幻の『白蛾易法秘蘊』加藤大岳著
- 2014/01/29
- 23:51
昭和50年の紀元書房在庫表
三十年以上にわたって加藤大岳先生が刊行予告を繰り返しながらも、結局未刊に終わった幻の著述に『奥秘伝書・白蛾易法秘蘊』がある。
『易学研究』誌上では、再三、刊行間近であるように匂わせており、「易占法講座184」では、“来年刊行”とまで言っているくらいだから、恐らく原稿自体はかなりのところまで完成していたのだろう。
上の写真は、昭和50年発行の『易の理論』に挟まっていた紀元書房の在庫表であるけれど、右から三冊目にカッコ書きで未刊としながらも、リストに書名を載せているあたり、いよいよという所まで来ていたことは疑いない。
しかし、結局お蔵入りになってしまったのは、大岳先生最期の単行本として、納得の行く内容には至らなかった為であろう。
執筆の進まない理由は、連載記事の端々で語られているが、まずは占例が少ないことで、その数少ない白蛾の占例は射覆にかなり偏っている点に不満を持っておられたようである。
占例が少ないということは、実際に白蛾の易理論がどのように用いられたか、或いは白蛾易を特徴付ける諸技法の内、どれが多用されたものであるか、といったことが分からない訳だ。
もう一つの御大の御不満が如何なる所にあったかは、「易占法講座184」からそのまま引用することにしよう。
この人の易がどんなものであったか、それを一冊の本にまとめて出版することを、三十三、四年も前に予告したのですが、まだ本になっていません。
その一番の理由は、私がズボラということにあるのですが、その他に新井白蛾先生は、読んでいきますと書かれていることが、非常に親切でないのです。
“易学小筌”という、一番初歩的な書物にしても、大事なところへくると、後は口伝、口訣となっていて、それがどの書物でもそうなっていて、締め括りがつけ難いのです。
書かれていることの説明も懇切ではありません。
これも、ここのところは秘伝となっていて、結局、秘伝ばかり集めないと説明がつかないことになります。
それらを繋ぎ合わせて一冊の本にするわけで、もう三十何年も経ってしまったので、なんとかしなければならないと、近頃は柄にもなく一生懸命考えているところです。
目下、白蛾易を解説した適当な書物も見当たらず、『易学研究』『実占研究』で散発的に発表された白蛾易の諸論も、入手が難しい(というか、あまりに散発的な為、ひとそろえ在ったとしても索引がないので探し出すのが至難)。
そこで、研究熱心な同学の士の為に、いくつか手持ちの資料を切り貼りし、また私が足で調べた事蹟も交えながら、一か月にわたって、新井白蛾を御紹介して来た。
いくらかでも白蛾先生の実像を伝えられたらと思うが、大岳先生でさえ断念した仕事であるから、身の丈を超えた試みであることは重々承知している。
誤りや私の知らない事実を御存じの方は是非とも御教示頂けたら幸いである。
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