淫羊藿を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/30
- 10:58

イカリソウ(2017年4月30日/奈良県御所市)淫羊藿は命門を補う要薬で、中国ではメギ科ホザキノイカリソウやシロバナイカリソウを当てるといい、使用処方としては二仙湯などが有名であるが、薬用養命酒にも入っている。要は精力剤の類で、羊がこれを食べてギンギンになったところからこの名があるという。広末涼子ちゃんの写真集さえあれば、こんなものは必要なさそうに思うが、それでも駄目になったらこういう生薬の力を借りなけれ...
大豆黄巻を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/29
- 08:26

ハマエンドウ(2014年4月27日/大阪府岬町)大豆黄巻は、『神農本草経』中品に収載され、仲景方では『金匱要略』の薯蕷丸に用いられている。通常は大豆のモヤシを乾燥させたものを指すが、赤松和漢薬によると、朝鮮ではハマエンドウのモヤシを当てるという。ハマエンドウは数こそ少ないが、大阪でも海岸部に自生を見ることが出来る。大豆の原種であるツルマメも淀川などで普通に観察出来るので、いずれにせよ大豆黄巻は大阪に産する...
萊服子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/28
- 09:14

ハマダイコン(2014年4月27日/大阪府阪南市)“薬は毒である”という吉益東洞の考え方からすれば、医食同源や薬食同源などと言って、薬と食とはもともと同じものだ、だから食べ物で病気を治すことが出来る、といった言説は畢竟、健康食品を売り込もうとする商売人のデマカセに過ぎないと、私が漢方を習った先生はよく言っておられたが、馬王堆の出土医書『五十二病方』を見ると、やはり薬は食の延長であったらしいように思われる。そ...
藁本を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/27
- 18:16

ヤブニンジン(2014年4月27日/大阪府貝塚市)『神農本草経』中品の部に収載される藁本は、頭痛などによく用いられる薬物で、セリ科のLigusticum sinenseの根茎が当てられているが、これは日本には産せず、代わりに、同じくセリ科のヤブニンジンやカサモチが和藁本の名で用いられて来た。少し前までは国産の和藁本も流通していたらしいが、昨今見かけなくなったようだ。ヤブニンジンは割に山野で見かけるが、カサモチは非常に少なく...
甘遂を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/26
- 18:37

ナツトウダイ(2014年4月27日/大阪府貝塚市)甘遂も、巴豆や昨日紹介した澤漆と同じく、現代日本漢方では用いられないトウダイグサ科の植物であるが、仲景方における出番は同科の生薬の中で一番多く、甘遂半夏湯・大陥胸湯・大陥胸丸・十棗湯・大黄甘遂湯の五処方に用いられている。現在中国で甘遂に当てているEuphorbia kansui Liouは日本に産しないが、国産ではトウダイグサ科のナツトウダイ(Euphorbia sieboldiana)を当ててい...
沢漆を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/25
- 18:57

ノウルシ(2014年4月25日/大阪府三島)トウダイグサ科の生薬と言えば、吉益東洞が好んで用いた巴豆など其の代表格であろうが、同科には毒性の強い植物が多く、日本では法的に使用出来ないこともあって、我が国の漢方家には馴染みのないものが多い。沢漆などもその一つであるが、仲景方では、『金匱要略』の中に、沢漆湯というのがある。基原には、ノウルシやトウダイグサが当てられているが、どちらも園芸用に採取されるという訳で...
太子参を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/24
- 20:40

ワダソウ(2018年4月23日/広島県庄原市)趙学敏の『本草綱目拾遺』に「百草鏡にいわく、太子参というのは遼参の小さいもののことで、別の種類ではない。これは蘇州の人参問屋で人参の包の中から挾りだした小さいものをこのように名付けて売り出すのだ」とあり、これらから察するに2~3年生の間引き人参を太子参といったもののようである。しかし現在市販されている太子参は決してウコギ科(Araliaceae)のものではない。別名を「孩...
石菖蒲を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/23
- 18:08

セキショウ(2018年4月22日/大阪府和泉市)『神農本草経』で上品に分類されている菖蒲が、現在のセキショウなのか、ショウブなのか、今一つ判然としない。ともにショウブ科の植物であるが(少し前までサトイモ科に入れられていた)、セキショウが比較的風光明媚な渓流添いで見られるのに対し、ショウブは池や小川の泥中に生育するという風に、姿形に似たところはあっても生育環境が大きく異なる。現在、中医学では菖蒲にセキショウ...
常山を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/22
- 11:27

コクサギ(2016年4月22日/大阪府南河内)現在、常山の正品は、ユキノシタ科ジョウザンアジサイの根ということになっているが、昔から多くの異物同名品が知られる薬物である。抗マラリア作用を有する生薬として知られるが、マラリアに縁遠い日本の漢方家には馴染みの薄い部類に入るだろう。仲景方では、“蜀漆”の名で登場し、蜀漆散・牡蠣湯・桂枝去芍薬加蜀漆竜骨牡蛎救逆湯・牡蠣沢瀉散の四方に用いられている。ジョウザンアジサイ...
紫参を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/19
- 18:06

ハルトラノオ(2014年4月19日/大阪府南河内)紫参は、仲景方では、含有処方が二方あって、即ち『金匱要略』の澤漆湯と紫参湯である。薬用植物図鑑で基原を調べてみると、山では普通に見られるシソ科アキノタムラソウの他に、タデ科ハルトラノオやイブキトラノオなども当てられているようだ。ハルトラノオは大阪にも分布があるが、イブキトラノオは自生していない。ただ、伊吹山に多い為、「イブキ」の名を冠してはいるが、伊吹山に...
莨菪を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/18
- 18:34

ハシリドコロ(2016年4月15日/奈良県天川村)ロートコン(莨菪根)は、ナス科ハシリドコロの根茎で、早春に花を咲かせる植物であるが、林床下の薄暗いところに、しかも花は葉の下に隠れるように付く為、撮影がなかなか難しい厄介な被写体である。夏前には枯れて跡形も無くなってしまう為、目にすることが出来る期間はごく短い。シーボルトは、尾張国でハシリドコロを見つけ、ヨーロッパのベラドンナ(Atropa bella-donna)と誤って...
貝母を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/17
- 18:54

アミガサユリ(2017年4月14日/大阪府奥河内)貝母も何やらよく判らぬ生薬で、中国ではナント現在20種類を超える植物が基原として当てられているというが、日本ではそのうち「浙貝母」と称されるユリ科アミガサユリの鱗茎が貝母として用いられている。奈良県で栽培されているものは「大和貝母」の名で知られているが、園芸用に植えられていた個体が野生化したものが多く見られ、私が奥河内で目にしたのもそうした逸出集団であるよう...
連翹を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/16
- 18:00

シナレンギョウ(2013年4月10日/錦織公園)今の時期、公園を散歩するとレンギョウが沢山の黄色い花を咲かせているのに出くわす。この成熟果実が漢薬の連翹であるが、公園で見かけるものは、遺伝的に同じ物ばかり植えられている為、結実することがなく、薬用部分を目にすることは出来ない。モクセイ科のレンギョウが正品とされ、シナレンギョウやチョウセンレンギョウは品質がやや劣るとされている。我が国にも在来の固有種があって...
片桐棲龍堂へ~生薬探偵の休日~
- 2018/04/15
- 21:13

「ねぇ、蒼流庵ちゃん、あたし、久しぶりに堺の片桐棲龍堂さんへ行くの。お暇なら、おでかけになりませんこと?小西製薬の服部先生もお誘いしてるから、紹介してあげるわヨ、ウフフ」と、先週庵主にお声をかけて下さったのは、元内藤記念くすり博物館学芸員で、第14回矢数医史学賞受賞者の野尻佳与子先生である。片桐棲龍堂さんは、創業450年になんなんとする堺の老舗で、先祖は岸和田藩等で御典医を務めていたらしく、現在は伝来...
白頭翁を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/04/13
- 21:08

オキナグサ(2013年4月10日/錦織公園)古典には顔を覗かせるものの、頻度はさほどでもなく、日本では薬事法の関係で使用することもまずないのに、それでいて不思議と印象に残る生薬というのがいくつかある。白頭翁など、その一つではあるまいか。キンポウゲ科オキナグサ属の多年草で、地下部を薬用とするのだが、花期が終わって綿毛になると、老人の頭のように見えることから、白頭翁と呼ばれる。中国の正條品はヒロハオキナグサで...