近世臨済禅の成立について
- 2020/05/29
- 20:11

季刊『禅文化』253号(禅文化研究所/2019年7月刊)先日、真勢中州先生の墓所がある松雲峰寒山寺の住職・瀧瀬尚純師より、ご高論が掲載された季刊『禅文化』を恵与された。瀧瀬師は、花園大学国際禅学研究所で研究員を務めて居られる学僧でもあり、殊に白隠禅師を詳しく研究されている。2017年の真勢中州先生没後二百年追善法要で御導師を務めて頂いて以来の間柄であるが、同年7月に中尾良信先生との共著で『日本人のこころの言葉 ...
牛黄清心丸
- 2020/05/25
- 18:32

気の小さい庵主は、人前で話さなくてはならない場合に、北京同仁堂の牛黄清心丸を一丸服する事にしている。もっとも、あまり効いているような気もしないので、掌に「の」字を書いて飲み込むのと大差ないようにも思うが、他に出来る事も余りないから、やれるだけのことはやって本番に臨むようにしているというだけの話。北京同仁堂の牛黄清心丸は、私が初めて口にした中成薬で、蝋の入れ物に入っていて、これを割って(私はたいてい...
講演ぎらい
- 2020/05/22
- 18:46
時折、研究内容を人前で開陳せよという依頼があって、寡黙だけが取り柄の庵主は閉口して基本的に全て謝絶しているのだが、それでも虚を突かれて引き受けざるを得ない事態に立ち至る事がある。昨年もそのように逃げられない状況に追い込まれて、二件お引き受けする事になってしまったが、幸い今年はコロナの影響もあるのか、かかる依頼(引き受ける時は依頼ではなく指令になるのだが)は全く来ておらず、安堵している。私は基本的に...
かわいいスッポンさん
- 2020/05/19
- 18:01
スッポンというと何やら獰猛なイメージがあって、常人は恐怖を感じるらしいが、この獰猛さは、単なる狂暴とは異なり、高い攻撃性は脆弱さの裏返しであると言って良い(これは、人間世界でも或いはそうであるのやもしれぬ)。スッポンは普通の亀と違って、堅い甲羅の中に手足と首を引っ込めれば身を守る事が出来るという訳には行かない。柔らかい組織で覆われていて、加えて、エンペラという一寸どんな利点があるのやも理解出来ない...
かめくらべ
- 2020/05/16
- 11:10

昨年、9月頭に生薬探偵の亀記録を更新する2.8kgの大物、通称“ガメラ”を釣り上げて喜んでいたら、亀トモの足立先生がそれと同格と思われる巨大スッポン、通称“アニキ”を釣り上げた。過去三年の経験では、どうも巨大亀は早い時期には掛からず、夏の盛りを過ぎた頃に姿を現すような気がしていて、いずれも水深のごく浅い場所で捕獲されている点が興味深い。恐らくどちらも膝くらいの水深しかないのではないかと思う。並べて比較した...
初亀
- 2020/05/13
- 18:55

先日行きつけの酒屋で勧められて、静岡は初亀醸造の純米酒を買ってみたのだが、どうも個人的にイマイチだったので、ジビエのほうの初亀に期待。たいてい泥抜き開始後数日は毎朝大量のものを吐き出しているのが普通なのだが、今回のスッポンさんは、殆ど水が汚れず、これはもう一週間くらいで食えるなと踏んでいたところ、8日目の朝に水が濁って驚かされた。油断していたら、くっさ~い亀汁をすすることになっていただろう。あぶな...
やっぱり似たもの同士
- 2020/05/10
- 18:44

『深沢七郎の滅亡対談』(ちくま文庫/1993年刊)山下清と言えば、深沢七郎(1914~1987)の対談集『滅亡対談』に収められた「やっぱり似たもの同士」も面白い。深沢七郎と言えば、言わずと知れた『楢山節考』の作者であるが、あらかじめ其の話を吹き込まれていた山下画伯は、姥捨て山の話が気になって仕方がない様子で、恐らくもう姥捨て山の話題はうんざりしているであろう深沢は話題を変えようとするも、同席した弟の山下辰造(1...
『日本ぶらりぶらり』山下清著
- 2020/05/07
- 22:51

『日本ぶらりぶらり』山下清著(ちくま文庫/1998年刊)小人閑居して不善を為す等というが、そのせいか、緊急事態宣言発令以降、頭のおかしなコメントが連続で来ていて些かウンザリさせられている。人様にご迷惑を掛けるのも嫌だからGWは大人しく読書でもして過ごそうという殊勝な心掛けの人は小市民ではあっても小人にはあらず、自宅待機を強いられて、憂さ晴らしのツールがネット以外に見つからないというようなのは典型的な不善...
回想の古書店
- 2020/05/04
- 14:10

最近でこそ余り買わなくなったとは言え、蔵書を眺め見て我ながら呆れる程に古本を買い漁って来たものだと思う。もっとも、蒼流庵の架蔵スペース等たかが知れているから、一万冊にも満たない貧弱なものに過ぎず、蔵書家と呼べる規模には程遠い事自明であるが、それでも古書を愛する気持ちは人後に落ちないと思っている。とは言え、それは“正常な”愛書家のそれであって、購入した本は酸化を防ぐ為に絶対包装から解き放たずにそのまま...
有難きかな図書館
- 2020/05/01
- 18:24

一昔前とは打って変わって資料へのアクセスのし易さが格段に良くなった現代、研究者の居住地によるハンディは非常に小さなものになったと言える。かつては地方在住の場合、どうにも手が出せない資料だったものが、現在ではデジタル公開されて、ネットにさえ接続していれば、簡単に全文を調べる事が出来る、というような事例は枚挙に暇が無い。特殊な媒体に発表された論文でも、国会図書館の遠隔複写サービスを利用すれば、一週間程...