黄天まさに立つべし
- 2022/10/25
- 18:19
先週の講演では陰陽五行思想の来歴と変遷をテーマとして取り上げたので、当然のことながら鄒衍による五徳終始説、つまり五行相勝の順に王朝が交代して行くとする、よく知られた循環の思想についてもお話し、前漢末に登場する相生説を用いた王朝交代の理論が鄒衍以来の相勝式に取って代わることを説明したが、終了後にオンラインで聴講された方より、黄巾の乱の指導者であった張角が掲げた“蒼天すでに死し、黄天まさに立つべし”とい...
とある陰陽五行本
- 2022/10/21
- 18:58
陰陽五行についてお話する際、渉猟すべき資料は実に多くて準備が厄介である。歴史が長く複雑な変遷の過程を経ているものを扱う際には何れも共通して言えることではあるが、陰陽五行のような古い時代に起源を持つ思想等その最たるものと言うことが出来よう。当然今回も多くの文献に目を通さざるを得なかった訳だが、学術誌に掲載された関連分野の論文だけでも50を優に超え、必要に迫られて手を伸ばした外縁領域の関連書籍は恐らく其...
いんようごぎょう
- 2022/10/17
- 12:34

疫病のお蔭で此の三年講演依頼を謝絶する格好の口実が出来てコロナ様様のところ、感染者減少の隙をつかれてねじ込まれた結果、久しぶりに人前に出ることとなり、昨日一応の御役目をはたして帰宅。私は『周易』を専門としている訳だから、そのお話をするのが当然なのだけれど、オーディエンスの顔ぶれは『周易』の門外漢諸氏が多数を占めることが予想された為、あれこれ思案した末に、陰陽五行思想の歴史的変遷をテーマに取り上げる...
私淑する学者
- 2022/10/15
- 10:46
辻雙明氏(1903~1991)の「公田連太郎先生と黄憲や顔回のことなど」(『禅の道をたどり来て』所収)と題した随想に以下のような一節がある。公田先生に、ある時わたくしが、「中国においての学者の中で、先生が最も私淑しておられるのは、どういう人ですか」とたずねると、先生は、程明道(『二程語録』)周茂叔(『周子書』)呂新吾(『呻吟語』)王龍渓(『王龍渓全集』)王陽明などの名を挙げられ、私の質問に答えて、それぞれ...
儒者競
- 2022/10/13
- 21:47
江戸時代には相撲の番付に準えた各界名家の人名簿「見立番付」が流行し、医学分野のものでは京都の思文閣から昔出ていた『大坂医師番付集成』を私もよく利用しているのだが、儒者競なる儒者版の見立番付が先日調べものをしていて偶然目に留まった。大部分は見知った名前どころか、掃苔さえ既に済ませていることに我ながら驚かされるが、大高坂芝山(1647~1713)といった何度も現地調査を試みて発見に至らなかった人のことも名前を...
名を好む心は学問の大魔なり
- 2022/10/11
- 18:33

中根東里墓(顕正寺/横須賀市東浦賀2-1-1)“南総之力”をゲットした翌日、横須賀は東浦賀の顕正寺に中根東里(1694~1765)の墓所を訪ねた。江戸中期の陽明学者で、若い頃、徂徠の門にも学んだことがある人である。伊豆下田の生まれで、名は若思、字は敬父(敬夫)、通称を貞右衛門といい、東里と号した。幼児に父を失った後、出家して宇治萬福寺の悦山道宗(1629~1709)に参じたが、正徳年間、江戸に出て荻生徂徠に師事し、のち室...
南総之力
- 2022/10/08
- 10:30

易学に限った話ではないが、学問は地道に基礎となる力をつけることが何よりも重要であるのは言うまでもない。そして、学問の基礎を確立するには何と言っても意志の力が必要となる訳だが、その次に大切なのは環境である。勿論、環境と言っても色々あって、知的生活を営む人々の中で静かに学問に打ち込むことを許されるのは極めて恵まれた環境の一つだろう。しかし、そういったものとはまた別に、「土地のエネルギー」とでも言う他な...
相良知安先生記念碑
- 2022/10/06
- 18:10

相良知安先生記念碑(東大病院内)昭和10年、東大病院内に石黒忠悳題額、入沢達吉選文による巨大な記念碑が建立されており、以前は池之端門看護師寮付近に在ったそうだが、東大病院創設150周年記念事業の一環として、新入院棟Aの玄関付近に移転していると聞き、昨年のちょうど今頃、上京の際に覗いて来た。当時はまだGoogleマップに所在のデータが入力されておらず、多少辿り着くのに苦労したが、現在はこの通り楽勝。藤棚の藤が碑...
相良知安~医と易~
- 2022/10/04
- 18:16

佐賀新聞社から出ている相良知安の評伝は、「医と易」なる副題に釣られて、てっきり医易学関連の内容と勘違いした結果手にした書籍であるが、明治初期の医療行政の中枢に居た医系技官が失脚して市井の易者になったという意味での「医と易」なのであった。紛らわしい副題と言う他ないが、我が国の西洋医学導入の歴史にとんと疎い庵主にはそれなりに啓発されるところ少なからぬ本であったことを白状しておく。相良知安(1836~1906)...
公田会
- 2022/10/01
- 10:05

神奈川の録画受講組Y氏が御恵送くださった古書の幾つかは既に記事の中で御紹介しているが、先日公田会についての資料を送って頂いた。古書店で『易経講話』の原本である『周易講話』35冊を入手された際、挟まっていたものという。実はY氏が『周易講話』を入手されるのは二度目で、一度は蔵書整理の際メルカリで処分したらしいのだが、今回かなり気の毒な古書価がつけられていた為、つい購入してしまったとのことである。私自身は『...