商陸を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/06/20
- 18:35
マルミノヤマゴボウの花(2014年6月20日/大阪府奥河内)
商陸は、ヤマゴボウ科ヤマゴボウの根で、『神農本草経』では下品に収載され、仲景方では『傷寒論』の労復病篇に牡蠣沢瀉散という使用処方が見えている。
また、易卦「沢天夬」九五の辞“莧陸夬夬”の“莧陸”はヤマゴボウのことであるという。
コトバンクは平凡社の『百科事典マイペディア』の解説を引き、「ヤマゴボウ科の多年草。日本全土,東アジアの温帯に分布」としているが、マジモンのヤマゴボウは日本に自生せず、薬用に栽培されていたものの野生化が稀に見られる程度で、日本全土に分布という記述は不正確だろう。
生薬探偵は野生のヤマゴボウを未だ目に出来ていないし、大阪の植物分布を知る際の基本文献である桑島目録では、かつて仁徳天皇陵で確認したことを記すのみ。
身近で見られるものに、北米原産のヨウシュヤマゴボウがあり、こちらは美商陸(“美”はアメリカの意)の漢名で知られるが、ヤマゴボウと違って花序が下垂するのが大きな特徴。
明治初期に帰化して以来、所構わず繁殖しているのだが、或いは『百科事典マイペディア』の記述はこれを混同しているのか?
2014年8月22日/奈良県天川村
日本には、マルミノヤマゴボウという固有種があり、大阪では金剛山系で稀に見られるが、個体数がごく少なく、生薬探偵も2度しか目にしていない。
中国のヤマゴボウは、実にカボチャのような皺があるが、在来種はマルミの名の通り、ツルンとしているので見分けられる。
2013年9月23日
大阪ではレアなマルミノヤマゴボウだが、奈良の川上村や上北山村などに行けば、林道沿いに、それこそ無尽蔵に生えていて圧巻。
奈良はどこでも鹿の食害が酷い為、在来種を取り巻く環境は極めて厳しいのだが、商陸は老人や子供が食べると命を落とすこともあるほど毒性が強いので、鹿の食害もなんのその、増え放題となっているようだ。
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