『大阪府植物目録』桑島正二著
- 2019/01/29
- 18:44
『大阪府植物目録』桑島正二著
大阪でのフィールド調査を思い立った頃、府が2000年に発行した『大阪府野生生物目録』という資料の存在を知り、期待を膨らませて入手したものの、中身は相当に古い資料を引き写してあって、堺市にオオサンショウウオが生息しているとか、いったい何時の時代の話やねんと愕然としたことを覚えている。
それ以降、この本は一度も開いていないが、最近でも大いに活用しているのが、近畿植物同好会第二代会長(1977~1997)を務めた桑島正二先生(1912~1997)の『大阪府植物目録』(1990)だ。
桑島先生は、小中の教員を経て1974年から1984年まで常磐会短期大の教授を務めた方で、リュウノウカンギクやマサジザサ、コンチナンブスズ、カワチグミなどの新種植物を発見されており、近畿植物同好会の発展にも大きく寄与されたと聞く。
本書は、恩師でもある初代会長・堀勝先生の『大阪府植物誌』(1962)の目録編のうち、種子植物とシダ植物の部を、その後の調査研究の結果をふまえて増補改訂したもの(最初の『大阪府植物誌』は1938年に田代・堀の共著で出版されている)。
刊行から30年近い歳月が流れ、帰化植物の多様化、在来種の激減は目を覆うばかりのものがあり、「普通」「やや希」「希」という三段階の産状分類も、現在改訂するなら大幅な変更を迫られることになる筈だが、全く参考にならないという訳でもなく、実際の調査には結構活用させてもらっている資料だ。
桑島先生が私費で出されたそうだが、其の価値はそこらに氾濫している商業出版物の比ではない。
まだ、近畿植物同好会には若干の在庫があるらしいので、ご興味のある方は入手されると良いだろう。
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