WTTCと藤瘤~生薬探偵の回想~
- 2019/01/07
- 18:56
生薬探偵を始めた動機はいくつかあって、まず、演壇で本草学の講義をしている連中があまりに植物に無知なゆえ、偉そうに解説している対象が目の前にワサワサ生えていても全く認識出来ないという体たらくに憤激を覚えたこと、また、粟島先生の会が閉会となってやることが無くなってしまったということもある。
が、伏線として一番大きなものは藤瘤なのであった。
藤瘤とは、文字通り藤に出来るコブで、幹の下部に出来ることが多いが、枝にも出来、またヒコバエに生じることもある。
藤瘤は中国の本草書には記載がなく、我が国の民間薬の類であるが、抗癌生薬として有名で、含有処方を長倉製薬が「WTTC」、剤盛堂薬品が「コイクシン」の名で製剤化している。
WTTCは、消化器外科の権威だった中山恒明氏(1910~2005)の手になるとされるが、先ごろ物故された土方康世先生の「WTTC処方発見者 大草義巳先生を探して」(『漢方の臨床』2001年10月号)によると、実際の発明者は、大草薬品の創業者である大草義巳先生(1905~1975)で、中山氏はそれをさも自身の発明のように吹聴したというのが真相らしい。
国産品は非常に高価な為、以前台湾の順天堂製を取り寄せてみたことがある。
比較したわけではないので何とも言えないが、風味などからして品質的には充分なものではないかという気がした。
さて、なにゆえ、藤瘤が生薬探偵と結びつくのかと言えば、私の習った先生は、藤瘤の入った六物睦和湯というオリジナルの方剤を癌患者に処方して大きな成果を挙げておられたのだが、医薬品区分でないものが癌に効くとして出回っているのは怪しからぬと、厚労省が嫌がらせの通達を出してから一気に市場から消えてしまい、六物睦和湯が作れなくなったという話を聞き、それならばと私が自らの手で採取して来たのを、当時お世話になっていた或る東京の名人に差し上げたところ、これが大変喜ばれたのである。
自分で生薬を採取する楽しさを知ったのは、まさに藤瘤を通してであった。
なお、現在は少量ながら藤瘤の流通が戻っているそうであるが、私が見た限りでは、偽物か、もしくは相当に偽物の混入したもののように思われる(見たところ単なる藤の幹をチップにしたもののように感じられる)。
これも本物を自らの手で採取するという経験なくしては見分けられなかったに違いない。
偽物大国の中国では中医薬大の授業に生薬の鑑別学が組み込まれていて、一応、贋物との見分け方を習うそうである。
また、日本のように細かく刻んだものは、偽物の疑いを持たれて買い手がつかない為、基本的に市場には見当たらない。
日本だけは問屋が持ってきたものを性善説の立場から有難く使っているというのが現状のようだ。
昭和の時代には、問屋が持ってきた生薬の品質を漢方医自ら吟味しながら納得のいったものだけを購入するというのが、ごく在り来たりの光景であったらしいが、昨今こういった光景の見られなくなったのは、エキス剤普及の病弊の一つに違いなかろう。
が、伏線として一番大きなものは藤瘤なのであった。
藤瘤とは、文字通り藤に出来るコブで、幹の下部に出来ることが多いが、枝にも出来、またヒコバエに生じることもある。
藤瘤は中国の本草書には記載がなく、我が国の民間薬の類であるが、抗癌生薬として有名で、含有処方を長倉製薬が「WTTC」、剤盛堂薬品が「コイクシン」の名で製剤化している。
WTTCは、消化器外科の権威だった中山恒明氏(1910~2005)の手になるとされるが、先ごろ物故された土方康世先生の「WTTC処方発見者 大草義巳先生を探して」(『漢方の臨床』2001年10月号)によると、実際の発明者は、大草薬品の創業者である大草義巳先生(1905~1975)で、中山氏はそれをさも自身の発明のように吹聴したというのが真相らしい。
国産品は非常に高価な為、以前台湾の順天堂製を取り寄せてみたことがある。
比較したわけではないので何とも言えないが、風味などからして品質的には充分なものではないかという気がした。
さて、なにゆえ、藤瘤が生薬探偵と結びつくのかと言えば、私の習った先生は、藤瘤の入った六物睦和湯というオリジナルの方剤を癌患者に処方して大きな成果を挙げておられたのだが、医薬品区分でないものが癌に効くとして出回っているのは怪しからぬと、厚労省が嫌がらせの通達を出してから一気に市場から消えてしまい、六物睦和湯が作れなくなったという話を聞き、それならばと私が自らの手で採取して来たのを、当時お世話になっていた或る東京の名人に差し上げたところ、これが大変喜ばれたのである。
自分で生薬を採取する楽しさを知ったのは、まさに藤瘤を通してであった。
なお、現在は少量ながら藤瘤の流通が戻っているそうであるが、私が見た限りでは、偽物か、もしくは相当に偽物の混入したもののように思われる(見たところ単なる藤の幹をチップにしたもののように感じられる)。
これも本物を自らの手で採取するという経験なくしては見分けられなかったに違いない。
偽物大国の中国では中医薬大の授業に生薬の鑑別学が組み込まれていて、一応、贋物との見分け方を習うそうである。
また、日本のように細かく刻んだものは、偽物の疑いを持たれて買い手がつかない為、基本的に市場には見当たらない。
日本だけは問屋が持ってきたものを性善説の立場から有難く使っているというのが現状のようだ。
昭和の時代には、問屋が持ってきた生薬の品質を漢方医自ら吟味しながら納得のいったものだけを購入するというのが、ごく在り来たりの光景であったらしいが、昨今こういった光景の見られなくなったのは、エキス剤普及の病弊の一つに違いなかろう。
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