蒼流庵易学講座
- 2021/01/28
- 18:11

「學」は、大人が蓍を操作するのを台の下から子どもが見て覚える形の字だという説が少なくとも江戸時代には唱えられていた事を奈良場勝先生に教えて頂いたが、そうすれば学問の原義は易を学ぶ事つまり易学にあって、それこそが学問の王道だと言ってしまっても差し支えない事になる訳だ。請われて今月12日から蒼流庵易学講座を開講しているのだが、易を人に教えるというのは自分にとって初めての試みである為、緊張感を持って毎度講...
吉凶字源説アレコレ
- 2021/01/25
- 18:36
吉凶の字源における宮崎市定説を取り上げたついでに、他の漢字学者の見立てもご紹介しておこうと思う。まずは、『字統』における白川静説から。白川説では、吉を士と口とに分け、士は鉞の刃部の形で、口は祝禱を収める器の形であり、祝詞を収めた器の上に聖器として鉞頭をおき、祝詞の呪能を封じこめて、これを守ることを意味し、「詰める」ことを原義とした文字と解するらしい。凶字は、凵は胸郭であり、その中央に文身として×形...
吉凶の字源について
- 2021/01/22
- 18:05
井伏鱒二の随筆「大岳さん」の後半で、「学」という漢字の字源が「爻」に関係しているという話が出ていて、これは宮崎市定の字源説である(宮崎市定については触れられていないけれども)。宮崎説では、吉凶という漢字は蓍の本数を数えた時の奇遇に由来するとし、任意に掴み取った蓍策の数をカウントして行くときに、二本ずつ×××…という風に並べて行き、それが「爻」字の元になっているとする。易は中庸を貴ぶとはいえ、やはり陽尊...
偉大なるかな高島易
- 2021/01/19
- 18:21
史上もっとも偉大なる易者は誰かと問われれば、私なら迷う事なく呑象高島嘉右衛門の名を挙げる。異論は認めない。呑象の他にこれほど多くのフォロアーもとい偽物を輩出した易者は空前絶後だからである。なるほど、昭和の易聖と謳われた加藤大岳は偉大であろう。『浪華人傑談』が「時人、或ひは精義入神にして、二千年来の一人と称す」と絶賛する真勢中州も偉大な易者に違いない。また、“日本易学中興の祖”新井白蛾は間違いなく偉大...
姓易と号易
- 2021/01/16
- 15:12
井伏氏の随筆を読んでいて、加藤大岳氏の易を「加藤易」と書いているのがどうにも引っ掛かった。加藤の易だから加藤易というので別段間違いという訳ではないにしても、普通我々は「大岳易」とか「岳易」と呼んで「加藤易」と呼ぶ人は他に聞いた事がないからである。(※2021年8月24日追記:『易学大講座』巻一において自ら“加藤易”を称する箇所あるを再読時に発見)しかし、よく考えてみると、高島嘉右衛門の易は「高島易」とか「高...
大岳さん
- 2021/01/13
- 18:36

我々易学徒にとって井伏鱒二と言えば先ずは『吉凶うらなひ』の作者として記憶されている訳だが、随筆には先日紹介した「易たてのこと」のような小品あり、また「大岳さん」という加藤大岳氏に易を立ててもらった時のエピソードも全集の中に収められていて手軽に読む事が出来る。しかし、井伏氏は易について御世辞にも造詣が深いという訳ではないから、しょっぱなからして、加藤大岳さんのところへ易を立ててもらひに行つた。大岳さ...
易たてのこと
- 2021/01/10
- 13:25

『ある学生易者の手記』を読んで思い出したのは井伏鱒二の「易たてのこと」である。わずか三頁のどうという事もない小品で、易に興味のない人にとっては無用のエッセイに過ぎないけれど、この中に出て来るアルバイトの易たてというのは、佐藤正忠氏のことではないかと、再読して気付いた。いや初読時に其の事に思い至らなかったのが不思議なくらいだ。ここに出て来る学生の易たては井伏氏に易のことを聞きに来て、井伏氏が「易のこ...
『ある学生易者の手記』佐藤正忠著
- 2021/01/07
- 18:37

『何処へ~ある学生易者の手記~』佐藤正忠(経済界/1987年刊)三が日に再読した旧読本をもう一冊紹介しておく事にしたい。実のところ大好きな本なのだが、これまでご紹介して来た易学関連図書とは少し毛色が違っている為、中々お伝えする機会を得られずに今日まで来てしまった本である。その本とは、雑誌『経済界』の主幹として健筆を揮われた佐藤正忠氏(1928~2013)が学生時代に日切り易者として全国を放浪した時代の回想録『...
「紀藤易特集」を読む
- 2021/01/04
- 19:14

『実占研究』第30巻12月号(1981年)昨年はコロナのお蔭で世間を外出自粛ムードが蔽った為、いつになく読書量を増やす事に成功した一年であった気がする。今年はどうなるのか、ワクチンの成果次第といったところだが、自分は自分のやるべき事をやり、読むべき本を読むだけだ。ところで、三が日ほどに読書が捗る期間というのは一年のうちでもそう他にあるものではないが、私の場合、此の期間は新たな本を読むよりも孰れかと言えば過...
謹賀新年
- 2021/01/01
- 11:03

蒼流庵随想を御覧の皆様、新年明けましておめでとう御座います。生薬ネタ等続いて易学方面の読者様に退屈を強いる期間が長く続きましたが、昨年は易学関連の記事を増やすように努めました。拙い内容だったかもしれませんが、少しは楽しんで頂けるところがあったら幸いです。昨年はもうウンザリする位にコロナ一色の世相でしたが、幸い周囲には今のところ感染者は出ていないようで安堵しています。昨年のコロナ占に関しては大きな誤...