蛇牀子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/29
- 18:58

ハマゼリ(2016年8月28日/大阪府泉州)『神農本草経』に上品として記載される蛇牀子は、はっきりとした基原は不明ながら、現在、中国ではセリ科オカゼリの成熟果実を充てており、江戸時代、我が国の本草家は海浜植物であるハマゼリを真物とした。その後、ヤブジラミが用いられるようになり、かつて和蛇牀子と呼ばれたものがこれであるが、韓国産蛇牀子の基原もヤブジラミであるらしい。古来より婦人の陰疾の要薬とされ、仲景方では...
続断を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/28
- 18:43

ナベナの花(2015年8月28日/大阪府南河内)『神農本草経』上品の部に記載される続断は、現在は正條品としてマツムシソウ科トウナベナの根を充て、このものは我が国に分布を見ないが、近縁種であるナベナが北海道を除く全国に分布し、大阪では南河内で稀に目にする。“続断”の名称は、筋骨の折傷に効果があることから来ているらしく、他に“属折”や“接骨”などの別称があるが、婦人の不正出血や切迫早産といった女性の疾患にも用いられ...
蒺藜子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/27
- 18:01

ハマビシの花(2013年8月27日/大阪府泉州)『神農本草経』に上品として記載される蒺藜子は、ハマビシ科ハマビシの未成熟果実を乾燥させたもので、主として平肝熄風薬として用いられ、使用処方としては『済生方』の当帰飲子や『宣明論方』の蒺藜湯などがある。本来の生育地である自然海岸の環境が埋め立てなどにより悪化することで、全国的に個体数が激減している海浜植物だ。実は、大阪では一度絶滅宣言が出されたことがあるが、泉...
萆薢を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/26
- 11:51

オニドコロ(2012年8月26日/大阪府北摂)『神農本草経』に中品として記載されている萆薢は、主としてヤマノイモ科オニドコロの根茎より採る。利濕去濁・袪風除濕の効があり、『楊氏家蔵方』の萆薢分清飲や『聖済総録』の萆薢丸などに用いられている。山の中では普通に見られるが、初心者の内は、ヤマノイモ(自然薯)との区別が付きにくいかもしれない。根塊は苦く、一説には有毒という。ヒメドコロ(2015年8月22日/神戸市北区)ヤ...
半辺蓮を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/25
- 18:36

ミゾカクシ(2013年8月26日/堺市南区)半辺蓮は、キキョウ科ミゾカクシの全草を乾燥させたもので、先のタカサブロウと共に、この時期、田圃を散策すると比較的容易に見つけることが出来る。畔に筵を敷いたように沢山生えることから、アゼムシロの別名があるが、今のところ此の別名に相応しいような産状にお目にかかったことはない。清熱解毒、利水消腫の効があり、毒蛇の咬傷などにも用いるというが、本当に効くのだろうか。白花蛇...
旱蓮草を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/24
- 18:21

タカサブロウ(2013年8月26日/堺市南区)強壮・止血薬として用いられる旱蓮草は、キク科タカサブロウの全草を乾燥させたもので、『証治準縄』の二至丸などに用いられている。水田に生える雑草で、日本には稲作と共に伝わった所謂“史前帰化植物”と考えられている。変わった和名であるが、人名と見る説によれば、この植物は別名をボクトソウ(墨斗草)といい、搾汁が墨色で字を書くことが出来る為、貧しくて墨を買えないタカサブロウ...
地錦草を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/23
- 18:03

ニシキソウ(2016年8月24日/大阪府堺市東区)主に止血薬として用いられる地錦草は、トウダイグサ科ニシキソウの全草で、内服薬としても外用薬としても用いられる。ただ、在来種のニシキソウは昨今非常に少なく、外来の似たものが数種あって、正確に見分けるのは中々難しい。葉に暗紫色の斑紋があるのは、明治期に北米より入ってきたコニシキソウで、圧倒的にこれが多いが、他に斑紋がないものや、毛があるもの等、何種類か外来種が...
熊柳を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/22
- 18:00

クマヤナギ(2015年8月22日/神戸市北区)熊柳は、クロウメモドキ科のつる性落葉低木で、茎葉を乾燥させたものを煎じて利尿剤として用いる。日本の固有種で、我が国以外に分布を見ない為、中国の本草書には載せられていない。そんなにメジャーな生薬とも思えぬが、色々なメーカーが500gの刻みを出しているようだ(どんだけ売れてるんかいな?)。秋に特徴的な赤い実を付けるのだが、生薬探偵はあまりこの植物には縁がないらしく、ま...
『さわれば分かる 腹診入門』平地治美著
- 2018/08/19
- 10:03

『さわれば分かる 腹診入門』平地治美著(日貿出版社/2018年刊)先日、千葉の平地治美先生より最新の御高著『さわれば分かる 腹診入門』を恵与された。先生は千葉の小倉台で鍼灸院と漢方薬局を経営されており、4年前の処女作『げきポカ』(ダイヤモンド社/2014年刊)以来、一般向けの分かりやすい啓蒙書を立て続けに上梓されている。今回は『舌診入門 舌を、見る、動かす、食べるで 健康になる!』(日貿出版社/2015年刊)に続く、...
䗪虫を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/18
- 11:54

大黄䗪虫丸(北京同仁堂製)『金匱要略』に出ている大黄䗪虫丸は、我が国では昨今すっかり馴染みのない薬方となってしまっているが、台湾では科達製薬が散剤を製造しているし、中国では北京同仁堂をはじめ数社が丸剤を作っているようだ。日本以上に豊富な種類の仲景方が製剤化されている台湾は兎も角、仲景方をあまり使用しない現代中国では製剤化されている薬方は数える程しかないから、この丸薬は中国で製剤化されている数少ない...
青木香を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/17
- 18:41

ウマノスズクサ(2013年8月17日/大阪市淀川区)『神農本草経』で上品として分類されている木香は、現在では、唐木香・青木香・土木香・川木香の四種があって、それぞれ別の基原を充てているが、この内、青木香は我が国にも自生するウマノスズクサの根である。他に、マルバウマノスズクサも青木香に充てるが、こちらは大阪に自生がなく、全国的にも希少な絶滅危惧種だ。鎮痛消炎解毒の効があるとされるが、ウマノスズクサ科の植物は...
蜀椒を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/16
- 15:28

イヌザンショウ(2013年8月15日/兵庫県東播磨)山椒と言えば、香辛料として我々の日常に身近なものであるが、『神農本草経』では“蜀椒”の名で下品として収載され、これは蜀の地で良品を産することから付けられた名称らしい。仲景方では、我が国で最大の消費量を誇る方剤・大建中湯をはじめとして、烏梅丸・升麻別甲湯・烏頭赤石脂丸・王不留行散・白朮散・已椒藶黄丸などに用いられている。日本では、通常、ミカン科サンショウ属の...
乾漆を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/15
- 18:36

ヤマウルシ(2013年8月15日/兵庫県東播磨)ウルシと言えば、肌の弱い人だと近付いただけでもカブれることがある為、山ではあまり出会いたくない植物のひとつであるが、伝統工芸の一分野である漆芸には無くてはならないものであるし、生薬としても乾漆の名で用いられ、意外なことに『神農本草経』では上品として扱われている。駆瘀血の効があり、仲景方では『金匱要略』の大黄䗪虫丸に用いられている。山で出会う似た植物ではリュウ...
土瓜根を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/14
- 17:37

カラスウリ(2014年8月19日/ご近所)キカラスウリは数が少なく、普段目にする機会はあまり無いが、カラスウリは街中でも時折目にすることがある。葉の恰好は非常によく似ているが、キカラスウリの葉は光沢があってテカテカしているのに対し、カラスウリの葉にはそれが無い。根を土瓜根といって括樓根の代用などに用い、『神農本草経』では王瓜の名で中品に分類されている。行血破瘀の効があり、仲景方では『金匱要略』の土瓜根散中...
括樓根を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/13
- 16:18

キカラスウリの花(2013年8月13日/大阪市)『神農本草経』に中品として記載される括樓は、中国産はシナカラスウリを充て、我が国ではキカラスウリを充ててきたが、現在国産の市場品はないようだ。仲景方では、括樓薤白白酒湯・括樓薤白半夏湯・枳実薤白桂枝湯・小陥胸湯に括樓実が、柴胡桂枝乾姜湯・牡蠣沢瀉散・括樓桂枝湯・括樓牡蠣散・柴胡去半夏加括樓湯・括樓瞿麦丸に括樓根が使用されていて、こうして見るとそこそこの頻度を...