返り討ちにあった京房
- 2021/02/10
- 18:30
『顔氏家訓』の中で、著者は災いに罹った卜筮の名人として京房、管輅、郭璞の三人の名を挙げているが、筆頭に挙がっている京房は断易の源流と言って差し支えない人物である(断易の開祖を鬼谷子とする説あり、また京房は漢易の創始者でもないが、現在行われている断易が範をとるのは現行本『京氏易伝』であり、存在自体が怪しい鬼谷子などは言うに足りない)。
易は易でも周易のほうは大陸ではとっくの昔に断易に易占法の王座を明け渡して我が国でのみ行われている状況で、中国では単に易占と言えば断易を指すのであるが、そうすると易占の開祖までが鬼神の嫉みに罹った事になる訳だ。
鈴木由次郎『漢易研究』31頁に京房の略歴が良く纏められているので下に引用する。
漢代の易家に二人の京房がある。一は楊何の弟子で、梁邱賀に易を伝えた京房、一はここに説く焦延寿の弟子で、京氏易として知られる京房である。京房本姓は李、律を吹いて自ら京氏と定めた。字は君明、東郡頓丘の人、明帝の元鳳元年に生まれ、元帝の建昭二年に歿した。年四十一、漢書両夏京翼李伝にその伝があり、漢書儒林伝にその学系を述べている。京房は易を焦延寿に学び、少くして学問に励んだ。潜夫論讃学篇にも、京君明、年を経て戸庭を出でず、其の学を鋭精にす」といつている。初元四年孝廉をもつて郎となり、災異に明らかなるをもつて元帝の寵幸を得た。京房は、「治国の要は賢人を用うるに在り、賢人に任ずれば瑞応至り、不肖に任ずれば災異見わる」といつて、官吏の賢不肖を鑑別する考功課吏の法を上奏し、中書令石顕を排斥しようとしたが、石顕及び五鹿充宗の疾むところとなり、建昭二年魏郡太守となつて帝側より遠ざけられた。彼はしばしば災異占候に関する上奏をして京に還らんことを請うたが、石顕のために讒せられ、妻の父張博とともに獄に下されて棄死した。これより先き、その師焦延寿が、「我が道を得て身を亡ぼすものは必ず京生ならん」と予言したが、この予言が適中して彼はついに身を亡ぼすにいたつたのである。
要は政敵を追い落とそうとして返り討ちに遭った訳だが、これを評して策士策に溺れるとか陰陽師身の上知らずとか色々に言う事は出来よう。
一つ言える事は易占の開祖にして此の有様なのだから、そこに趨吉避凶の極意など求めても無駄であるということだ。
そういえば、五十以て易を学べば云々の孔夫子も、やること為すこと盡く上手く行かない失敗の連続によって人生が成り立っているような人物で、それゆえに支那人の間で人気を集める型の偉人(孫文などもこの型の典型であろう)なのであった。
易は易でも周易のほうは大陸ではとっくの昔に断易に易占法の王座を明け渡して我が国でのみ行われている状況で、中国では単に易占と言えば断易を指すのであるが、そうすると易占の開祖までが鬼神の嫉みに罹った事になる訳だ。
鈴木由次郎『漢易研究』31頁に京房の略歴が良く纏められているので下に引用する。
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漢代の易家に二人の京房がある。一は楊何の弟子で、梁邱賀に易を伝えた京房、一はここに説く焦延寿の弟子で、京氏易として知られる京房である。京房本姓は李、律を吹いて自ら京氏と定めた。字は君明、東郡頓丘の人、明帝の元鳳元年に生まれ、元帝の建昭二年に歿した。年四十一、漢書両夏京翼李伝にその伝があり、漢書儒林伝にその学系を述べている。京房は易を焦延寿に学び、少くして学問に励んだ。潜夫論讃学篇にも、京君明、年を経て戸庭を出でず、其の学を鋭精にす」といつている。初元四年孝廉をもつて郎となり、災異に明らかなるをもつて元帝の寵幸を得た。京房は、「治国の要は賢人を用うるに在り、賢人に任ずれば瑞応至り、不肖に任ずれば災異見わる」といつて、官吏の賢不肖を鑑別する考功課吏の法を上奏し、中書令石顕を排斥しようとしたが、石顕及び五鹿充宗の疾むところとなり、建昭二年魏郡太守となつて帝側より遠ざけられた。彼はしばしば災異占候に関する上奏をして京に還らんことを請うたが、石顕のために讒せられ、妻の父張博とともに獄に下されて棄死した。これより先き、その師焦延寿が、「我が道を得て身を亡ぼすものは必ず京生ならん」と予言したが、この予言が適中して彼はついに身を亡ぼすにいたつたのである。
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要は政敵を追い落とそうとして返り討ちに遭った訳だが、これを評して策士策に溺れるとか陰陽師身の上知らずとか色々に言う事は出来よう。
一つ言える事は易占の開祖にして此の有様なのだから、そこに趨吉避凶の極意など求めても無駄であるということだ。
そういえば、五十以て易を学べば云々の孔夫子も、やること為すこと盡く上手く行かない失敗の連続によって人生が成り立っているような人物で、それゆえに支那人の間で人気を集める型の偉人(孫文などもこの型の典型であろう)なのであった。
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