片桐棲龍堂へ~生薬探偵の休日~
- 2018/04/15
- 21:13
「ねぇ、蒼流庵ちゃん、あたし、久しぶりに堺の片桐棲龍堂さんへ行くの。お暇なら、おでかけになりませんこと?小西製薬の服部先生もお誘いしてるから、紹介してあげるわヨ、ウフフ」
と、先週庵主にお声をかけて下さったのは、元内藤記念くすり博物館学芸員で、第14回矢数医史学賞受賞者の野尻佳与子先生である。
片桐棲龍堂さんは、創業450年になんなんとする堺の老舗で、先祖は岸和田藩等で御典医を務めていたらしく、現在は伝来の貴重な品々を集めた漢方資料館も併設されている。
とはいえ、平時非公開なので、特別なコネがないと拝観出来ないという。
そんな機会を逃してはなるまいと二つ返事で参加表明し、湊駅で待ち合わせることに。
野尻先生とお会いするのは2月の京大人文研以来、初めてお目にかかる服部先生は藤沢薬品出身の薬学博士で、現在は石切の小西製薬勤務、御年81歳という小柄で御洒落な老紳士であった。
服部先生とも旧知の間柄のように話が弾みながら、あっという間に、片桐棲龍堂さんへ辿り着く。
呼び鈴を鳴らすと、奥の玄関より、17代目当主の片桐平智先生が登場。
「よく来たな、待ってたゼ」と片桐先生。
建物は国の登録有形文化財(平成12年登録)となっており、入口横には、堺市教育委員会によって立てられた説明版がある。
入館早々に、当主のフルスロットルの案内と解説が始まる。
建物の中には珍宝奇宝が所狭しと並べられており、とても短時間で拝観出来るような量ではなかったが、その中から目ぼしいものを選んで、フルスロットルの解説が続く。
石薬コレクションに自信ありということで、色々貴重なものを見せて頂く中、
「これはな、今では入手困難な五花龍骨なんだゼ、てめぇ見込みがありそうだから、一つやるゼ」とコレクション中の逸品を恵与される。
漢方家にはケチ臭いのが少なくないのだが、さすが17代当主は切符の良さが違う!
今では日本では絶対に入手できない紫雪散(『千金翼方』収載)の味見という貴重な体験もさせて頂き、続いて現在はワシントン条約でがんじがらめの麝香の香りも嗅がせて頂いたが、強烈な臭いに思わず顔をそむけてしまった。
「麝香はよぉ、ひと嗅ぎすると、強烈な発情作用があるんだゼぇ~」と片桐先生。
広末涼子ちゃんのファースト写真集『R』(1996年/集英社刊)ほどの作用はなさそうだが、動物的本能に働きそうな何やら只ならぬ臭気であったことは確かだ。
動物薬コーナーで、続いて頂戴したのが、超高価な犀角のスライスである。
「サイカチじゃないゼ、サイカクだゼ~」と蒼流庵主人。
その昔、輸入されていた陽起石入りの丸薬“至宝三鞭丸”も頂戴したが、ケースがえらくカッコいい。
続いて案内して頂いたのがお庭であるが、庭園の一番の目玉がこの龍穴で、この為に堺に移住して来られたという話だ。
この灯篭、窓に耳を当てると、「シューシュー」という不思議な音が聞こえる。
一昨年、台北医学大学の陳世銘教授と、玄空大五行風水教室の陳澧謀先生一行が、表敬訪問され、めいめい片桐家の風水的構造を計測して帰られたという。
写真から伝わるかどうか判らぬが、独特な清浄な風がどこからともなく吹いてくる不思議な場所である。
最後は、手入れの行き届いた薬草園を案内して頂いた。
この日は、片桐先生に来客があるということで、二時間に満たない滞在ではあったが、大変貴重な体験をさせて頂き、お声掛けくださった野尻先生にはとても感謝している。
片桐棲龍堂を辞して、三人で道修町に向い、杏雨書屋や田辺製薬の資料室を拝観した後、桜の通り抜けを10年ぶりに歩いて、帰途に就いのは、もう日没間際であった。
と、先週庵主にお声をかけて下さったのは、元内藤記念くすり博物館学芸員で、第14回矢数医史学賞受賞者の野尻佳与子先生である。
片桐棲龍堂さんは、創業450年になんなんとする堺の老舗で、先祖は岸和田藩等で御典医を務めていたらしく、現在は伝来の貴重な品々を集めた漢方資料館も併設されている。
とはいえ、平時非公開なので、特別なコネがないと拝観出来ないという。
そんな機会を逃してはなるまいと二つ返事で参加表明し、湊駅で待ち合わせることに。
野尻先生とお会いするのは2月の京大人文研以来、初めてお目にかかる服部先生は藤沢薬品出身の薬学博士で、現在は石切の小西製薬勤務、御年81歳という小柄で御洒落な老紳士であった。
服部先生とも旧知の間柄のように話が弾みながら、あっという間に、片桐棲龍堂さんへ辿り着く。
片桐棲龍堂(大阪府堺市堺区西湊町3-1-16)
呼び鈴を鳴らすと、奥の玄関より、17代目当主の片桐平智先生が登場。
「よく来たな、待ってたゼ」と片桐先生。
建物は国の登録有形文化財(平成12年登録)となっており、入口横には、堺市教育委員会によって立てられた説明版がある。
入館早々に、当主のフルスロットルの案内と解説が始まる。
建物の中には珍宝奇宝が所狭しと並べられており、とても短時間で拝観出来るような量ではなかったが、その中から目ぼしいものを選んで、フルスロットルの解説が続く。
石薬コレクションに自信ありということで、色々貴重なものを見せて頂く中、
「これはな、今では入手困難な五花龍骨なんだゼ、てめぇ見込みがありそうだから、一つやるゼ」とコレクション中の逸品を恵与される。
「ついでにこいつもやるゼ」と、気前よくまたまた龍骨を頂戴。
漢方家にはケチ臭いのが少なくないのだが、さすが17代当主は切符の良さが違う!
今では日本では絶対に入手できない紫雪散(『千金翼方』収載)の味見という貴重な体験もさせて頂き、続いて現在はワシントン条約でがんじがらめの麝香の香りも嗅がせて頂いたが、強烈な臭いに思わず顔をそむけてしまった。
「麝香はよぉ、ひと嗅ぎすると、強烈な発情作用があるんだゼぇ~」と片桐先生。
広末涼子ちゃんのファースト写真集『R』(1996年/集英社刊)ほどの作用はなさそうだが、動物的本能に働きそうな何やら只ならぬ臭気であったことは確かだ。
動物薬コーナーで、続いて頂戴したのが、超高価な犀角のスライスである。
「サイカチじゃないゼ、サイカクだゼ~」と蒼流庵主人。
その昔、輸入されていた陽起石入りの丸薬“至宝三鞭丸”も頂戴したが、ケースがえらくカッコいい。
今では口に入る機会のない薬味が随分入っている。
続いて案内して頂いたのがお庭であるが、庭園の一番の目玉がこの龍穴で、この為に堺に移住して来られたという話だ。
この灯篭、窓に耳を当てると、「シューシュー」という不思議な音が聞こえる。
一昨年、台北医学大学の陳世銘教授と、玄空大五行風水教室の陳澧謀先生一行が、表敬訪問され、めいめい片桐家の風水的構造を計測して帰られたという。
ここが龍穴
写真から伝わるかどうか判らぬが、独特な清浄な風がどこからともなく吹いてくる不思議な場所である。
最後は、手入れの行き届いた薬草園を案内して頂いた。
この日は、片桐先生に来客があるということで、二時間に満たない滞在ではあったが、大変貴重な体験をさせて頂き、お声掛けくださった野尻先生にはとても感謝している。
片桐棲龍堂を辞して、三人で道修町に向い、杏雨書屋や田辺製薬の資料室を拝観した後、桜の通り抜けを10年ぶりに歩いて、帰途に就いのは、もう日没間際であった。
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