大深当帰を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/06/18
- 18:40
当帰と言えば“婦人の要薬”として、種々の婦人科疾患に多用される生薬で、仲景方では、烏梅丸・当帰四逆湯・当帰四逆加呉茱萸生姜湯・麻黄升麻湯・赤小豆当帰散・升麻別甲湯・候氏黒散・古今録験続命湯・薯蕷丸・奔豚湯・当帰生姜羊肉湯・当帰芍薬散・当帰貝母苦参丸・当帰散・当帰建中湯・温経湯・膠艾湯の十七処方に用いられている。
女性の不妊症に馬鹿の一つ覚えの如く用いられている当帰芍薬散など、一体、年間どれだけの量が使われているのであろうか。
不妊症に多用される風潮を作ったのは、先頃亡くなられた寺師先生であるらしいが、原典たる『金匱要略』では、登場する二か所とも、婦人および妊婦の腹中痛に使われていて、著者の意図としては不妊に対する薬方ではなかったらしいことが判る。
また、安胎薬としても使われているが、『金匱要略』では安胎薬として、当帰散と白朮散の二方を挙げ、やはり当帰芍薬散の用いられていないことが目を引く。
面白い話だ。
それはさて置き、原植物であるカラトウキは日本に自生を見ないが、我が国にもミヤマトウキなどの変種を含めた近縁種が数種類自生している。
国産品は、かつて常陸当帰・仙台当帰・越後当帰・伊吹当帰など、産地を冠したものが出回っていたが(17世紀中期以降、各地で栽培および品種改良が行われるようになったらしい)、今日では奈良の大和当帰くらいしか生産されていないのではなかろうか。
栽培品で最も品質が良くて有名なのは、奈良県五条市の大深町に産する“大深当帰”であろう。
植栽の逸出でも見つかりはしまいかと、原付で繰り出したのは、振り返ればもう6年も前のことだ。
かなり、標高の高い場所であるのが、お分かり頂けるかと思う。
が、実は、本当の意味での“大深当帰”はとっくに絶産で、残念ながらもう目にすることは叶わない。
大深では、連作障害によって、栽培不能になってしまい、ずいぶん前に産地は富貴という隣の集落に移ってしまっているのである。
大深は奈良県五条市であるが、この辺りはちょうど県境で、富貴は和歌山県高野町であり、厳密には大和当帰とは呼べず、紀州当帰とでも呼ぶのが正確であろう。
大深の古老に伺ったところ、かつては当帰の他に黄連や竹参も栽培していたそうだ。
また、乳牛に当帰を食べさせると、乳の出が良くなったという。
高級な大深当帰を家畜に食わせるとは、生産地ならではの贅沢な使い方である。
種が飛んで野生化したものも無いことはないらしいが、稀なことで、探して見つかるようなものではないそうだ。
親切な農家のおばあさんが、標本用にといくつか当帰を採ってくださった。
売り物にならない端物は、お風呂に入れると良いらしく、お土産に少し分けて頂いた。
ダイソーのブラジャーネットに入れて浴槽へ。
うむ、確かに、なんとなくいつもよりポカポカしたような?
いずれにせよ、高級品の大深当帰を風呂にぶっ込むという贅沢な使い方をした経験を持つ漢方家はそう多くないに違いない。
遠出した甲斐があったというものだ。
堺市にあるトウキ加工所は、所在の陶器町から来たもので(堺市には須恵器の窯址が沢山ある)、当帰とは何の関わりもない。
女性の不妊症に馬鹿の一つ覚えの如く用いられている当帰芍薬散など、一体、年間どれだけの量が使われているのであろうか。
不妊症に多用される風潮を作ったのは、先頃亡くなられた寺師先生であるらしいが、原典たる『金匱要略』では、登場する二か所とも、婦人および妊婦の腹中痛に使われていて、著者の意図としては不妊に対する薬方ではなかったらしいことが判る。
また、安胎薬としても使われているが、『金匱要略』では安胎薬として、当帰散と白朮散の二方を挙げ、やはり当帰芍薬散の用いられていないことが目を引く。
面白い話だ。
それはさて置き、原植物であるカラトウキは日本に自生を見ないが、我が国にもミヤマトウキなどの変種を含めた近縁種が数種類自生している。
国産品は、かつて常陸当帰・仙台当帰・越後当帰・伊吹当帰など、産地を冠したものが出回っていたが(17世紀中期以降、各地で栽培および品種改良が行われるようになったらしい)、今日では奈良の大和当帰くらいしか生産されていないのではなかろうか。
2012年6月17日
栽培品で最も品質が良くて有名なのは、奈良県五条市の大深町に産する“大深当帰”であろう。
植栽の逸出でも見つかりはしまいかと、原付で繰り出したのは、振り返ればもう6年も前のことだ。
ここが大深町
かなり、標高の高い場所であるのが、お分かり頂けるかと思う。
が、実は、本当の意味での“大深当帰”はとっくに絶産で、残念ながらもう目にすることは叶わない。
大深では、連作障害によって、栽培不能になってしまい、ずいぶん前に産地は富貴という隣の集落に移ってしまっているのである。
大深は奈良県五条市であるが、この辺りはちょうど県境で、富貴は和歌山県高野町であり、厳密には大和当帰とは呼べず、紀州当帰とでも呼ぶのが正確であろう。
大深の古老に伺ったところ、かつては当帰の他に黄連や竹参も栽培していたそうだ。
また、乳牛に当帰を食べさせると、乳の出が良くなったという。
高級な大深当帰を家畜に食わせるとは、生産地ならではの贅沢な使い方である。
大深から10分少々(5キロほど)で、高野町富貴に入る。
熊さんが出没するそうで、原付はノーガードの為、若干ビビる。
栽培農家さんを紹介してもらい、畑を案内してもらった。
葉からはセロリのような独特な臭いがする。
種が飛んで野生化したものも無いことはないらしいが、稀なことで、探して見つかるようなものではないそうだ。
親切な農家のおばあさんが、標本用にといくつか当帰を採ってくださった。
売り物にならない端物は、お風呂に入れると良いらしく、お土産に少し分けて頂いた。
ダイソーのブラジャーネットに入れて浴槽へ。
うむ、確かに、なんとなくいつもよりポカポカしたような?
いずれにせよ、高級品の大深当帰を風呂にぶっ込むという贅沢な使い方をした経験を持つ漢方家はそう多くないに違いない。
遠出した甲斐があったというものだ。
堺市にあるトウキ加工所は、所在の陶器町から来たもので(堺市には須恵器の窯址が沢山ある)、当帰とは何の関わりもない。
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