蜀椒を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/16
- 15:28
イヌザンショウ(2013年8月15日/兵庫県東播磨)
山椒と言えば、香辛料として我々の日常に身近なものであるが、『神農本草経』では“蜀椒”の名で下品として収載され、これは蜀の地で良品を産することから付けられた名称らしい。
仲景方では、我が国で最大の消費量を誇る方剤・大建中湯をはじめとして、烏梅丸・升麻別甲湯・烏頭赤石脂丸・王不留行散・白朮散・已椒藶黄丸などに用いられている。
日本では、通常、ミカン科サンショウ属のサンショウ(Zanthoxylum piperitum)の成熟果皮を用いるが、中国では同属の数種が混用されるも、主はイヌザンショウ(Zanthoxylum schinifolium)であるという。
植物の和名の頭によく付いている“イヌ”というのは、Dogのことではなくて、「イナ=否」の意であるといい、“イヌザンショウ”とは「サンショウに似ているが、別の物」ということなのだが、中国の蜀椒がイヌザンショウであるとすれば、日本は和名を付け違えたことになる。
サンショウもイヌザンショウも共に大阪に分布するが、サンショウの方が数はやや少ない。
サンショウは独特な芳香を持ち、棘が対生するが、イヌザンショウは芳香がなく、棘が互生するので見分けることが出来る。
話は変わるが、特別天然記念物に指定されているオオサンショウウオは、昔は食べていた地方も多く、すこぶる美味であるといい、中国産でも良いので、何とか口にする機会を持てないものかと常々思っているところだ。
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