粟島へ
- 2019/05/28
- 18:10

粟島行春先生の生誕地は洞爺湖の近くであったらしいが、先祖は徳島の阿波から出ており、父親の代で北海道に移住したそうである。昨年、愛媛へ所用にて数回行く機会があったので、足を延ばして二度ほど阿波を散策することが出来た。現在、地名としての“粟島”は、JR西麻植駅の西方に鴨島町粟島として残るだけであるが、もともとは吉野川の中州を粟島と呼んでいたらしく、かつては500余戸・3000人が居住していたが、吉野川の改修工事...
『日本農業革新論』粟島行春著
- 2019/05/25
- 12:46

『日本農業革新論』粟島行春著(春光苑/1961年刊)おそらく粟島行春先生にとって初めての単著と思われる『日本農業革新論』は、パーライトを原料とする微生物肥料“ホワイト・ヒューマス”を用いた共栄農法の啓蒙書で、パーライトは現在では土壌改良剤として普通に売られているけれど、昭和30年代にあっては最先端の代物であったようだ。或る種の宣伝本であるから、掲載されている共栄農法の成果は俄かには信じがたいほど華々しいが...
農用気象学の実際
- 2019/05/22
- 18:49

昭和25年に小林金吾翁の編で私家版として出た『農用気象学入門』は、杉山師の『農用気象学講義』を更にダイジェストにしたような内容の小冊子であるが、本書の第三版(昭和41年)を庵主は山形のさる篤農家より複写して分けて頂いた事がある。この中に農用気象学応用の実際を記した箇所があるので、一例として太陽寒水司天の年(辰・戌)の天候予測と農事応用について転載させて頂く。ただし、同書には六年周期の主気と客気との組み...
『農用気象学講義』杉山善助著
- 2019/05/19
- 09:47

『農用気象学講義』杉山善助著(農業教育会/1925年刊)杉山善助(1863~1944)には、『麦作改良栽培法』や『茎菜と根菜類二倍増収法』といった天理農法についての著述があるが、五運六気説に関するものは大正末に出た『農用気象学講義』に纏められている。わずか100頁ほどの小著であるが、五運六気説の基礎的な知識が簡潔に纏めてあって、或いは近代以降日本語で著わされた運気論の入門書で、最も優れた内容を持つのは本書ではない...
農用気象学の祖・杉山善助翁
- 2019/05/16
- 18:44

農用気象学の祖・杉山善助小林金吾翁の農用気象学には、杉山善助(1863~1944)という師が居て、小林翁は昭和2年の春より此の杉山師より農業指導を受け始めた。甚だ占いめいた独特なる農法の内容に接した当初は、非科学的な古臭いものという感想を持ったらしいが、その天候予測があまりに的中するので、三年目から本格的に勉強を始めたという。杉山師は茨城出身の篤農家で、五運六気による天候予測を元に播種や施肥の時期を見極め...
小林金吾翁と農用気象学
- 2019/05/13
- 18:28

小林金吾先生(『胸像建立記念 小林金吾先生』より)粟島行春先生は、25歳で土壌研究を発願して以降、全国を放浪し各地の土壌を調査する傍ら、多くの篤学者・篤農家を訪ねて教えを乞うという生活を続けられ、その遍歴は五年に及んだが、山形に滞在した時、小林金吾(1899~1966)という篤農家の自宅に一か月間泊まり込んで、農用気象学という変わった農法について指導を受けたという。この小林翁は、昭和14年に山形県議会議員に当...
『気の自然像』山田慶児著
- 2019/05/10
- 18:14

『気の自然像』山田慶児著(岩波書店/2002年刊)山田慶児(1932~)と言えば、医史学の分野でも大きな業績を挙げておられる科学史研究の大家であるが、その慧眼を五運六気説に向けた成果を収めたのが2002年に岩波書店から出た『気の自然像』。運気論を実際に使用する為の解説書ではなく、その成立事情を探った述作であるが、例によって著者の鋭い洞察、自在な展開と、毎度のことながらほとほと感心させられる。本書は、長らく唐代...
『運気学説六講』任応秋著
- 2019/05/07
- 18:12

『任応秋運気学説六講』任延革整理(中国中医薬出版社/2010年刊)粟島行春先生が、おそらく鄧鉄涛先生と同じくらい尊敬されていた任応秋先生(1914~1984)は、現代中医学の礎を築いた巨人で、その手がけた分野は、中医学理論の確立から古籍整理、流派研究にまで及ぶが、1959年に書かれた『五運六気』は、運気論を解説した最も判り易い最良の書物であるとして、粟島師の激賞したところのものである。五運六気説の基礎となる干支か...
新型肺炎SARSと運気論
- 2019/05/04
- 14:39

今日五運六気の説に取り組んでいる人はそれほど多くなく、臨床に応用しようという試みも少ないが、2002年11月から翌年7月にかけて、中国南部を中心に新型肺炎SARSが流行した際、鄧鉄涛先生は、運気論による予測を行って其の終息時期をほぼ正確に的中させ、其の有効性を証明してみせた。鄧先生は、2003年が運気論にいう火運不及の年であり、司天は太陰湿土、在泉は太陽寒水であるから、湿寒の気候に適合して流行を見るが、六月に至...
鄧鉄涛先生
- 2019/05/01
- 21:19

ついに30年に及ぶ平成という時代に幕が下ろされ、令和という新時代がスタートした。世間の馬鹿馬鹿しいお祭り騒ぎは想定内とはいえ、いつもながらうんざりさせられるし、ご即位をお祝いしたところで、令和が暗い時代になることは態々筮を執るまでもなく明らかであって、めでたいという気持ちなど庵主にはさらさら無いのだが、祝賀ムードにこれ以上水を差すような言辞を弄するのは控えることとしよう。さて、我が粟島行春師は令和を...