龍と麒麟と鳳凰と
- 2023/08/28
- 18:05
『易経』を読んでいて、少し不思議に思うのは、龍は何度も出て来るのに、龍と並ぶ瑞獣である麒麟や鳳凰が出て来ないことである。或いは、経文の起源がそれら瑞獣より古い為に登場し得ないのだということも考えられなくはないが、翼伝にさえ登場しないところが面白いと思う。説卦伝には八卦の夫々の象意を動物に当て嵌めて行く記述が続くが、黔喙之屬などという何やらよく判らぬものが登場するのに、やはり麒麟や鳳凰はお出ましにな...
『巫・占の異相』 吉村美香編
- 2023/08/25
- 18:26

『巫・占の異相』 吉村美香編(志学社/2023年刊)昨日、奈良場勝先生より志学社から出た新刊『巫・占の異相—東アジアにおける巫・占術の多角的研究—』を御恵送頂いた。国際日本文化研究センターの2020年度の共同研究「巫俗と占術の現在ー東アジア世界の民間信仰の伝播と展開」の成果を元に編まれた一書で、先生は第3章「占術・相術・信仰の受容と展開」の中に「大雑書の易をめぐる書林の動き」を寄稿されている。副題の「東アジア...
梨を頂きました。
- 2023/08/22
- 18:11

千葉県市川市在住のオンライン講座受講者様より、立派な梨を御恵送頂きましたm(_ _)m恥ずかしながら一昨年まで、ふなっしーが梨を擬人化したキャラクターであることを知らなかった蒼流庵主ですが、好きなフルーツの一つです。有難く頂きたいと思います。梨と言えば千葉の特産ですが、市川市はトップの白井市に次ぐ生産量を誇るそうです。ところで、梨は支那の本草書では唐の『新修本草』に初めて記載されていて、“多食すれば人をし...
対卦雑感
- 2023/08/19
- 10:33
『周易』の卦序については、昔からコジツケが過ぎるとして評判の宜しくない「序卦伝」という一応の解説めいたものがあるが、漢初の馬王堆帛書本に見える卦序は邵康節の先天図の配列に似通ったところがあり(全く同一という訳ではない)、古くは色々な配列の仕方があったものの、今本の卦序だけが残ったのだとする見方が支配的になって来ているらしい。例えば、用いたテキストが今本と異なった卦序のものであった為に「雑卦伝」はあ...
滝畑の薬草療法
- 2023/08/16
- 18:20

『河内国瀧畑左近熊太翁旧事談』の中に民間療法を扱った章があって、項数こそ極少ないものの、当時使われていたと思われる薬草療法の実際が垣間見られるようで、生薬探偵としては大変に面白く思った。民間薬の図鑑を紐解いたところで、今日では使われないものが殆どだから、個々の生薬の効能書きも何処かの書物からそのまま引き写して来ただけの場合が甚だ多い。左近熊太翁の話に出ているものは伝聞を交えて必ずしも滝畑で使われた...
左近熊太翁を探して
- 2023/08/13
- 10:52

木村哲也氏の『『忘れられた日本人』の舞台を旅する』は、高校卒業と同時に『忘れられた日本人』と出会い、以後宮本常一の足跡を辿って旅を続けた著者の記録で、第二章で滝畑が扱われている。木村氏は1994年、1996年、1998年の三回、滝畑に足を運んで、左近熊太翁の孫 又三郎氏を探し当て、かつての貴重な証言を多く聞き出すことが出来た。木村本によると、宮本常一が取材した頃の左近家は、今の夕月橋の上流左岸辺りにあったそう...
或る流卜者のことば
- 2023/08/10
- 18:03

宮本常一と言えば、今は岩波文庫に入ってロングセラーとなっている『忘れられた日本人』が其の代表作であるとして何処からも異論は出ないと思うが、この本でも少し左近熊太翁のことが出ている。先に少し引用した中にも出て来たが、翁は京都の大川という易者について旅をした経験から自身も易を立てたらしい。そして、この大川という名も無き流れの易者のことばに、また実に含蓄に富んだものがあるのだ。女房を失ってから、子供もあ...
“奇男児”左近熊太翁のこと
- 2023/08/07
- 18:43

大阪南東部に位置する奥河内の中心エリア、河内長野市は嘗て我が粟島行春師が活動の拠点にされていた場所で、古くは日本一の爪楊枝の生産地でもあり、また今では完全に絶産となっているものの、麦門冬の栽培でも知られた地域である。市の山手の谷深く、嘗て滝畑という集落があったが、1981年に滝畑ダムが完成して注水が始まり、村の大部分は今は仄暗い水の底に沈んでしまった。実は此の滝畑地区は涼を求めて庵主が夏場に繰り出す場...
栄西禅師生誕地再訪
- 2023/08/04
- 18:41

先月の或る日、四年ぶりに松江のヨロイグサを探索した後、出雲を回って南下し、現在療養の日々を送られている鍼灸家のI先生を見舞う為、岡山某所のグループホームを訪ねた。先生が岡山大学の植物園で突然御倒れになったのが、ちょうど三年前の夏のこと、コロナ禍に阻まれて面会出来ない日々が続いたが、先日お近くにお住まいのT先生より面会が可能になったとの御連絡を頂戴した為、今回、立ち寄らせてもらうことになったのである...
『素女妙論』永塚憲治編訳
- 2023/08/01
- 18:12

『素女妙論』永塚憲治編訳(臨川書店/2023年刊)“孤高の医史学者”永塚憲治先生より、臨川書店から上梓されたばかりの『素女妙論』訳註を御恵送頂いた。永塚先生は、大東文化にて我が国に於ける陰陽五行説研究の第一人者であった故林克先生(1943~2022)より薫陶を受けられた後、中国に滞在すること十年、更なる研鑽を積まれ、帰国後も郷里の函館に籠って世俗を超越した学究の日々を送られている。其の知的領域は実に広く、そして...