『高島易断』を読む④

高島嘉右衛門と言えば、誰もが知る周易三変筮の神憑った占法家であるが、山地剝六四の項に附された占例149「富商某来リテ運気ヲ占ハンコトヲ請フ」（義.p733～p735）では、なんと易占に人相術を併用しており、呑象が相学にも通暁していた事が判って面白い。

運気占における山地剝六四など誰の目にも凶兆たること明らかであるのは言うまでもないが、そこからの呑象の解説、

此ノ如ク災ノ接近シタルヲ占フトキハ、必ズ其人ノ人相ヲ参照スベシ。両眉ノ間ナル印堂ニ黒赤ノ気出ルカ、或ハ天庭ヨリ赤キ細筋現ハルゝニ於テハ、天命ニシテ災ヲ免レズト謂モ、今血色ニ出デズシテ、辺地ノ血色宜キヲ得ルガ故ニ、転地ヲ示シタリ。夫レ人相ハ諺ニ物相応ト云フガ如ク、人トシテ六七分通リハ、相ニ応ジタル貴賤貧富剛柔アル者ナリ。

を読むと、易占の補助手段として相学が用いられている事が看取されて甚だ興味深い。

また、某富商の凶運への対処として、

宜ク祖先ノ霊ヲ祭リ、若クハ産神ニ祈リテ、災害ヲ避クベキハ勿論ニシテ、片時モ早ク住居ヲ転ゼザル可ラズ、又親任スル者ニ心ヲ許ス可ラザルノ時トス

と言っており、開運法の基本に先祖供養と産土神信仰を置いているらしき事が窺い見られて面白く思う。

そういえば、呑象は若い時分に浅草馬道の相法の達人・山口千枝に鑑定してもらった事があるという。

山口千枝は名前からてっきり女性だと思っていたが、初代石龍子の同時代人・朝元斎大野備中に連なる学統の人で男性らしい。

玄龍子相法の秘伝とされた車人形相法は、もと山口千枝が考案したものを玄龍子が発展させたものだという。