防已を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/07/15
- 12:21
オオツヅラフジ(2017年7月15日/大阪府奥河内)
『神農本草経』では中品として記載される防已は、古来より風疾の要薬とされ、仲景方では『傷寒論』中の薬方には使用されず、『金匱要略』中に、已椒癧黄丸・防已茯苓湯・防已地黄湯・防已黄耆湯という四つの使用処方が見えている。
中国では、ツヅラフジ科のシマハスノハカズラの根を漢防已と称して用いているが、日本では同じくツヅラフジ科オオツヅラフジの茎および根茎を乾燥させて用い、日本薬局方に記載されるものはこれである。
大阪では、金剛山系で時折見かけるが、それほど数は多くなく、福島や沖縄では準絶滅危惧種に指定され、埼玉県では絶滅危惧IA類となっているから、今後注視すべき在来種のようだ。
なお、『金匱要略』には、木防已湯とそれに続けて木防已加茯苓芒消湯というのが出ているが、昔からこれは「朮防已湯」つまり「白朮防已湯」の「朮」が誤って「木」となったのではないかとする説があり、仲景方では木防已はここにしか出て来ないところから、私も「朮防已湯」が本来ではなかったかと思う。
オオツヅラフジの花(2012年7月16日/大阪府南河内)
オオツヅラフジの開花を目にする機会はあまり多くなく、生薬探偵も近畿植物同好会の例会で一度見たきりだ。
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