中華なるスッポン～生薬探偵の友情～

釣りに釣りまくった昨年に比べ、今年は数える程しかスッポン釣りに行かなかったのは乱獲の反省というよりスッポンそのものに飽きが来ているといったほうが正しいようで、このところ鍋にしてもフライにしても以前ほどには美味いと感じなくなってしまっている。

それでも、今年は友人諸氏に振舞う為に何度か夜釣りに出向いたが、そのうちの３匹はコロナ禍の渦中に果敢にも中華料理店をオープンさせたI氏に進呈して喜ばれた。

I氏は筋金入りの中華料理人だが、これまでスッポンを捌いた経験がないという。

辻調は授業で一コマやるそうだが、大調（大阪調理師専門学校）は学費が安いのを反映して高級食材は授業で扱わないということらしい。

I氏のために用意したスッポンさん2匹はいずれも程好いサイズの恐らくはツガイ

以前の職場の先輩に当たる内匠頭氏がスッポン料理の達人ということで、先輩氏に手ほどきしてもらうという話だった為、並んで伝授してもらえる様に2匹進呈させて頂いた（ちょうど進呈したのはI氏の誕生日。生もののプレゼントというのが我ながら粋）。

達人にして天然モノは初めてだったらしく、中々首を掴めないというハプニングがあったが（どうも養殖は天然に比べて動きが鈍いらしい）、庵主の秘伝をサラリと伝授、なんとか首落としまで持っていくことが出来た（自分では一番やり易い方法に落ち着いたまでの事に過ぎないのだが、蒼流庵式の首掴みはプロでもビビるくらいにデンジャラスなものらしい）。

先輩後輩の仲睦まじい血抜き

和食とは異なり、中華では血は廃棄するのが普通だそうだが、血は中華式に応用できる事を諭し、今回は血も利用することに。

蒼流庵式では首を切り落とさずに血抜きを行うが、今回は落としてしまった為、若干採取できた血量が少なかったものの、まぁこれは仕方がない。

簡単に見えて意外に熟練を要するのが甲羅剥がしで、甲羅から飛び出しているギザギザを紙一重でかわしつつ包丁を入れるのが腕の見せ所だが、やはり初心者は綺麗に包丁が入らず、エンペラも無駄にしがち。

「ここはな、こないするのんよ」と内匠頭氏の指導

いよいよ邪魔くさい皮剥き

この作業に手抜かりがあると、客はセロファンみたいに硬い薄皮を口に入れる事になるので注意が必要

水温が下がると剥けなくなるので、再び熱水に。

皮剥き完了

下ごしらえの終わった食材は、冷凍保管します。

最初に採取した血は、作業の間、冷蔵庫で固めてあり、炒め物にします。

鼈血のチーイリチャー中華風は濃厚であまりに絶品

いくら泥抜きをしても、爬虫類の性質上、独特な臭いが幾らかは残るものだが、中華にすると、そういう臭みも掻き消えて、誰でも食べられる柔らかで上品な逸品に（写真は醤油煮込み）。

後日、再び大きめのスッポンを進呈、今度は蒼流庵式の解体法を一から伝授して差し上げた。