乾漆を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/15
- 18:36
ヤマウルシ(2013年8月15日/兵庫県東播磨)
ウルシと言えば、肌の弱い人だと近付いただけでもカブれることがある為、山ではあまり出会いたくない植物のひとつであるが、伝統工芸の一分野である漆芸には無くてはならないものであるし、生薬としても乾漆の名で用いられ、意外なことに『神農本草経』では上品として扱われている。
駆瘀血の効があり、仲景方では『金匱要略』の大黄䗪虫丸に用いられている。
山で出会う似た植物ではリュウキュウハゼやヌルデなどがあるが、カブれさせる働きはやはりウルシが一番強いようだ(ヌルデは余程過敏な人でない限り大丈夫だが)。
殊に春は昇発の季節である為、なるだけ近付くのは避けた方が良い。
ところで、坊さんが絶食の果てに自発的にミイラになったのを即身仏というが、長年の五穀断ちの後、仕上げとして漆汁を飲むらしく、そうすると、皮膚や髭などが残りやすくなるという。
いくらなんでも漆なんぞ飲めるのかいなと思うだろうが、漆職人の話によると、皮膚に付くとカブれる漆でも、口の中の粘膜や唇に付着した場合はどうということはなく、むしろ味は甘味が強いそうだ。
なお、「乾漆を求めて」と題したが、ビビりにつき、漆汁の採取を実際に行った訳ではないことをお断りしておく。
漆芸や薬用のウルシは、日本には本来自生せず、栽培の逸出が稀に見られる程度。
普通に自生するヤマウルシも漆芸に使えないこともないが、少量しか採れないことに加え、あまり質は良くないようだ。
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