『大阪府植物目録』桑島正二著
- 2019/01/29
- 18:44

『大阪府植物目録』桑島正二著大阪でのフィールド調査を思い立った頃、府が2000年に発行した『大阪府野生生物目録』という資料の存在を知り、期待を膨らませて入手したものの、中身は相当に古い資料を引き写してあって、堺市にオオサンショウウオが生息しているとか、いったい何時の時代の話やねんと愕然としたことを覚えている。それ以降、この本は一度も開いていないが、最近でも大いに活用しているのが、近畿植物同好会第二代会...
近畿植物同好会のこと
- 2019/01/25
- 18:45

昨年発足した我が金匱植物同好会は、私も会員である近畿植物同好会のパクリ、じゃなかった、パロディである。振り返れば、生薬探偵稼業も間もなく八年目に突入する訳だが、この会が無かったら、とうてい探偵として独り立ちする事は出来なかったに違いない。近畿植物同好会は、民間の植物観察会では老舗中の老舗で、恐らくこれ以上に古い団体となると、1909年発足の横浜植物会(ヘッドは牧野富太郎)と1911年発足の東京植物研究会く...
昭和は遠くなりにけり③
- 2019/01/22
- 18:36

『漢方と漢薬』昭和17年10月号より『漢方と漢薬』を斜め読みしていて、日本食薬研究所が刊行した『通俗漢方医学の話』なる書籍の広告が目に留まった。「通俗」とあって、ナトリームだのカリユームだのとある辺り、食養よりの書物なのではないかと思うが、「排毒素療法」の項目に、「バナナの中毒」「玉子の中毒」という奇妙な見出しがある。インドにバナナを大量に食わせて解毒を行う療法があると聞いたことがあるものの、普通に読...
昭和は遠くなりにけり②
- 2019/01/19
- 13:41

明治期に事実上廃絶されて、その後細々と命脈を保った我が国の漢方医学は、昭和に入ると一部の有志たちの奮闘によって俄かに活況を呈し、ついには保険適用を受けるまでの復興を遂げた。とは言え、明治以前のように主流医学に返り咲いた訳ではなく、熱心に取り組むものほど奇異の目で見られていることは、依然として、かつての地位が回復された訳ではないことを物語っている。昭和漢方は、謂わば病名漢方に堕して行く流れでもあって...
昭和は遠くなりにけり①
- 2019/01/16
- 18:56

昨今、薬用植物の観察と言えば、その殆どが薬科大などに併設されている植物園の見学に終始するのだが、戦前の漢方誌である『漢方と漢薬』などを覗き見ると、昔はフィールドでの薬用植物の観察会が結構行われていたことが判る。『漢方と漢薬』では、昭和11年12月号の「富士山麓山草薬草採集記」、昭和12年9月号~12月号の「蝦夷採薬記」、15年7月号の「拓大漢方講座同窓会薬草採集」、16年11月号の「植物採集紀行」、17年11月号の「...
自力採取の効用
- 2019/01/13
- 08:20

大阪府下の薬用植物分布調査において、地下部を用いるものの場合は、可能な限り、掘り取ることに努めたのは、勿論、薬用部位を観察するのが目的である(自生種保護の観点から基本的には一種類につき一度しか試みないこととした)。ところが実際にやってみると、この自力採取には想定外の意外な効用があって、これは臨床家なら普く経験するべきことであると思うようになった。それは、こういう体験を通じて、生薬の有難味を心の底か...
藤瘤は、果たして癌に効くか
- 2019/01/10
- 18:09

昭和33年夏の『易学研究』に「藤瘤は、果たして癌に効くか」と題した柳原田呂吉氏の占例が寄せられている。柳原氏の易占は、霊感占の要素があるように感じられ、我々に参考になるところは余り無いのだが、内容が面白いので、ここに全文を転載させて頂く。なお、中山氏が「漢方療法の経験」と題して、168名の患者にWTTCを投与した症例を発表した「癌化学療法に関するパネルディスカッション」が『日本医師会雑誌』に載ったのは、昭...
WTTCと藤瘤~生薬探偵の回想~
- 2019/01/07
- 18:56

生薬探偵を始めた動機はいくつかあって、まず、演壇で本草学の講義をしている連中があまりに植物に無知なゆえ、偉そうに解説している対象が目の前にワサワサ生えていても全く認識出来ないという体たらくに憤激を覚えたこと、また、粟島先生の会が閉会となってやることが無くなってしまったということもある。が、伏線として一番大きなものは藤瘤なのであった。藤瘤とは、文字通り藤に出来るコブで、幹の下部に出来ることが多いが、...
連載を振り返って~生薬探偵の回想~
- 2019/01/04
- 18:02

昨春より「生薬探偵の冒険」を連載して来て、取り上げた生薬は150種近くに上る。それ以外にも見出したものが何種かあるが、あまりマイナーなものに関しては取り上げなかった。拘ったのは、なるべく大阪府下で見つけるように努めた点である。こういうのは産地を問わなければ比較的簡単であるが、逆に言えば産地を限定すると途端に難易度が上昇するのは、生薬に限らず、他の動植物や鉱物、昆虫など孰れにも共通すること、諸分野の愛...
謹賀新年
- 2019/01/01
- 13:41

新年明けましておめでとう御座います。皆様におかれましてはいつも蒼流庵随想をご覧くださり心より御礼申し上げます。易学に関心をお持ちの読者様におかれましては、昨春以来の連載は、植物の写真が延々続く甚だ詰まらないものであったかと思いますが、今しばらく御付き合いとご辛抱をお願い致します。さて、皆様、年筮はもう執られましたでしょうか。冬至派の方々はもうとっくに立てられたでしょうが、新暦元日立卦派の蒼流庵主人...