番杏を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/31
- 18:48

ツルナ(2013年5月31日/大阪府泉州)胃癌に効くという番杏は日本の民間薬で(分布域そのものはアジアから南米までかなり広い)、中国の種々の本草書には記載がなく、呉継志(琉球)の『質問本草』外篇巻三に記述されるのが最初らしいが、本書は特にその薬効については記述しない。難波和漢薬は、胃癌に対する効果についてやや懐疑的な記述をしているが、私が親しくして頂いているさる名人は胃癌患者に睦和湯加番杏を用いて良い手ご...
鹿蹄草を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/28
- 18:17

イチヤクソウ(2016年5月27日/奈良県某所)何とはなしに、イチヤクソウは日本の民間薬であるように思っていたが、『本草綱目』草部に収載されており、浙江省や安徽省あたりで多く採取されていて、中薬として広く認識されているものらしい。もっとも、有名処方ではこれを用いるものなく、使用法は単味が中心で、やはり民間薬的なニュアンスはあるようだ。大阪でも時折見かけるが、鹿の食害を受けるので全国的には数が減っているもの...
天麻を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/27
- 14:01

オニノヤガラ(2016年5月27日/奈良県某所)ウチダ和漢薬が発行している「ウチダの和漢薬情報」平成28年5月10日号に天麻が紹介されていて、そこには“天麻は高価な生薬のため、ジャガイモの塊茎を蒸乾した「洋天麻」と称する偽品が出まわった事もあります。しかし、今日では天麻の栽培が可能となり中国各地で栽培されています。”との記述がある。が、いつだったか、中医師の甄立学先生に尋ねたところ、今でも市場に出回っているも...
白芷を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/25
- 18:11

ハナウド(2013年5月24日/大阪府北河内)『神農本草経』で中品に分類される白芷は、解表散寒・祛風止痛などの効を持つ生薬で、含有処方の代表的なものは、五積散や荊芥連翹湯あたりであろうか。基原はセリ科シシウドのヨロイグサの根で、平成12年までの日本薬局方では基原は「ヨロイグサまたはその変種の根」であったのが、翌年の改定以後「ヨロイグサの根」に限定されるようになった。薬効は先に挙げた藁本に類似し、原植物にも混...
何首烏を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/24
- 18:44

ツルドクダミ(2013年5月24日/大阪府東大阪市)七宝美髥丹や何人飲といった使用処方は、さっぱり馴染みのないものであるのに、何首烏の知名度が意外に高いのはどうしてだろうかと思う。宋の『開宝本草』に初出というから、知られるのが比較的遅かった生薬らしい。ただ、李翱の『何首烏伝』に見るごとく、服用すると白髪が黒くなり、130歳になっても頭が黒々としていたなどと聞くと、最近めっきり白髪が増えて白頭翁まっしぐらの庵...
人参公園を訪ねて~生薬探偵の休日~
- 2018/05/22
- 18:57

人参公園(福岡市博多区博多駅前4丁目117)博多駅から徒歩五分ほどのところにある人参公園は、その昔、福岡藩が朝鮮人参を栽培していた薬園の跡付近に立てられたものである。が、説明版の類もなく、知らずに来たのでは園名の由来がさっぱり判らないのは不親切。遊具もありきたりで、せめて人参の恰好をした何かを設置するくらいの遊び心があっても良さそうなものだ。以前は、「人参町」「人参畑」といった地名があったらしいが、現...
竹参を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/21
- 18:43

トチバニンジン(2012年5月21日/大阪府泉州)竹節人参(略して竹参)は、ウコギ科トチバニンジンの根茎で、日本では高麗人参の代用として用いられて来た歴史があり、薬局方にも記載されているが、古方派の泰斗・吉益東洞は、朝鮮に産する人参は味が甘くて心下痞鞕に用いても効果がなく、苦味の強い大和の人参を使うべきだと言っている。この説は、東洞が最も心血を注いだ著述である『薬徴』に詳しく、これは東洞が一薬一能の考え方...
虎耳草を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/18
- 18:54

ユキノシタ(2014年5月18日/ご近所さんの植木鉢)“虎耳草を求めて”も何も、手近な場所で普通に見られるから、わざわざ“求める”必要はなく、日常生活の中で目にする類のものであるが、街中で見かけるものは、栽培品の逸出かもしれない。日本では外用薬として民間に用いられるが、中国では一応分布するも不人気な生薬らしく、主要な本草書は虎耳草について記載せず、管見の限りでは、『本草綱目』が簡単に触れている程度のようだ。そ...
遠志を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/17
- 18:37

ヒメハギ(2014年5月17日/大阪府泉佐野市)遠志は、中国に広く産するイトヒメハギの根で、本来、メジャーな使用処方は帰脾湯・人参養栄湯・加味温胆湯くらいであるから、頻用薬物とは到底言えないが、昨今、生薬価格の高騰で経営危機に喘ぐ漢方メーカー各社にとって救世主のような売れ行きを示しているのが、この遠志であるという。なんでも、認知症に有効ということで、ブームの淵源となった(或いはブーム作りに利用された)のは...
白前を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/13
- 16:26

イヨカズラ(2015年5月13日/大阪府泉州)“肺家の要薬”とされる白前は、仲景方では、澤漆湯という含有処方が『金匱要略』に一方だけ見えている。『千金方』にも白前湯というのが出ているが、いずれにせよ、あまり馴染みのある生薬ではない。我が国の本草家は、この白前に長らくキョウチクトウ科カモメヅル属イヨカズラの根を当てていたが、それは誤りで、白前の基原植物は日本には分布していない近縁の別の植物であるようだ。2015年...
天南星を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/12
- 17:24

ムサシアブミ(2018年5月10日/宇和島城登山道)“天南星”の三字は、何やらロマンチックな字面であるが、基原の容貌は蛇が鎌首をもたげたような恰好をしていて、毒々しい姿そのままの有毒植物である(半夏などもそうであるが、サトイモ科には有毒植物が多い)。蛇の頭のように見えるのは花を包む仏炎苞という部分である。天南星の仲間は種類も多く(大阪の金剛山には4種類分布していると、近畿植物同好会々誌の最新号に書かれていた...
細辛を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/11
- 21:26

ウスバサイシン(2014年5月11日/奈良県)このひと月ほど、庵主がフィールドで探し当てた生薬をアレコレご紹介して来たが、使用頻度という点ではそのどれと比較しても、今日ご紹介する細辛は頻用の薬物であると言えよう。仲景方では、小青竜湯や麻黄附子細辛湯など、含有処方は二十二方にのぼる。ウマノスズクサ科ウスバサイシンやケイリンサイシンを基原とし、どちらも日本で見られないことはないが、ケイリンサイシンは九州に一部...
爬虫類を求めて~生薬探偵の昼食~
- 2018/05/05
- 11:59

爬虫類カフェ ROCK STAR(大阪府大阪市浪速区難波中2丁目7−7 ナンバFKビル)だいたい犬猫は大嫌いなのだが、不思議と犬猫どもも庵主の感情を察知する能力があるのか、敵愾心をむき出しにしてくるようだ。猫は懐くどころか、引っ掻こうとするし、犬は狂ったように吠え立てて来て、先日など盲導犬まで唸り声をあげる有様である。そんな庵主の心を癒してくれる動物は、哺乳類ではなく爬虫類で、一年ほど前に足を運んでから、行く...