日高普先生のこと
- 2020/08/27
- 19:27

私が追っかけ的に愛読していた六人の論客は何れも保守派に属する書き手であったが、かつて反動と呼ばれたこの型の知識人も左翼の退潮著しい今となっては、この二字を以て表現される事は全く無くなったようだ。しかし、論壇に於ける分母が拡大したと思しき昨今、追っかけの対象に加えたいと思わせるような優れた知性の持ち主を保守に於いて見出す事が残念ながら出来ずに居る。他の殆ど全ての分野に於けると同じく、日本の指導的階層...
『室町記』山崎正和著
- 2020/08/23
- 13:25

一頃、上梓された本は旧著の復刊を覗いて其の殆どを手にするという半ば追っかけをしていたと言って良いような書き手が複数居て、それは則ち小室直樹、谷沢永一、丸谷才一、渡部昇一、長谷川慶太郎、山崎正和の六名の論客であるが、2010年の小室直樹以降次々と鬼籍に入ってしまい、先日の山崎正和氏の逝去をもって我が追っかけもついに終焉を迎える事となった。追っかけといっても惰性によるところ無きにしも非ず、小室氏の論述...
独学の難しさ
- 2020/08/22
- 15:00
私のように孤軍奮闘型の独学者の場合、体系的な知識を授けてもらう機会などあろう筈は無いから、得てして思わぬ間違いを犯す事も多い。これは独学者の宿命なので、程度の差はあれ如何ともし難い所ではあるが、振り返って恥ずかしい間違いも随分多かった事が思い返される。例えば、2010年台半ばの数年、大阪府下に産する生薬を求めて山野を駆け巡った時期があるが、荊芥としてアリタソウをカウントしていて、その誤りに気付くのに二...
伝達の難しさ
- 2020/08/19
- 18:19

植物の観察会を主催していると、屡々他人に情報を伝達する事の難しさを痛感させられる。座学なら板書の内容はそのまま聴講者が書き取ってくれるから、比較的に伝達の誤りは起こりにくいが、フィールドではそうは行かない。こちらの解説を小さな手帳大のものに素早く書き留めるのがせいぜいで、音響設備などあろうはずもないから、教室での講義より遥かに聞き取りづらいという難点もある。また、予定された講義の場合、相手により判...
さかふね
- 2020/08/16
- 11:30

さかふね(大阪市浪速区元町3-12-9)このところ大阪出張の折に時々お声がけ下さる松浦薬業の加藤久幸先生が7月頭に来阪の際、大国町で待ち合わせて佳酒真楽さかふねさんへ連れて行って頂いた。さかふねさんも暫らく無沙汰を重ねてしまって、既に3年以上になるだろうか。店舗向にある鷗町公園は折口信夫(1887~1953)生誕地で、いま生誕地碑と文学碑が立っているが、ほど近い願泉寺には分墓(本墓は石川県羽咋)もあり、10年前に掃...
猪飼祥夫先生工作展
- 2020/08/13
- 09:44

下京区杉屋町で鍼灸院を営む猪飼祥夫先生の工作展にお邪魔して楽しい版画作品の数々を鑑賞させて頂いたのは7月初頭だったから、既にひと月以上前の事であるが、感動冷めやらぬ内に記事にさせてもらおうと思いつつ、論語ネタ連載の只中に唐突に版画鑑賞記を差し挟むのも何だか憚られて、こんなに遅い紹介となってしまった。これ以上遅くなると日記よりむしろ回想録の類に入ってしまいそうで備忘録的に書き記しておく事にする。先生...
『論語』の人気
- 2020/08/10
- 22:24

少し前に『論語』や孔子周辺についての取り留めのない雑感を披歴したが、いいねを押してくださった方が随分多くて、驚かされた。儒教典籍について豊かなる知見を蔵しているとは言い難い庵主の駄文が、斬新な『論語』論になっていよう筈もないから、これは結局のところ『論語』が集める『易』などとは比較にならない程の人気を反映した現象に違いない。しかし、改めて調べてみると、私の探し方が悪いだけの話かもしれないけれど、『...
モンタナ・ジョーンズ
- 2020/08/07
- 19:23

『聊斎志異』から脱線が始まり、だんだん我が蒼流庵随想が映画ブログと化して来た為、この辺りで軌道修正を図るつもりでいるが、最後に映画ネタの番外編として、庵主の大好きなアニメ『モンタナ・ジョーンズ』を取り上げる事とする。1994年4月より一年間、NHK総合にて放送された全52話のアニメシリーズであるが、何故これを映画ネタとして取り上げるかと言えば、各話タイトルが、すべて名画のパロディになっているからで、それも子...
眠れぬ夜のために~邦画編~
- 2020/08/04
- 18:50

邦画はそもそもあまり面白いと思うものがなく、それは多くの人が感じているようにハリウッドとは製作費の桁が違い過ぎる事を反映しての水準の低さが主要な原因であると観て大過なかろう。従って鑑賞数はごく僅かに過ぎず、よく知られた名画とされる作品でも未視聴のものが随分多いが、観る気がしないものを我慢して観るくらいなら何か他の事に時間を使いたいので、その数少ない視聴邦画から、印象に残ったものを若干挙げさせてもら...
眠れぬ夜のために~洋画編~
- 2020/08/01
- 19:16

2010年代の初頭から半ばにかけてのこと、必要に迫られて一日中活字と格闘する日々を過ごさざるを得なかった時期があり、夕食を済ませた頃には疲労困憊、本を開く気力も失せているという状況が長く続いた。かといって生来の不眠症、布団に潜り込んでも無駄な時間を過ごすばかりと、就寝前の2時間をDVDの鑑賞に費やして名画を楽しむという作戦に出る事にした。その頃、まだTSUTAYAは旧作100円になっていなかったが、岸和田の荒木町で...