五味子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/29
- 11:18

チョウセンゴミシ(2017年9月29日/軽井沢)『神農本草経』に上品として記載される五味子には南北の別があって、普通、北五味子にマツブサ科チョウセンゴミシを、南五味子に同じくマツブサ科のサネカズラ(ビナンカズラ)を充てる。酸・苦・甘・辛・鹹の五味を併せ持つことから其の名があるというが、実際には酸味が突出しているようだ。肺を補い腎を益する要薬で、仲景方では小青龍湯や射干麻黄湯、苓甘姜味辛夏仁湯など、九方に用...
蔓陀羅花を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/28
- 18:09

チョウセンアサガオ(2015年9月28日/ご近所)華岡青洲が用いた麻酔薬“通仙散”に用いられている蔓陀羅花は、ナス科チョウセンアサガオで、現在、日本麻酔科学会のシンボルマークにもなっている。綺麗な花を咲かせる為、園芸で随分植えられているが、薬用植物の中でもとりわけ毒性が強く、誤食による中毒事故が後を絶たない。先日も、何と間違ったものか、誤って食べた夫婦が意識不明となって救急搬送されたというニュースを見た。花...
黄薬子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/24
- 15:33

ニガカシュウ(2015年9月24日/ご近所)『開宝本草』に「黄薬根」の原名で収載される黄薬子は、ヤマノイモ科ニガカシュウの塊茎を輪切りにして乾燥させたものである。清化熱痰の薬で、単味で使用されることも多いようだ。桑島目録には、1940-1950年に激減した。それまでは泉南地方にはかなり普通にあったという。とあるが、生薬探偵は最寄駅から自宅に帰る途中、家庭菜園のある豪邸の庭の隅に生えているのを偶然見つけた。ムカゴが...
党参を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/22
- 15:31

ツルニンジン(2013年9月20日/大阪府南河内)党参について、難波和漢薬は、『本草綱目拾遺』に「上党参」の名で収載されている。元来上党参は潞州上党産の人参(オタネニンジン)のことで、その品質最良の点から称されたのであるが、無計画な採取によるものか、植生の変化によるものか、この地から人参が産出されなくなり、代わって根の外観は似ているが、植物的には全く異なった党参が産出されるようになったものと思われる。とし...
大戟を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/21
- 18:20

タカトウダイ(2012年9月20日/大阪府泉州)『神農本草経』に下品として収載される大戟は、水気を強力に下す作用があり、仲景方では最強の瀉下薬である十棗湯に用いられ、『三因方』の控涎丹なども使用処方として有名。赤松和漢薬は主としてトウダイグサ科タカトウダイを充てるとし、難波和漢薬はアカネ科に由来する紅芽大戟、マメ科に由来する草大戟、トウダイグサ科に由来する京大戟の三種が現在中国の市場に出回っているが、古来...
五倍子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/20
- 18:25

五倍子(2018年9月16日/大阪府和泉市)五倍子は、ウルシ科の落葉高木であるヌルデの葉にヌルデシロアブラムシが寄生して出来る虫癭である。収斂作用があって下痢等に用いられるが、生津液や降火、止血などの効もあり、使用方剤としては『和剤局方』の秘傳玉鎖丹や『婦人良方』の四神丸、『万病回春』の黒白散など。また、タンニンを豊富に含む為、皮なめしに用いられたり、黒色染料の原料にもなる他、かつてはお歯黒にも使用された...
前胡を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/19
- 18:09

ノダケ(2013年9月19日/大阪府南河内)止咳平喘薬である前胡は、柴胡の代用として使用されることも多いが、そもそも仲景などが用いていた昔の柴胡はもともと前胡だったとする説もあって、生薬基原問題の難しさと面白さを窺わせる。用いられる処方としては『証治準縄』の前胡湯や前胡散など。基原には主として二種類あり、すなわちセリ科のPeucedanum praeruptorumと同じくセリ科のノダケである。前者は白花前胡といい、我が国には...
敗醤を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/18
- 18:15

オミナエシ(2013年9月19日/大阪府中河内)『神農本草経』で中品として記載される敗醤は、オミナエシ科オミナエシやオトコエシの根で、清熱解毒の効があり、仲景方では『金匱要略』に薏苡附子敗醤散というのがある。オミナエシ科の植物には、古く腐敗した発酵食品のような臭気があり、漢薬名の“敗醤”はそこから来ている。オミナエシは、秋の七草に数えられ、かつては日当たりの良い場所で普通に見られた身近な植物だが、今では激減...
地楡を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/17
- 10:13

ワレモコウ(2013年9月18日/大阪府中河内)『神農本草経』に中品として記載される地楡は、バラ科ワレモコウの地下部で、清熱止血の効があり、『聖済総録』の地楡湯や『太平聖恵方』の地楡散などに用いられている。日本漢方では使われることはあまりないようだ。七草に数えられている訳ではないが、秋の季節を感じさせる代表的な植物で、変わった格好の深紅の花を咲かせる。かつては山野で普通に見られたが、最近は見かけることの稀...
延命草を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/16
- 14:54

ヒキオコシ(2013年9月18日/大阪府奥河内)苦味健胃の民間薬として知られる延命草は、シソ科ヒキオコシの全草を乾燥させたもので、かつては山野の日当たりの良い場所で普通に見られたというが、昨今数を減らしており、生薬探偵は生駒金剛山系の山頂部付近でしか目にしていないような気がする。すこぶる苦いというが、撮影時にしがんでみるのを失念していたので、次回、どこかで邂逅した暁には、どれほどのものか、味見してやろうと...
青蒿を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/15
- 14:28

クソニンジン(2014年9月15日/大阪市旭区)『神農本草経』に下品として収載される青蒿は、キク科クソニンジンの帯果あるいは帯花枝葉で、清熱涼血の効があり、使用処方には『温病条弁』の青蒿鼈甲湯などがある。1972年、クソニンジンの葉から抗マラリヤ薬となるアルテミシニンが分離されたが、発見者である屠呦呦女史(1930~)は、2015年に中国人としては初めてのノーベル生理学・医学賞を授与されている。我が粟島行春師は、今か...
白花蛇舌草を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/14
- 18:52

フタバムグラ(2013年9月14日/奈良市)日本の漢方家にはあまり馴染みがないが、アカネ科フタバムグラは、“白花蛇舌草”の名で全草を乾燥させて用い、山豆根等と並ぶ抗癌生薬の花形と言ってよい。清熱解毒の効があり、もともとは種々の炎症疾患に用いられていたが、近年、その抗腫瘍作用に注目が集まっているようだ。ごく小さな植物につき、そこそこの量を確保するのは中々骨の折れる作業で、価格もそれなりに高価である。水位の低下...
旋覆花を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/13
- 20:57
オグルマ(2013年9月13日/滋賀県米原市)『神農本草経』に下品として収載される旋覆花は、キク科オグルマの頭花を乾燥させたもので、仲景方では『傷寒論』の旋覆花代赭石湯および『金匱要略』の旋覆花湯に用いられている。オグルマは絶滅危惧種で数が少なく、生薬探偵は頼まれてツリガネニンジンを米原で探していた際、休耕田で偶然発見した以外には、中書島近くの淀川の土手と奈良の畔でしか目にしたことがなく、大阪では未だに見...
藿香を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/13
- 18:06

カワミドリ(2014年9月13日/大阪府奥河内)祛暑薬として藿香生気散や香砂平胃散などに配合される藿香には、広藿香と呼ばれるシソ科パチョリに由来するものと、土藿香や川藿香と呼ばれるシソ科カワミドリに由来するものとの二種があり、一般には広藿香が広く流通している。パチョリはインド原産で我が国に自生を見ないが、カワミドリは無いこともない。ただ、現在は非常に数が少なく、昔は箕面の山中で時折目にすることが出来たそう...
香附子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/12
- 18:27

ハマスゲ(2013年9月12日/ご近所)『名医別録』の中品に“沙草”の名で収載される香附子は、カヤツリグサ科ハマスゲの肥大した根茎で、主に理気通経の薬として用いられる。使用処方としては、『和剤局方』の香蘇散や『万病回春』の香砂六君子湯、『勿誤薬室方函』の女神散などが有名。また、アーユルヴェーダにおいても重要な薬物として扱われているそうだ。ハマスゲは、雑草として身近に広く見られ、地上部のある時期なら街中を散歩...