柴胡を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/09/11
- 18:23
ミシマサイコ(2014年9月11日/大阪府中河内)
『神農本草経』に上品として記載される柴胡は、基原の異なる数種のセリ科植物の根が使われているが、一説に空海が見出したとされる本邦のミシマサイコが最高の品質とされ、この在来種が現在中国や韓国に渡って栽培されている。
少陽胆経の要薬とされるが、吉益東洞は一薬一能の考え方から胸脇苦満を主治するものだと言っている。
仲景方で用いられているのは僅かに十方に過ぎないが、その内、小柴胡湯などは20回以上繰り返し出て来るし、日本の頻用処方中でも取り分け多く用いられる生薬であるから、柴胡なしに漢方治療は成り立たないと言って大過なかろう。
一頃、バカの一つ覚え的乱用が引き起こした小柴胡湯による間質性肺炎の死亡事例が注目され、漢方薬は有益無害と信じ込んでいた無知蒙昧なる輩共を震え上がらせたが、証を無視した、しかも長期投与の百害あって一利なしであること自明である。
ミシマサイコは栽培種より野生種の方が高い薬効を持つとされ、昔から乱獲の対象になっていて、和名の由来となった静岡の三島地方ではとっくの昔に絶産となり、現在見られるものは近年町おこしの一環として植えられたもの。
大阪の自生地について、桑島目録は太子町と山中渓での記録を載せているが、恐らく残された自生地は中河内の一か所だけと思われる。
生薬探偵は探索五度目にしてようやく出逢うことが出来た。
勿論採取はしていない。
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