呉茱萸を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/27
- 12:39

ゴシュユ(2013年10月27日/堺市緑化センター)『神農本草経』に中品として記載される呉茱萸は、ミカン科ゴシュユの未熟果実を乾燥させたもので、呉(現在の江蘇省辺り)に良品を産することから呉字を冠するという。中を温め、寒を散じる効があって、仲景方では、呉茱萸湯・当帰四逆加呉茱萸生姜湯・温経湯・九痛丸の四方に用いられている。本来日本には自生せず、植栽やその放棄個体があるのみ。最近、福井県高浜町の山中にゴシュ...
菟絲子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/22
- 18:55

ネナシカズラ(2013年10月22日/中河内)『神農本草経』に上品として記載される菟絲子は、ヒルガオ科のマメダオシやネナシカズラの成熟種子で、強精強壮の効があり、日本では殆ど用いられることがないが、『和剤局方』の茯菟丸や『銀海精微』の駐景丸、『奇効良方』の固脬丸といった使用処方がある。大豆畑に発生するマメダオシについて、桑島目録は高槻と金剛山での記録を載せるが、生薬探偵未見。ネナシカズラは数こそ少ないが時...
王不留行を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/19
- 18:53

フシグロ(2013年9月18日/南河内)『神農本草経』に上品として記載される王不留行は、現在日本では余り使用されていないようであるが、中国では活血化瘀薬として用いられ、仲景方では『金匱要略』に王不留行散という金瘡の治法が見えている。基原には相当混乱があって、現在中国ではナデシコ科のドウカンソウの種子を用いることが多いらしいが、クワ科のオオイタビやオトギリソウ科のトモエソウ、他にも様々な科の異なった植物が充...
竜胆を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/18
- 18:07

リンドウ(2013年10月17日/南河内)『神農本草経』に上品として記載される竜胆は、リンドウ科リンドウの根(基原にはリンドウ属の数種が充てられている)で、肝胆の火を瀉し、下焦の湿熱を除く薬として用いられている。漢薬名の由来として、『開宝本草』は、葉が竜葵(イヌホオズキ)に似て、胆のような苦味があるからだと言う。有名な使用処方としては、竜胆瀉肝湯や疎経活血湯、立効散など。リンドウは花屋でも普通に売られてい...
当薬を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/17
- 18:02

センブリ(2013年10月17日/南河内)秋に可憐な白い花を咲かせるリンドウ科センブリは、我が国における民間的健胃薬の代表的なものであろう。千回振り出しても(振出薬=布袋などに入れて熱湯の中で振り動かして成分を溶かし出す煎出法)まだ苦味が出ることから、この和名がある。複方では、大峰山系の陀羅尼助や御岳系陀羅尼助である百草丸などに用いられている(陀羅尼助は場所によって構成薬物に若干の異同がある)。昭和後期に栽...
各務文献二百回忌法要
- 2018/10/14
- 23:14

浄春寺にて今日10月14日は、大阪の医家・各務文献(1755~1819)の二百回忌に当たり、墓所のある口縄坂浄春寺にて法要が営まれたので参列して来た。各務文献は、今日では整骨の先駆として、いずれかと言えば柔道整復師の間で知られているそうであるが、もともとは産科から出発し、のち解剖を重ねて骨関節の運動機能を明らかにするなど、我が国の整形外科医の鼻祖でもあり、かの華岡青洲と同時期に麻酔にも取り組んでいて、今日人口...
蔓荊子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/13
- 17:16

ハマゴウ(2013年10月12日/大阪府泉州)『神農本草経』に上品として記載される蔓荊子は、シソ科ハマゴウの成熟果実を乾燥させたもの。辛凉解表の薬物で、主に風熱の病などに用い、使用処方には『証治準縄』の菊花散や『蘭室秘蔵』の蔓荊子湯などがある。ハマゴウは海岸の砂地に生える海浜植物で、大阪では南部の海岸で何か所か自生しているが、全国的には自然海岸の消滅に伴って自生地が減少傾向にある。開花期のハマゴウは変わっ...
槐実を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/12
- 18:54

エンジュ(2013年10月11日/大阪市中央区)マメ科エンジュは、『神農本草経』に槐実として記載されるが、樹皮や根、葉なども用いられ、花蕾を“槐花”の名で用いることが多いようだ。主に止血に用いられるが、痔疾の処方中に使用されることも多い。使用処方としては、『普済本事方』の槐花散や『和剤局方』の槐角丸、『瘍医大全』の槐枝膏など。エンジュはもともと日本には自生していない植物であるが、古くから植栽されていて、大阪...
地膚子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/11
- 18:34

ホウキギ(2013年10月10日/大阪府能勢町)『神農本草経』に上品として記載される地膚子は、アカザ科ホウキギの果実で、清熱利水の効があり、使用処方として『済生方』の地膚子湯などがある。和名のホウキギは、草箒の材料に使われたことに由来する。中国から持ち込まれたもので、我が国に野生種はないが、庭などに植えられているのをよく見かけ、この時期、大阪のおばちゃんの頭のようなものがあれば、それがホウキギと思って間違...
香薷を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/10
- 18:02

ナギナタコウジュ(2018年10月7日/大和葛城山)夏の衛陽の要薬とされる香薷は、『名医別録』に中品として記載され、シソ科ナギナタコウジュの全草を乾燥させたものが正條品らしいが、いくつかの基原の異なるものが流通しているようだ。使用処方としては、『和剤局方』の香薷散など。この手の紫花の植物は何種かあってよく見かけるように思うが、ナギナタコウジュはやや希少。大阪では標高の高いところでしか見られないように思う。...
ブログ開設五周年
- 2018/10/09
- 22:28
今日で蒼流庵随想を開設してから丸五年の歳月が流れたことになる。何事も十年一区切りというから折り返し地点にようやく到達したといったところであろうか。振り返って快不快悲喜交々の交錯した五年間であったが、やはり少なからぬ実りがあったというべきであろう。四月以降の生薬連載は頗る不評らしく、アクセス数は激減しているが、これは易学関連の読者が多数派であったことの裏返しであるように思われる。どうも漢方界は元気が...
金匱植物同好会参加者のご感想
- 2018/10/08
- 23:57

昨日は、大変お世話になりありがとうございました。山頂を目指す登山は、私には体力的にハードでしたが、山頂で薬草を捜し、先生の解説を聴くのはものすごくワクワクして楽しい時間でした。初めて目にする薬草もありましたが、子供のころから雑草と思って目にしていた多くの草花の生薬名を教えていただき、驚きました。実際に、花、葉、根を見て臭い、味わい触ることで、文字でしかなかった生薬がリアルなものになった感じがしまし...
生薬探偵と歩く大和葛城山~金匱植物同好会発足記念観察会~
- 2018/10/07
- 20:23

今日は、金匱植物同好会の発足記念例会ということで、奈良と大阪の境に位置する大和葛城山を歩いてきました。台風が迫っていたので大事を取ってキャンセルされた方など居られ、総勢8名と少人数での散策となりましたが、、山道を大勢で歩くと、かなり速度が遅くなるので丁度良い人数だったかもしれません(京都の八幡や和歌山の田辺から来られた方も)。10時半に近鉄御所駅に集合し、バスで登山口まで移動、そこからはくじらの滝コ...
茵蔯蒿を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/06
- 15:45

カワラヨモギ(2012年10月6日/京都府八幡市)『神農本草経』に上品として記載される茵蔯蒿は、キク科カワラヨモギで、幼苗を乾燥させたものを綿茵蔯といい、これが正品とされるが、我が国では専ら花穂が用いられる。黄疸の要薬で、仲景方では、茵蔯蒿湯と茵蔯五苓散に用いられている。和名の通り、河原でよく見られるが、砂地を好むので、海岸にも分布があるようだ。大阪でも時々目にするが、夏~秋の台風による増水で泥だらけにな...
牛膝を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/05
- 23:37

ヒナタノイノコヅチ(2018年10月5日/ご近所)『神農本草経』に上品として記載される牛膝は、ヒユ科ヒナタノイノコヅチの根を乾燥させたもので、陶弘景は其の名の由来を茎に牛の膝に似た節があるからだと言っている。活血化瘀の効があり、婦人に用いられることが比較的多いようだが、馴染みのある含有処方では、『済生方』の牛車腎気丸や『産論』の折衝飲、『万病回春』の疎経活血湯、『和剤局方』の大防風湯などがある。左:ヒナタ...