半夏を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/07/14
- 11:26
カラスビシャク(2013年7月14日/三重県伊賀市)
漢方処方中に多用される半夏は、サトイモ科カラスビシャクの塊茎で、先に紹介した天南星もそうであるが、同科には蛇が鎌首をもたげたような恰好をしたものが少なくない。
もともとは在来種ではなく、大昔に中国から渡来した所謂“史前帰化植物”と考えられている。
日本全土に分布するが、農薬使用の為か、昨今では減少傾向にあるようだ。
昔は農作業時に片手間に採取されたものが流通していたらしいが、現在では100%輸入に頼っているのが情けない。
『神農本草経』では下品に収載され、仲景方では41処方に用いられており、そのうち半夏瀉心湯や小柴胡湯、麦門冬湯、小青龍湯、半夏厚朴湯、温経湯などは頻用処方であって、半夏無しには、現代日本の漢方医療が成り立たないことは確実である。
半夏は毒性があって、味も非常に辛いから、とても食用にはならないが、ネズミはこんなものでも平気でかじるらしく、以前、ボロボロに食われた標本を見たことがある。
ところで、『傷寒論』の少陰病篇に、卵の白身、お酢、半夏を使った“苦酒湯”という風変わりな方剤が登場する。
現代で言えば、喉頭癌の類に応用出来る薬方であるというが、名前だけ有名で作る人の少ない(というかほとんどいない)この方剤を随分前に一度だけ作ってみたことがあった。
この方剤は作り方が変わっている。
写真はweb上より拝借
文中の「刀環」は、実際の刀の柄の先の輪を指したものか、刀弊(カミソリのような形状の古銭)を指したものか、今日では分からないのだが、どちらも手元にないので、針金を駆使して代用品を自作する。
出来た!これぞ現代の刀環!
材料は卵に半夏に酢
大塚敬節氏は、苦酒を上等の酒と解しているが、恐らくは酢が正しい。
卵の殻に半夏を入れる
お酢と卵の白身を入れれば準備完了!
火にかける
白身が固まってきた
下が焦げる・・・。もっと弱火にすべきだったか?
とりあえず完成?
容器に中身を移して飲んでみる。
お酢を水で薄めたせいか、不味い白身の汁って感じ・・・。
とりあえず、中の固まった白身と半夏を食ってみようか。
半夏辛ッ(((( ;゚д゚)))
口の中が超絶ピリピリになるも完食
改めて見ると卵の裏は真っ黒け
追記:
実際に作ったことがあるという某先生にお聞きしたところ、完璧に作るのは困難を極めるらしく、やるなら、卵は上の部分だけ殻を除いて使用するのが良いとのこと(容量が大きくなる)。
また、刀環は金属製の茶こしで代用するのが手軽であろうという。
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