夏井睦医師の漢方観について
- 2019/11/04
- 18:57
ラップやワセリンを用いた創傷・熱傷の湿潤療法を提唱する夏井睦先生(1957~)と何度かメールでやり取りさせて頂いたのは、今から十数年前のことで、当時は一般書をまだ書かれておらず、ブレイク前夜といった時期であったように記憶している。
先生の書く文章は非常に面白くて明晰で、当時音楽ネタ以外は隅から隅まで目を通したように思う(オススメの映画に関しては私の目にはどれもくだらないものばかりに映ったが)。
肝心の湿潤療法に関しては、不思議とこの十数年怪我らしい怪我を経験しなかった御陰で、試みる機会に恵まれなかったが、夏にバイク事故で結構へヴィな傷を負ってしまい、ついにチャンス到来と試してみたところ、これが実によく効いてくれて、その治療の有効性をついに身をもって知ることが出来た。
ところで、その夏井先生が、サイト新しい創傷治療の2018年10月31日の記事で、ご自身の漢方観を披歴しておられる。
以前,「漢方薬の世界では新薬という概念はないに等しい」と聞いてびっくりしたことがあります。
調べてみると,中国医学(漢方は日本での呼び名)は紀元210年頃(後漢末期~三国時代)に張仲景が編纂した『傷寒論』に起源があるそうですが,早い時代に治療に使える薬草・生薬が体系化されて完成したため,新薬が付け加えられることはほとんどない,ということらしいです。
そして,生薬リストに載っていたのがトラの骨やサイの角,センザンコウの胎児,亀の甲羅,乾燥タツノオトシゴ,チベットオオカミの体の一部などであり,「トラの骨やサイの角などに匹敵/凌駕する治療効果を持つものはない,代替できるものはない」が大前提のため,治療するためにはトラの骨やサイの角が必要となり,漢方薬がこれらの動物が絶滅危惧種の原因の一つになっているとする考えもあるようです。
恐らく,傷寒論の時代にはトラもセンザンコウも珍しくなかったため「捕まえて薬にしようぜ」と考えたんでしょうが,もうトラもセンザンコウもサイも絶滅寸前の時代になっているんですよ。
2000年前の世界を背景に成立したシステムを世界が変わっても維持しようとするのは,科学的に見て無理があります。
これを専門的知識を持たない人が読んだら、成程そうか漢方なんて所詮非科学的なものよねと思うのも無理のない事だが、各論に関して言えば、少なくとも私などには首肯出来ないところが多々見受けられる。
以前,「漢方薬の世界では新薬という概念はないに等しい」と聞いてびっくりしたことがあります。
調べてみると,中国医学(漢方は日本での呼び名)は紀元210年頃(後漢末期~三国時代)に張仲景が編纂した『傷寒論』に起源があるそうですが,早い時代に治療に使える薬草・生薬が体系化されて完成したため,新薬が付け加えられることはほとんどない,ということらしいです。
中国医学の日本での呼び名が漢方であるというのは、素人さんに多い誤解であるが、本来漢方というのは、狭義には江戸時代中期以降の『傷寒論』医学の受容の仕方であって、中国医学とイコールで結べるようなものではなく、後世方まで含めたところで、それはあくまでも「日本化」された医学なのであり、本土のそれと大きく異なっているという事は、専門家なら誰も異論を唱えまい。
また、「新薬という概念はないに等しい」という「新薬」というのが何を指しているのか今一つ判然としないが、これが方剤を指しているのだとしたら完全な間違いで、仲景方を重視する日本でさえ、保険適用の医療用漢方製剤の半分は『傷寒論』より時代が下るものであり、高血圧に用いられる七物降下湯など昭和に入ってから出来た薬である。
そして,生薬リストに載っていたのがトラの骨やサイの角,センザンコウの胎児,亀の甲羅,乾燥タツノオトシゴ,チベットオオカミの体の一部などであり,「トラの骨やサイの角などに匹敵/凌駕する治療効果を持つものはない,代替できるものはない」が大前提のため,治療するためにはトラの骨やサイの角が必要となり,漢方薬がこれらの動物が絶滅危惧種の原因の一つになっているとする考えもあるようです。
生薬リストにこれらの所謂高貴薬が載っているのは事実かもしれないが、中国の医学は代替品の発掘使用には日本とは比較にならないほど柔軟であり、虎骨はどうか知らないが犀角は升麻で代用出来るとする考え方があるし、人参はオタネニンジンが高価な為、安価な党参で代用するのが一般的であるようだ。
勿論、薬用を目的とした乱獲が対象種の減少に繋がっているのは否定出来ないが、それは一部の下品な成金共の需要がある為であって、中国医学の本質的な部分ではないと私は思う。
恐らく,傷寒論の時代にはトラもセンザンコウも珍しくなかったため「捕まえて薬にしようぜ」と考えたんでしょう
これもおかしい。
そもそも支那の本草学の考え方は、動植物だけでなく鉱物に至るまで、自然界のあらゆるものは何かの薬になるという考え方を基礎としており、珍しいかどうかという観点はそもそも関係がないのである。
それに、『傷寒論』の薬方にはトラもセンザンコウも使用されてはいない。
どうも夏井先生は、このような珍奇で高価な生薬を基本として漢方が構成されているように錯覚しておられるようだが、実際にそのようなものが用いられている薬方というのが例外に属するのであって、有り触れた野草類が、湯液治療の基本なのだ。
先生の書く文章は非常に面白くて明晰で、当時音楽ネタ以外は隅から隅まで目を通したように思う(オススメの映画に関しては私の目にはどれもくだらないものばかりに映ったが)。
肝心の湿潤療法に関しては、不思議とこの十数年怪我らしい怪我を経験しなかった御陰で、試みる機会に恵まれなかったが、夏にバイク事故で結構へヴィな傷を負ってしまい、ついにチャンス到来と試してみたところ、これが実によく効いてくれて、その治療の有効性をついに身をもって知ることが出来た。
ところで、その夏井先生が、サイト新しい創傷治療の2018年10月31日の記事で、ご自身の漢方観を披歴しておられる。
以前,「漢方薬の世界では新薬という概念はないに等しい」と聞いてびっくりしたことがあります。
調べてみると,中国医学(漢方は日本での呼び名)は紀元210年頃(後漢末期~三国時代)に張仲景が編纂した『傷寒論』に起源があるそうですが,早い時代に治療に使える薬草・生薬が体系化されて完成したため,新薬が付け加えられることはほとんどない,ということらしいです。
そして,生薬リストに載っていたのがトラの骨やサイの角,センザンコウの胎児,亀の甲羅,乾燥タツノオトシゴ,チベットオオカミの体の一部などであり,「トラの骨やサイの角などに匹敵/凌駕する治療効果を持つものはない,代替できるものはない」が大前提のため,治療するためにはトラの骨やサイの角が必要となり,漢方薬がこれらの動物が絶滅危惧種の原因の一つになっているとする考えもあるようです。
恐らく,傷寒論の時代にはトラもセンザンコウも珍しくなかったため「捕まえて薬にしようぜ」と考えたんでしょうが,もうトラもセンザンコウもサイも絶滅寸前の時代になっているんですよ。
2000年前の世界を背景に成立したシステムを世界が変わっても維持しようとするのは,科学的に見て無理があります。
これを専門的知識を持たない人が読んだら、成程そうか漢方なんて所詮非科学的なものよねと思うのも無理のない事だが、各論に関して言えば、少なくとも私などには首肯出来ないところが多々見受けられる。
以前,「漢方薬の世界では新薬という概念はないに等しい」と聞いてびっくりしたことがあります。
調べてみると,中国医学(漢方は日本での呼び名)は紀元210年頃(後漢末期~三国時代)に張仲景が編纂した『傷寒論』に起源があるそうですが,早い時代に治療に使える薬草・生薬が体系化されて完成したため,新薬が付け加えられることはほとんどない,ということらしいです。
中国医学の日本での呼び名が漢方であるというのは、素人さんに多い誤解であるが、本来漢方というのは、狭義には江戸時代中期以降の『傷寒論』医学の受容の仕方であって、中国医学とイコールで結べるようなものではなく、後世方まで含めたところで、それはあくまでも「日本化」された医学なのであり、本土のそれと大きく異なっているという事は、専門家なら誰も異論を唱えまい。
また、「新薬という概念はないに等しい」という「新薬」というのが何を指しているのか今一つ判然としないが、これが方剤を指しているのだとしたら完全な間違いで、仲景方を重視する日本でさえ、保険適用の医療用漢方製剤の半分は『傷寒論』より時代が下るものであり、高血圧に用いられる七物降下湯など昭和に入ってから出来た薬である。
そして,生薬リストに載っていたのがトラの骨やサイの角,センザンコウの胎児,亀の甲羅,乾燥タツノオトシゴ,チベットオオカミの体の一部などであり,「トラの骨やサイの角などに匹敵/凌駕する治療効果を持つものはない,代替できるものはない」が大前提のため,治療するためにはトラの骨やサイの角が必要となり,漢方薬がこれらの動物が絶滅危惧種の原因の一つになっているとする考えもあるようです。
生薬リストにこれらの所謂高貴薬が載っているのは事実かもしれないが、中国の医学は代替品の発掘使用には日本とは比較にならないほど柔軟であり、虎骨はどうか知らないが犀角は升麻で代用出来るとする考え方があるし、人参はオタネニンジンが高価な為、安価な党参で代用するのが一般的であるようだ。
勿論、薬用を目的とした乱獲が対象種の減少に繋がっているのは否定出来ないが、それは一部の下品な成金共の需要がある為であって、中国医学の本質的な部分ではないと私は思う。
恐らく,傷寒論の時代にはトラもセンザンコウも珍しくなかったため「捕まえて薬にしようぜ」と考えたんでしょう
これもおかしい。
そもそも支那の本草学の考え方は、動植物だけでなく鉱物に至るまで、自然界のあらゆるものは何かの薬になるという考え方を基礎としており、珍しいかどうかという観点はそもそも関係がないのである。
それに、『傷寒論』の薬方にはトラもセンザンコウも使用されてはいない。
どうも夏井先生は、このような珍奇で高価な生薬を基本として漢方が構成されているように錯覚しておられるようだが、実際にそのようなものが用いられている薬方というのが例外に属するのであって、有り触れた野草類が、湯液治療の基本なのだ。
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