天麻を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/05/27
- 14:01
オニノヤガラ(2016年5月27日/奈良県某所)
ウチダ和漢薬が発行している「ウチダの和漢薬情報」平成28年5月10日号に天麻が紹介されていて、そこには“天麻は高価な生薬のため、ジャガイモの塊茎を蒸乾した「洋天麻」と称する偽品が出まわった事もあります。しかし、今日では天麻の栽培が可能となり中国各地で栽培されています。”との記述がある。
が、いつだったか、中医師の甄立学先生に尋ねたところ、今でも市場に出回っているものは大半がジャガイモ製ではないかという。
なるほど、栽培が出来るようになったと言っても、高級品には違いないから、それらしい偽物が作れるなら、商売にしようというのがあちらのお国柄であると言われれば、失礼ながらそんな気もする。
写真を見てもらえば判るように、オニノヤガラはランとは名ばかりの薄汚い容貌をしていて、葉っぱが無いことが目を引くが、これは共生関係にある土中の菌類から栄養をもらうので、自分では光合成をしない植物である為だ。
一昔前「腐生植物」と呼ばれていた種類の植物であるが、最近では名称不適切とのことで、「菌従属栄養植物」という語感今一つの名称に代わってしまった(この手合いの植物ではギンリョウソウあたりが比較的目にしやすい)。
栽培は、意図的に菌を植え付けることで病気の土を作り出して行われる。
オニノヤガラに限らず、ランの仲間は基本的に野生種の採取はご法度であるが、一昨年、奈良県のレッドデータ調査委員会のメンバーを案内して、合法的に一株だけ採取するのに立ち会わせてもらった(採取した標本は現在某大学の保管庫にある)。
こうして見ると、ジャガイモから偽物を作るというのが何となく分かる気がする。
ちなみに、オニノヤガラは「鬼の矢柄」で、鬼が使う弓矢の矢を突き立てたような恰好という意味らしいが、「ヌスビトノアシ」という別の和名もあり、根茎の曲がった恰好が泥棒が足音をたてないように爪先立ちになったように見えることから名付けられたものというが、この植物は神出鬼没で、毎年同じ場所に生えるという訳ではなく、昨年生えていたからといって、また今年も同じ場所で見られるという保証はないところからも来ているようだ。
近畿植物同好会の山住一郎会長に尋ねたところ、オニノヤガラは自分で光合成をせず、共生菌から栄養を分けてもらうという受動的なライフスタイルなので、開花に必要な栄養が毎年溜まるという風には行かず、溜まった頃合いを見計らって不定期に開花するのだろうということであった。
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