石韋を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/07/17
- 18:25
ヒトツバ(2013年7月16日/大阪府奥河内)
シダ植物は起源が非常に古く、恐竜の時代どころか、三葉虫が泳いでいた時代には既に繁茂していて、地球史上最初の森林はシダ類によって形成されていたという。
私も四半世紀前、中生代ジュラ紀の植物化石を求めて、福井県の手取層群に通ったものだが、出てくるのはシダの化石ばかりであったと記憶している。
そんなシダ植物ではあるが、生薬として用いられるものは不思議と少なく、これまでの連載では海金砂が唯一のシダ植物由来生薬であった。
今日は、そんな海金砂君に孤独を感じさせないよう、利尿治淋の生薬である石韋をご紹介しようと思う。
石韋は、ウラボシ科ヒトツバの全草を乾燥させたもので、岩の上などに着生して繁茂する。
生薬探偵は里山の神社参道で初めて見つけたが、自然海岸の岩肌で着生しているのも目にしたことがある。
海金砂のように街中で見かけることはないが、生えている場所では大抵群生しているので、見つけるのはそれほど難しくない。
『神農本草経』では中品として記載され、仲景方では『金匱要略』の鼈甲煎丸に使用されているが、現在日本では殆んど使われていないので、本薬物を知らない漢方家も少なくなかろう。
何とはなしに哀愁を感じさせる姿かたちで、生薬探偵の惹かれる植物の一つだ。
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