『傷寒・金匱を学んで』福田佳弘著
- 2019/11/13
- 20:13
『傷寒・金匱を学んで』福田佳弘著(医聖社/2015年刊)
ひと月ほど前、滋賀での第38回埼玉漢方特別講座でご一緒した鳥取の福田佳弘先生(1936~)が、2015年刊の御高著『傷寒・金匱を学んで~福田佳弘論考集~』をご送付くださった。
最近はどこへ行っても聴くに堪えない病名漢方の発表が多くて正直うんざりしているのだが、滋賀での特別講座で拝聴した講演が古典を踏まえた実に内容のある素晴らしいもので、帰ってから、先生が『漢方の臨床』などで発表された御高論を拝読しようと思い立ったところ、2002年以降の巻号が生憎手元になかった為、どうしたものかと思案していた矢先のことだったので、実に有難い限りである。
本書のことは、『漢方の臨床』の書評か何かで出版の記憶だけはおぼろげながらにあるのだが、手元に来て、これまで御発表になって来た内容を集成したものということで、まさに読みたいと思っていたものが盡く網羅されており、渡りに船といったところだ。
実は、特別講座の際、お土産としてお持ち帰り頂いた辰砂の標本をいたく喜んでくださったので、その後、辰砂についての拙稿と共に雄黄の標本をお送りしたのであるが、まるでわらしべ長者のように、石が医師の立派な本に変わってしまった。
先生は、長年に渡って藤門医林会(旧藤門会)の会長を務められた千葉古方の大家であるから、仲景方が基本にあることは言うまでもないが、本書には利膈湯(名古屋玄医)や正気天香湯(劉河間)、断痢湯(孫思邈)などを用いた治験も収められていて、必ずしも狭義の古方に縛られない臨床を行っておられる事が窺われよう。
参考文献では和書のみならず相当な数の中文書も引かれていて、博引旁証ぶりに驚かされる。
今でも飛行機で頻繁に上京されては、藤門会などで研究発表をなさっているというのも83歳という御高齢を考えれば十分に驚異であるが、整形外科にも関わらず、手術を止めて漢方を主とした治療をなさっているというところも凄い。
かねてより御高名のみ聞き知っていた福田先生に伊吹山という薬草の聖地で初めてお目にかかることが出来た事で、初めて参加した埼玉漢方特別講座の印象はよりいっそう感動的なものとなったように思う。
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