当たった八卦
- 2017/05/30
- 18:21
支那の學者で左傳のことを研究しました汪中なども注意して居つたのでありますが、左傳に記す所は、人事のみでなく、天道・鬼神・災祥・卜筮・夢の五つであるとして、一々その例を擧げて居りますが、その中で歴史的思想に關係することは主に災祥・卜筮・夢の三つであります。これは隨分色々歴史的思想の發生に關係すると思ひます。はつきり分りよいのが卜筮でありますが、左傳・國語の卜筮に關したことは、日本でも卜法の上から注意...
左国占話の虚構に気付いた朱子
- 2017/05/28
- 12:00

漢代の易学が象数易に傾きすぎた反動から、その後は、王弼や程伊川など義理を重視して占筮を軽視する諸家が多く出たが、南宋の大儒・朱子は、再び『周易』を占筮のテキストと見做し、義理と占筮との総合をはかった。従って、朱子は占いを肯定する立場である訳だが、単にそれだけに終わらないのが、その合理性の非凡なところで、左国が載せる易筮の記録について鋭い指摘をしている。一つは、齊国の田氏のことで、齊を奪った田氏の先...
達人伝説の虚像③
- 2017/05/26
- 18:08
三人の中で、一番怪しげなのは新井白蛾である。呑象や中州はそれなりに占例が豊富に残されているが、白蛾に至っては指折り数える程度しかない。日本易学中興の祖などと言っても、これでは判断材料が乏しすぎる。私は先に白蛾の射覆手品説を論じた。勿論、確たる証拠は何もない。あくまでも、状況証拠を積み重ねて有罪(?)を立証する他ない訳だ。ところで、白蛾に限った話ではないが、占い愛好家というのは、どうしてこうも御目出...
達人伝説の虚像②
- 2017/05/25
- 18:43
加藤大岳氏の大成せし“昭和の易”は、易占法における近代化の所産であるが、それは大島中堂を経て、真勢中州の易法が其の源流を成したものと見て良い。高島嘉右衛門もまた真勢の易法に尋常ならざる興味を抱いていたことが、中国語版『高島易断』に見えている。私は真勢易に関しては、薮田嘉一郎先生の説を中心として、批判的な見地から過去に幾度も取り上げて来たが、ここでもう一度この問題を再論しておきたいと思う。薮田先生の真...
達人伝説の虚像①
- 2017/05/24
- 18:29
「読象の妙は白蛾にきわまり、読卦の妙は真勢中州にきわまり、読辞の妙は呑象にきわまる」とは、敬愛する薮田嘉一郎先生の言であるが、この三人は我が国近世における易占の達人として誰もが其の名を知る存在である。しかし、本当に彼らは私たちが想像しているような精義入神の達人であったのだろうか。捻くれ者の私は、彼らに対する信仰に似た闇雲で無批判な賞賛を見聞する度に、そのベールを剥ぎ取って、連中を栄光の座から引きず...
周易観相法
- 2017/05/21
- 21:29
周易観相法などと言うと、何やら周易と人相術を絡めた占法のように聞こえるが、実際はそうではない。これは、その昔、私が射覆に強い関心を抱いていた時分に考え出したもので、一応周易の範疇のつもりであるが、内実は霊感占とも画相の一種とも言えるから、周易観相法というのは便宜的な仮称に過ぎないものである(周易瞑想法と呼んでも良いかもしれない)。やり方は実に他愛のないもので、得卦を図に表し、それを凝視して占考のヒ...
射覆について
- 2017/05/06
- 09:41
すべての射覆が手品まがいのイカサマであるのかどうかはさておき、射覆の歴史を遡って辿ると、相当古くから行われていたことが判る。『漢書』東方朔伝には、「上(※武帝を指す)嘗てもろもろの数家をして射覆せしむ。守宮を盂の下に置きてこれを射しむ。皆中つること能はず。朔自ら賛して曰く、臣嘗て易を受く。請ふこれを射ん。云々」とあり、ここには既に“射覆”の語が見えている。また、『漢書』芸文志の蓍亀の項に見える「周易...
イリュージョンとしての射覆②
- 2017/05/05
- 19:29

何年か前、奈良場勝先生に御縁を頂いたはじめ頃、先生から随貞や白蛾といった江戸時代の著名な易占家は、射覆によって頭角を現したもので、江戸時代には射覆が名をあげる手っ取り早い手段だったらしいというような趣旨のお話を伺った。そして、先生は射覆を種仕掛けのある手品奇術の類であろうとしておられた。私は実占家のはしくれとして、随貞や白蛾が行ったという射覆を手品と捉えたことはそれまで無かったし、江戸時代の易法を...
イリュージョンとしての射覆①
- 2017/05/04
- 19:10
他人の目を意識した虚栄心の先行する占においては不応卦が出やすい、否、加藤大岳先生ほどの名人でさえ、当たった試しがないという。そうなると、ここで疑問になって来るのが「射覆」である。あれなど、まさに、他人の目を意識した占の代表と言って良かろう。何年か前、御法川もも代先生のお住まいに伺った際、如何なるいきさつであったかは思い出せぬが、話射覆に及びしことあり、その折先生は、「あれはさも当たっているかのよう...
得卦と虚栄心
- 2017/05/01
- 19:36
不応卦が著しく出現しやすいのが、他人の目を意識して執った筮で、ブログやHP、ツイッター、SNS、掲示板などにおける公開を前提に占したものには、不応卦が出やすい。恐らく、自らの占技を誇らんが為の揲筮では、阿頼耶識めいたところにアクセスしようとしても、何らかの力が働いて(これは外部からのものではなく内的なものであろうと私は推測しているが)ブロックされてしまうのではなかろうか。プロの占い師などが、こういった...