附子を求めて~生薬探偵の冒険~
- 2018/10/01
- 18:55
トリカブトの花(2013年10月1日/大阪府南河内)
『神農本草経』下品の部に、烏頭・附子・天雄の別項で記載されているのは、いずれもキンポウゲ科トリカブトの塊根である。
代表的な散寒薬で、仲景方では附子が三十四方に用いられる他、烏頭を用いたものが五方、天雄を用いたものが一方見えている。
烏頭に出来る側子が附子で、烏頭が側子を生ぜず、肥大化したものが天雄であるらしいが、馬王堆の出土医書『五十二病方』では十二か所に“烏喙”の薬名が見えており、古くは“烏喙”と呼ばれていたようだ。
塊根の部位を区別するようになったのは後のことであろう(後漢初期の『武威漢代医簡』には、烏喙・付子・天雄の三名が出揃っているので、前漢の時代に区別が始まったものであろうか)。
現在、中国の市場品は、主として川烏頭と草烏頭に分かれ、川烏頭は栽培品、草烏頭は野生種であるが、草烏頭は種類や産地によって毒性を含めた品質にかなりバラツキが見られる。
日本薬局方では、ハナトリカブト(Aconitum carmichaeli Debeaux)とオクトリカブト(Aconitum japonicum Thunberg)を指定しているが、国内には細かく分類すると33種類のトリカブトがあり、大阪にはカワチブシ、キタヤマブシ、ミツバトリカブトの三種が自生している。
また、トリカブトはたいてい猛毒であるが、サンヨウブシのように無毒の種類もあって、全てが物騒な植物かというとそうでもない。
2010年11月6日
右から烏頭・附子・側子と綺麗に三つ揃っている(国定公園内につき、撮影後埋め戻し)。
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