重修緯書集成
- 2022/11/28
- 18:15

漢文を読むのに特有の句法や品詞の排列法等に習熟する必要があるのは言を俟たないけれど、それ以前に当該分野の熟語を知らないとどうにもならないのは、『漢書』の「顔師古曰」を顔師古が人名と知らない学生が「顔、古えを師として曰く」などと読んでしまった笑い話に明らかであろう。もっとも、この手の話は未熟な学生だけを笑ってすませられる手合のものではない。以前、明徳出版社の『重修緯書集成』シリーズにおける易緯の巻を...
経と伝
- 2022/11/25
- 18:22
現在、私達が手にする『易経』のテキストを紐解けば、文言伝のくっついている乾為天と坤為地を除き、序卦の順に並んだ一連の大成卦は、卦辞・彖伝・大象伝に続いて爻辞と小象伝とが交互に配される構成になっていて、火水未済以降に残りの翼伝が載っており、かかる配列に改変した下手人がなんびとであるかは不明ながら、費直・鄭玄・王弼の三説があることは以前記事にしたことがある。改変の理由が単純な読者側の利便にあることは容...
海昏侯の『易経』
- 2022/11/22
- 18:44

『漢方の臨床』9月号に載った小曽戸先生の「海昏侯劉賀前漢墓出土の医工杯」を興味深く拝読した。「海昏侯劉賀前漢墓」は2011年に江西省南昌で盗掘の発覚がきっかけとなって大々的に発掘され、多くの豪奢な副葬品が見出された前漢期の墳墓で、被葬者は武帝の孫の劉賀であることが判明している。在位僅かに27日という短さは廃帝と謚されるに相応しい幸の薄さを物語るが、それはさて置き、小曽戸論文では出土品中「医工五/□湯」と隷...
校勘資料としての馬王堆帛書『周易』
- 2022/11/19
- 14:22

筆写によってのみ伝わる時代の長かった古典籍には、必ず伝写の際に生じた誤字脱字が累積し、結果として同一の書物にも幾つかの系統が生じて来ることになる。それら諸本間の異同を補正して質の高いテキストを得ようと試みる作業が所謂「校勘」で、『周易』の場合、主として用いられるのは『李氏集解』や『経典釈文』、『熹平石経』辺りであろうか。しかし、ここ数十年、中国では大量の出土資料が現れており、可能であれば直接に古い...
小象のこと
- 2022/11/16
- 18:27
全釈漢文大系『易経上』(鈴木由次郎訳注)の解説篇19頁に小象について示唆に富む箇所があるので、該当箇所を引用させて頂くことにする。~~~~~~~~~~~~~~~~~~大象と小象を合わせたものを象伝と呼ぶのは唐の孔穎達の『周易正義』以来の通説である。しかし、小象は大象よりはむしろ彖伝と類型が同じである。彖伝は卦辞を解釈したものであり、小象は爻辞を解釈したものである。そして、ともに押韻している。これを彖...
小象の稚拙
- 2022/11/13
- 08:54

通行本『周易』は王弼のテキストが元になっており、その王弼本を遡れば費氏古文易に行き着く。費氏古文易は前漢末頃の費直を祖とする易で、彼の易は十翼を以て『周易』上下経を解することに特徴がある。従って、この費氏古文易に連なるところの我々が「拠伝解経法」を以て易を解するのは王道と言って差し支えなく、実際二十世紀以降に疑古的解釈が登場するまで、殆どの学者が此の王道に準拠した経学を展開して来た訳であるが、本来...
準素読方式
- 2022/11/10
- 18:52

蒼流庵易学講座の録画受講生で古書収集家のY氏が、講座で使用しているテキストを評して「準素読方式」という表現を使われたのは言い得て妙という気がした。「素読」というのは江戸時代の漢文教育というか読書法の基礎であって、意味を取ることは全く考えずに、ただ原文をスラスラと読み上げられるように音読を繰り返すものである。一頃流行った「声に出して読む〇〇」は、その安直なリバイバルであった。素読は暗記を前提にしてい...
吉卦と凶卦
- 2022/11/07
- 18:12
蒼流庵易学講座は、早くも易の核たる六十四卦の四分の三に手が届くところにまで進んだ。二年間の講座としては、まだ四分の一を漸く終えたに過ぎないのだが、知らない言葉や概念が延々続くのは矢張り六十四卦の経文だから、ここを辛抱して頂ければ、後はグンと楽になると思う。ただ、なるべく実占を通して卦爻辞に触れて頂くよう講座開始直後からお願いしているのだが、受講者の皆さん中々に腰が重くてどうしたものかと思案している...
『四庫提要訳注』土曜談話会編
- 2022/11/04
- 18:04

『四庫提要訳注』土曜談話会編(1966~1967)先日遅ればせながら、土曜談話会編『四庫提要訳注』を古書で購入した。これまで地元の図書館へ足を運んで館内の端末で閲覧するしかなかった国会図書館のデジタル化資料が幸い個人送信扱いになってくれたので、或いは此の本も閲覧出来るようになったのではと検索をかけてみたところ、そもそも国会図書館にさえ架蔵されていないことを知らずに居た自分に愕然とした(公立では宮城県立と東...
中国哲学書電子化計画
- 2022/11/01
- 18:12
テキストの程度について色々と難癖を付けられることの多い中国哲学書電子化計画であるが、語句の検索にこれ以上便利なツールは目下見当たらないし、また難癖をつけられがちなのも、畢竟利用者の多さの裏返しと看做すことが出来よう。先月の陰陽五行思想についての講演の準備に際しても大いに活用させてもらい、今も利用しない日が無いと言っても良いくらいなのだが、最近まで気付かずに居たことがある。それは、書籍の分類に奇妙な...