竹参を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/21
- 18:43
トチバニンジン(2012年5月21日/大阪府泉州)
竹節人参(略して竹参)は、ウコギ科トチバニンジンの根茎で、日本では高麗人参の代用として用いられて来た歴史があり、薬局方にも記載されているが、古方派の泰斗・吉益東洞は、朝鮮に産する人参は味が甘くて心下痞鞕に用いても効果がなく、苦味の強い大和の人参を使うべきだと言っている。
この説は、東洞が最も心血を注いだ著述である『薬徴』に詳しく、これは東洞が一薬一能の考え方を元に『傷寒論』から使用薬物の働きを帰納するという試みの結果生まれたもので、人参の主たる薬能は、みぞおちの痞えを除くことにあって、その結果として諸々の病証が取り除かれると考えた訳だが、ここから行くと、高麗人参は竹節人参の粗悪な代用品ということになる。
トチバニンジンは日本の固有種であるから、朝鮮はもちろん中国にも産しないが、同様の形状の近縁種は、実は広く分布しているらしい。
長年トチバニンジンを研究して来られた大阪教育大准教授の岡崎先生は、庵主の植物仲間であるが、いつだったか、雲南やネパールの高地にも似たような別種があり、北米にも洋参以外に得体のしれない竹参もどきが分布していることを教えてくださった。
岡崎先生によると、地図上で見ると、朝鮮半島に分布を見ないのはやや不自然の感を受けるといい、或いは早くに採り尽くされて後でオタネニンジンと入れ替わってしまったということはないのだろうかと言っておられた(以前、漢方誌『おけら』でこのことについて触れたことがある)。
本草書には、この憶測を裏付けるような記述はなさそうだが、もし仲景の用いた人参が竹参の近縁種であったとしたら、東洞の慧眼は流石というべきで、想像するだけで楽しい仮説である。
掘ってみると、節が沢山あって、竹節人参の名に相応しい形状をしていることが判る。
なお、朝鮮人参は直根で、根が垂直に発達し、竹参は横に這うように発達すると言われるが、稀に直根型のものもあることが報告されている。
この頼もしい姿かたち!
2012年6月6日
二週間ほど放置すると、縮んでこんなに小さくなりました。
如何にも生薬、といった感じに黒ずんで来た竹節人参クンを見て、フト庵主の脳裏にこれで独参湯を作ってみようという考えが浮かんだ。
本来、独参湯は、強力な補益を目的とするものであるから、竹節人参で作るというのはナンセンスな話であるが、日ごろから心下痞鞕に悩まされていることもあって、或いは効果を期待出来るかもしれないと考えた訳だ(だんだんデイリーポータル化する生薬探偵)。
こうなるとパック詰めで売り出しても何の違和感もない。
愛用のウチダ煎じ器でグツグツ煎じる!
ついに独竹参湯が完成したが、飲んでみると、アクが凄くて喉が超イガイガに!
やっぱり単に煎じるだけではダメみたいね。
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