天皇紀小攷
- 2019/04/04
- 22:43
近々、皇位継承に伴って亀卜が行われるということで、今日の読売新聞の朝刊にも、今回亀甲を加工して献納する鼈甲職人の記事が出ていた。
それを受けたものであろうか、今朝から我が蒼流庵随想へのアクセス数が急増している。
そこで、今日は我が国の古い卜筮記録を通覧する上で便利な小西愛之助先生の「天皇紀小攷」をご紹介したい。
「天皇紀小攷」は、『易学研究』の昭和45年7月号から56年12月号にかけて連載されたもので、『日本書紀』や各『風土記』、『続日本紀』といった日本の史書から卜筮に関する記録を抜き出して丹念に解説してあり、多くは「神武紀小攷」「嵯峨紀小攷」といったタイトルになっている為、便宜上「天皇紀小攷」とした。
連載に先立って「律令と易」「神代紀と易」「神代紀と太占」「古事記序と易」「天照大神」といった関連諸稿が発表されているので、ご興味のある向きは併せて目を通されると良かろう。
通読した限りでは易筮よりも卜占についての記述が多いようで、我々易占家にはとっつきにくいところがあるにはあるが、この優れた連載により、小西先生は昭和52年度の大岳賞を受賞されている。
連載は昭和56年12月号の「安徳紀小攷」を以て終了しており、その後記事の投稿が見られないので、或いは逝去ないし断筆されたのではないかと思って調べてみると、『近世部落史研究』(1982)、『被差別部落の歴史と人権』(1986)、『俳諧師蕪村・差別の中の青春』(1987)といった部落問題に関する著述を上梓されていて、著者プロフィールを見ると大阪芸術大学教授となっている。
どうやら、占業者の類ではなく、易学は学者の余技であったようだ。
大正12年生まれということで、恐らくご存命ではないと思うが、我が大阪にかかる優れた研究を残された先人の居たことを誇らしく思うものである。
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