『図解周易大全』賀華章著

『図解周易大全』賀華章著

“爻辞の風景”に言及したついでに其の物ズバリの書物を紹介しておきたい。

普段あまり易に関しては中国の出版物にアンテナを張っていないのだが、先日易学講座の受講者氏がメルカリで面白い本を買ったというので見せてもらったのが今回の『図解周易大全』である。

確かに此の本は色々な意味で“面白い”。

特徴は384爻全てがイラスト化されている事で、これが初学者の理解を助けてくれるというのがウリのようだが、このイラストが中々に奇妙なのである。

まず誰の目にも明らかな判り易いもの二つをご紹介しよう。

火地晋九四

山地剝初六

この辺りは、中級者以上の人が見れば一瞥どの卦の何爻を図解化したものか立ちどころに合点が行く筈であるが、ほとんどの図は回答を先に示されたところでただ首をかしげるしかないようなものなのである。

これが水雷屯六四の図解であると言われて、なるほどよく出来た図だと思う人が居るだろうか？（誰がどう見てもDIY）

同じく山火賁六五もどう見たって左官屋で、普通に此の辞を図解化するなら当然出て来るであろう丘の果樹園や贈り物の絹布など何処にも見えていないのは奇怪という他ない。

天雷无妄の六三も牛が盗まれずに花瓶が割れてネェちゃんがガーンとなっているシーンであるのはどういう訳だろう？

これはかろうじて火天大有上九である事が分からぬではないものの、何やら如来降臨といった趣になっていて思わず苦笑させられよう。

易辞が出来た頃には仏教思想はまだ支那に入って居ないどころか、恐らくは釈迦すらまだ誕生していない。

もちろん単に“天”と言われたのでは曖昧模糊としていて図解化しがたい訳だけれど、もう少し中国的な天帝感を出すやり方はあったように思う。

以上のように、この本は中々に難解で、初心者どころか練達の士でさえ、太刀打ちできないようなところがある。

中国ではまだ新本で買えるようなので、ご興味ある方は入手されると良い。

ちなみに此の三枚がどの卦のいずれの爻辞か判る人がどれだけ居るだろうか？

分かった方はコメント欄にでも公開でご回答ください。