蒺藜子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/08/27
- 18:01
ハマビシの花(2013年8月27日/大阪府泉州)
『神農本草経』に上品として記載される蒺藜子は、ハマビシ科ハマビシの未成熟果実を乾燥させたもので、主として平肝熄風薬として用いられ、使用処方としては『済生方』の当帰飲子や『宣明論方』の蒺藜湯などがある。
本来の生育地である自然海岸の環境が埋め立てなどにより悪化することで、全国的に個体数が激減している海浜植物だ。
実は、大阪では一度絶滅宣言が出されたことがあるが、泉州の数か所の墓地の中で生育が確認され、生薬探偵も4か所で観察することが出来た。
これは、かつて海岸に近接していた墓地の中に砂浜の砂が残されていて、埋め立てにより、海岸線の位置が大きく変わってしまった現在でも、墓地内の僅かな生育環境中に細々と自生しているのである。
蒺藜子(2013年7月7日/大阪府泉州)
欧米では、精力剤のような効果が期待されるということで、サプリメントとなって売られているそうであるが、我が蒼流庵随想の読者諸氏には、沢水困六三の爻辞に登場するものとして記憶されていよう。
海に関するものが出て来ないことで知られる『易経』に海浜植物とは一見、妙に思われる向きもあるやもしれぬが、アジアの内陸部の乾燥地帯などでも見られるらしく、一説に言われているように、『易経』が遊牧民族の間で生まれたものであったとしたら、蒺藜が出て来るのは、むしろ傍証の一つと成り得る。
ところで、“蒺藜”を易の方面では“しつれい”と読むのが普通だが、生薬として読む場合には“しつり”と読むのが一般的。
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