。言わずと知れた黄小娥女史の『易入門』である。この本は、爻を求めず、大成卦のみで占断するという簡便に加え、筮竹を用いる代わりに、10円玉6枚を一度に投げて立卦する擲銭法を打ち出した為、これまで易という難解な占術に無縁であった一般大衆に広く受け入れられる結果となった。その煽りを受けて、岩波文庫『易経』まで品...
先進筮法としての三変筮
- 2017/02/10
- 18:02
加藤大岳氏(1907~1983)は、最初期の著述『易学通変』115項において、高島呑象の功績は、易占方術家としての術法にあったのではなく、之が実践の範囲を拡大し、国家社会の問題にまで応用し、我が国としては前人未到の境地を拓いて、易占の社会的価値を高揚したという点にあるのであって、術法における彼の努力を強いて称するならば、筮法並びに占法を極めて簡易なものにし、従って容易に何人にも行えるものたらしめた結果、全国...
易と八卦
- 2017/02/07
- 18:25

陰陽五行が易を構成する基本要素でないならば、易の基本的構成単位は如何なるものかというに、八卦がそれであると言えるやも知れぬ。加藤大岳氏は、五行は抽象的であり、批判的な宇宙観を有っているのに対し、八卦は具体的であり肯定的な宇宙観を有っているとも見ることが出来、その発生の時代を考えれば、具体的で素朴な八卦の方が遥かに五行よりも古いことが想像される、としている。また、『易緯乾坤鑿度』は、八卦の卦画はそれ...
易と陰陽五行②
- 2017/02/04
- 11:31
先に、陰陽思想が易本来のものでないことを見たが、五行もまた同様に、易とは無関係のものである。今では一つの熟語のように用いられる「陰陽五行」も、それぞれ起源を異にする二つの学派であり、『漢書』芸文志も又、陰陽家と五行家とを別個に立てていることが知られる。しかし、戦国時代には殆ど同一系統といって良いほどに関係を深めたらしく思われ、例えば、鄒衍は『漢書』芸文志では陰陽家の内に入れられていて、其の書も陰陽...
易と陰陽五行①
- 2017/02/01
- 22:02
東洋諸学の根底には陰陽五行説があり、加えて、易が諸学の源流になったとする通説から、陰陽五行説もまた易に端を発したもののように思っている人が少なくないようである。以前、目黒玄龍子の高弟であった竹安輝高先生の『八面体質論詳解』序文を紹介したことがあるが、易のイロハを学んでいなかったら、こんなふうにはならなかっただろう。その後「蒙色望診」「八面」の研究に入ったが、基礎は陰陽・五行にあることを知っていたか...