令和元年を振り返って
- 2019/12/31
- 13:30

大晦日は一年365日のうちで最も庵主が好きな日だ。その年を振り返る最も内省的な日だからであろうか。それに引き替え、元旦にはさしたる感動を覚えない。殊にここ数年は年筮の具合が芳しくない事も手伝って、憂鬱な一年が幕を開けるというニュアンスの方が強かったように思う。今年の初めは、昨年末に発覚した某誌での盗作騒動の只中にあり、悲惨なまでに腹立たしい年明けであったから、心穏やかな三が日ではなかった。否、これほ...
参鶏湯を求めて~生薬探偵の年末~
- 2019/12/30
- 01:20

今日は、大阪市内にて新羅王の参鶏湯で忘年会。鍋に対して鷄が大きすぎるが、ぎりぎりセーフ。塩&胡椒で味を調えて食べるのだが、新羅王の末裔によると、かなり濃厚に仕上がっているとのこと。疲弊しきった年末のカラダに精気が漲る。庵主持参の亀泉CEL-24は、広末涼子ちゃんの故郷である高知県の名酒。李時珍の『本草綱目』における人部の記述は正しいのか、ギュっと抱きしめる基準はどういったところにあるのか、アカデミックな...
医人たちの忘年会
- 2019/12/26
- 22:40

今日は、医史学仲間の整形外科医・今井秀先生と、西天満の「和食 いいくら」さんで忘年会。南森町は最近良いお店が多いと評判だが、今井先生の今年の新規開拓ではピカイチのお店らしい。少し早めに到着する筈が、南森町駅は地上に出ると東西南北の感覚が狂う事で有名で、久しぶりに来ると迷子になる。生酒を中心に、美酒が揃う。今宵のイチバンは、鳳凰美田の純米大吟醸か。意外に味噌たっぷりのセコガニも、今井先生絶賛のうなぎ...
山梔子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2019/12/19
- 18:09

クチナシの花(2019年6月22日/大阪府泉州)『神農本草経』に“巵子”の名で中品として記載される山梔子は、アカネ科クチナシの果実を乾燥させたもので、仲景方では梔子豉湯をはじめ、十方に用いられている。他に、黄連解毒湯、竜胆瀉肝湯、温清飲、五淋散といった頻用処方にも用いられている比較的メジャーな生薬だ。植栽としては普通に目にする事が出来るものの、あくまでも大阪府下での野生に拘る生薬探偵としては、南部に僅かに残...
ゴキパ~生薬探偵の参戦~
- 2019/12/16
- 18:52

昨晩、さる鍼灸の勉強会の忘年会にお招き頂き、金曜に採集した䗪虫を中心に色々美味なる珍味を堪能して来た。カウントしたところ、73匹居たそうで、個体数としては昨年とさして変わらぬとは言え、前回は目につくものは小型の子ゴキブリまで一網打尽にしたのだが、今回は中型以上しか採取していないから、実質的には3~4倍の収穫があったことになる。しかも、サツマゴキブリはデリケートな為、翌日にはケースの底で数匹死んでいる...
海風藤を見つけた~生薬探偵の偶然~
- 2019/12/14
- 10:29

フウトウカズラ(2019年12月13日/和歌山県南紀)普段なら「海風藤を求めて~生薬探偵の冒険~」と題する所だが、今回は䗪虫探しの最中に偶然見つけたので、表題を少し変えることにした。海風藤は、その名の通り風病に用いる生薬で、コショウ科フウトウカズラの茎を当てる。中国では広東・福建・浙江辺りが産地で、我が国では関東以西の暖地の海岸に普通に見られるといい、大阪南部でも自生があると聞いて、数回探しに出かけたが、...
久しぶりのサツマゴキブリ~生薬探偵の年末~
- 2019/12/13
- 23:55

今日は東洋医学仲間の鍼灸家某氏と共に、和歌山まで䗪虫探しの遠征。2014年以来4回目のゴキブリ探しとなる。これまで大発生の年に当たったことはなく、噂に聞いて期待を膨らませつつ臨んでは不完全燃焼に終わるのを常としていたが、それでも毎度回を重ねる毎に収穫高(?)は増え続け、まだ正確には数えていないものの、恐らくは過去最高記録を今回も更新。毎回新しいポイントを開拓しているのに加え、今回は地元民からも生息場所...
『楊枝から世界が見える』稲葉修著
- 2019/12/08
- 15:05

『楊枝から世界が見える』稲葉修著(冬青社/1998年刊)私は歴史小説というものを殆ど読まない。著者の主観によって勝手なこと(それも創作と脚色がふんだんに織り交ぜられて)が色々書かれている歴史小説というものが好きではないし、そういうものを読んで歴史を分かったつもりになっている人にも嫌悪感を覚える(もしドラを読んでドラッカーを分かった気になっている人にも当然嫌悪感を覚える)。また、いわゆる歴史書というもの...
『宋以前傷寒論考』岡田研吉他著
- 2019/12/05
- 18:27

『宋以前傷寒論考』岡田研吉他著(東洋学術出版社/2007年刊)『傷寒論を講義してみた』をご紹介したついでに、もう一冊私の好きな傷寒論本『宋以前傷寒論考』を取り上げさせて頂く事にした。本書は、『太平聖恵方』を始めとする種々の古典医書に引かれた仲景方に関する記述を突き合わせ、原『傷寒論』の姿を復元せんと試みた意欲作で、厳密極まりない考証学の手法を用いた復元作業という点で、まさに江戸考証学派の直系の嫡子とで...
『傷寒論を講義してみた』桜井謙介著
- 2019/12/02
- 18:50

『傷寒論を講義してみた』桜井謙介著(清風堂書店/2015年刊)2年ほど、生薬を中心に漢方絡みの記事ばかり書いていて頗る不評を買っている蒼流庵随想なのであるけれど、殆どは何年も前のネタを開陳したものに過ぎず、自身の関心について言えば、とっくに興味の失せた分野だったりする。従って、読書といってもここ数年は漢方関連で取り上げたいと思わせられるような名著には殆ど出遭った記憶がないのだが、それでも振り返って、『傷...